ネットの話題
「トング使って指したい」ケーキみたいな将棋セットがSNS席巻
ひふみんも反応、将棋ファンうならせる完成度
目にも楽しい「将棋セット」の話題が、SNS上をにぎわせています。一つひとつの駒が、ケーキの外観を再現しているのです。多くの将棋好きをうならせたアイテムは、どのようにして誕生したのか。作者の美大生に聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
写っているのは、盤上に並んだ、てのひらサイズの将棋駒です。上部が白く塗装され、「王将」「歩兵」といった銀色の文字が刻まれています。
しかし、妙に分厚いのです。よく見ると、土台部分が幾重にも分かれています。スポンジを思わせる黄色い層に上下を挟まれた、トロリとこぼれ落ちそうな、イチゴ入り生クリーム。さながら、駒形に切り出されたケーキのようです。
「トングを使って指してみたい」「取った駒は食べられそう」
ユーモラスな発想を称えるコメントが次々書き込まれ、プロ棋士の加藤一二三・九段も、ツイッター上で賛辞を贈りました。投稿には、11月1日時点で9万近い「いいね」がついています。
作者はカナイガさん(@shiragaigarashi)です。美術大に通いながら、食べ物を中心とした、様々な雑貨を生み出しています。
将棋駒のパロディーとも言えるアイデアは、ケーキの語感に思いをはせているときに、ひらめきました。
「『イチゴのショートケーキ』という言葉の響きが可愛い。そう考えていたら、『ショー』が将棋の『将』、『キ』が将棋の『棋』にかかるなと、ふと気付いたんです。そこから全体のビジュアルが頭に浮かんできました」
その後、素材にアクリルを採用し、四日かけて駒40個(1セット)を完成させました。
駒上の文字は最初、実物と同じく表面を黒、裏面を赤に塗り分けていたそうです。しかしケーキの柔らかな雰囲気と合わず、それぞれ銀色と金色に変更したといいます。
「口にできるか疑問に思う方も多いようですが、あくまで『ケーキみたいな見た目をした将棋セット』です。食べることはできません。私自身、将棋を指した経験はほとんどないのですが、これを機に楽しんでみたいなと思いました」
幼少期から、ものづくりに親しんできたというカナイガさん。切り株とチョコケーキを融合させた「チョコケー木」、とうもろこしの粒型模型を装飾した指輪「コーン約指輪」など、独創的なグッズを数多く作り出しています。
「これまで、自分の興味がある方向に突っ走り、作り続けてきました。振り返ってみれば、食べ物をモデルとした作品だらけだった、と気付いたんです」
「ただ小学校低学年の頃は、自由帳にオムライスの絵ばかり描いていました。そのことを隣の席の同級生に、毎日指摘されていた記憶があります。当時から、本能的に食べ物というモチーフが好きだったようです」
カナイガさんが創作対象に選ぶのは、「感覚的にときめいたもの」。普段から心の琴線に触れる物事を探したり、観察したりしています。作品を手掛けるにあたり、面白さと品の良さを兼ね備えられるよう、毎回心がけるのだそうです。
「いちごの将トケー棋」について、商品化を望む声は少なくありません。完全自主制作のため、今のところ予定していないものの「いずれ実現できたらいいな、とは思っています」。その上で、話題を呼んだことに関し、こう語りました。
「将棋好きの方々にお褒めの言葉をいただけたのが、本当にうれしかったです。また将棋好きの方だけでなく、加藤一二三さん始め、プロ棋士の方々にも届いたようでびっくりしました。形にして良かったなと、心底思います」
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