話題
若者、どこに投票すれば? 共産、ブラック校則で文科省動かす
極端な政策にずれも 吉良佳子さんに聞く
衆議院議員選挙を控え、主要6政党の若者政策を進める国会議員にインタビューするシリーズ。話を聞いたのは日本共産党、参議院議員の吉良佳子(きら・よしこ)さんです。ブラック校則や就活セクハラ、給付型奨学金など、若者向けの政策に力を入れてきました。野党でありながら多くの政策実現に貢献してきた吉良さんは、若者たちの未来をどう考えているのか、YouTubeたかまつななチャンネルで聞きました。
――吉良さんはブラック校則や教員の長時間労働など若者政策への取り組みが評価されてきたと思いますが、なぜそうした課題に問題意識を持たれたんですか。
2017年に大阪府立高校で黒染めを強要された女子高生が裁判を起こしたのがきっかけでした。彼女は地毛が茶色だと言い続けているにもかかわらず、執拗に何度も染めさせられて、髪もボロボロ、頭皮もひどい状態になって心身ともに傷ついてしまった。最終的には教室からも彼女の席がなくされた。学校で髪の色が原因で居場所を奪われるなんてことがあってはならないと思って取り組みを始めました。
学校のルールが理由で不登校になった子の数は、文部科学省が把握しているだけでも5572人。校則によって傷つく子どもをこれ以上増やしてはならないし、校則はみんなで声を上げれば変えられるということを伝えたいです。
――具体的にはどんな対応をされたんですか。
文科省の見解を確認することを繰り返しやりました。文科省に人権侵害の校則は駄目だということを認めさせたかったんです。だけど、校則は現場が決めるものだから、よいか悪いかを評価をしたり押し付けたりすることはできませんというのが文科省の立場なんです。
取り組みを続ける中で、文科省が出している手引きに書いてある以上のことに踏み込んだ答弁がいくつか出てきました。最近だと、全国28の教育委員会などで見直しが進んでいる事実を示しながら「学校で校則を見直そうと声を上げることはいいことですよね」と質問したときに大臣が「いいことだ」と答弁しました。さらに「人権、人格を否定する校則は望ましくない」という言葉を引き出すこともできました。その後、6月8日に文科省が改めて校則の見直し通知というものを出しました。この通知をきっかけに校則の見直しが全国に広がってほしいです。
――私も全国の学校に主権者教育をしているので、学校の不条理を変えられないなら民主主義も学べないなと感じているので、本当に進めていただきたいです。
声を上げても無駄だということを学校で学んでしまうと、後がつらいと思うんですよね。若者の働き方で、過酷な長時間労働とか低賃金で働かされても何もしない若者が一定数いるのは、声を上げても変わらないと思っているから。校則を守るのはしょうがないことだと言われ続けてきたからだと思うんです。校則を変えることを通して、当たり前と言われていることを疑いながら、自分たちにとって合理的なものに変えていくプロセスを学べることは、社会や政治を考える上でも大事なことだと思います。
――続いて日本共産党としてどんなことをしているかを伺いたいのですが、共産党が若者政策において他党と違う部分を教えてください。
特に与党に対しては、本当に一人一人の若者の声を聞いてますかと問いたいです。象徴的なのがワクチン騒動ですけれども、若者がワクチンを打ちたがっていないからといって、渋谷にふらっと立ち寄れる接種会場をつくって、たった1日200回分で長蛇の列ができたわけじゃないですか。結局、みんな打ちたいけど打てない状況だったわけですよ。たぶん若者はこうだろうという思い込みでああいう政策をポンとやった。大失敗だと思うんです。
私が実際に聞いてきたのは、感染が拡大した当初から、特に学生の皆さんはバイトができず収入が減って、大学に行くことを続けられないかもしれない。もしくは学費を支払い続けるために食費を削らざるをえない。困窮した実態で本当に支援が必要だという声です。そういう現場の一人一人の若者の声に立脚して政策を一つ一つ作り上げてきているのが、私たち日本共産党だとていうことを強調したいです。
――特にこの数年間で、若者政策に貢献した部分はどんなところですか?
いっぱいあるんですけど、校則の問題もそうですし、就活セクハラの問題では、就活生の相談窓口を労基署(労働基準監督署)に作らせることもできましたし、いわゆるブラック企業が違法を繰り返したときに企業名を公表させる制度を作らせることができました。
あとは学費の面で給付型奨学金を作ってほしいという声を長年上げ続けて、給付が作られました。これは決して与党の成果ではなくて、共産党を含め野党が声を上げ続けてきたからこそできたことだと思っています。
――吉良さんが今後取り組んでいきたい若者政策はどういうものですか。
これまでやってきたことを引き続きやりたいです。校則問題にしても、働き方の問題、ジェンダー平等、最近では気候変動のことも含めて、一個一個若い世代の皆さんの切実な要求を実現するために力を合わせたい。あなたの声に政治を変える力があるんだよということを強調したいです。
――他の議員さんからは、若者政策は票につながらないから難しいという声もありましたが、共産党の場合はどうですか?やりづらいと感じる場面はありますか?
全くないですね。むしろ投票してもらうためにも、積極的にこの問題に取り組まなきゃいけないという意識です。票にならないから、投票率が低いからやらないというのは、ちょっとあまりにも上から目線というか、無責任じゃないかと私は思います。
――政治の世界では投票する人向けの政策に偏りがちだと思うんですけど、今の世代よりも将来の世代に向けるためには、どうしたらいいと思いますか。
本当に多くの政治家、与党を中心にした人たちがそういう態度を取っているのが問題です。学費の問題一つとっても、若い世代に全く予算をかけていないんですよ。学費は政治の力で無償にできると知っている学生がどれだけいるだろうと。国が国立大学と私立大学に運営費交付金とか私学助成とかを増やしていけば、学費を下げることはすぐにできるんです。1兆円投入すれば、国公、私立、専門学校、全ての高等教育機関での学費を半額にすることは可能です。だから今までの与党政治家たちがそこにお金を入れてこなかったことが問われていると思います。
一方で安倍政権、菅政権になって軍事費は右肩上がりで5兆円をゆうに超えています。文科予算は減り続けて、ついに軍事費のほうが文科予算を上回っている状況です。そういう優先順位になっている。高齢者か若者かではなく、もっとマクロな視点で予算を見ていかなきゃいけないと思います。
集め方もちゃんと累進課税になっているかが問われています。庶民からばかりむしり取ることを考えるんじゃなくて、本当にお金を持っている人から応分の負担をしてもらう。大企業の課税率が中小企業の課税率より低いのはおかしいでしょうと。所得が1億円を超えると税負担率が下がるってどういうことですかと。政権与党は庶民ではない人たちに投票してもらっているんでしょうねと思います。
――共産党の中では若者政策を行う上での課題はありますか?
いかに当事者に伝えきるかというところです。若者だけではないと思いますが、漠然とした不安はあるけれど政治課題とまでは思っていない人たちにいかに届けるかというのは大きな課題です。
ただ、このコロナの中で、皆さん政治が身近になったんじゃないかと思うんです。実際に学費を払えないかもしれないとか、食費を削っているというときに、学費を下げてほしいという署名運動がばっと広がって政治課題だと認識し始めた学生が少なからずいるわけです。アプローチはしやすくなってきていると思うので、そういうところに届ける努力をしていきたいと思っています。
――共産党は、調査能力の高さと質問の的確さで、国会の場をうまく活用しながら政権の監視役を担っていると感じます。一方で極端な政策が多い、実現していないものも多いのではないか、という声もありました。
私たちは基本的にゴールを明確にしたいんです。消費税は将来的になくしたい。原発はゼロがいい。学費はゼロにしたい。そういったゴールを示しながら、もちろん一気にできないこともあるので、その場合は段階を踏んでやりましょうとお伝えしているつもりです。
最近でいうと、オリンピックとパラリンピックが強行されましたけど、コロナ禍で開催すべきではないと私たちは一貫して言い続けてきました。この状況を見て、それは間違っていなかったと思いますが、共産党がぶれずに言い続けてくれてよかったという声も聞いています。ならぬものはならぬと言い続けることのできる政党は絶対に必要だと思います。
――共産党が掲げる共産主義に抵抗感を覚える人もいると思いますがこれについてはどうお考えですか。
そもそも共産主義は独裁政権だと思っている方が多いと思うんですけど違います。独裁とは全く関係ない。民主主義のもとで共産主義はできる。共産主義は資本主義との対立語なんです。資本主義における搾取や利益優先の構造、社会の矛盾などを解消するために先手を打つ。森林破壊をしないで人類の経済活動をどう発展させるかといったことを冷静に議論しながら、そういうところを計画的に進められるシステムを整えていきましょうということです。ただ、仮に、次の総選挙でほかの野党と協力するとなった場合には、この話を持ち込むことはしません。
――どうしたら若者は投票に行くと思いますか。
政治家がちゃんと若者を見てるよ、若者のために政治を進めるよという姿勢を見せることが何よりも大事です。若い皆さんが立ち向かっている困難とか課題は政治的に解決可能だし、一緒に変えていこうという希望を示しながら、投票に行ける環境を整えるのが政党であり、政治家の責任だと思います。若い人たちの投票率を上げるために党派を超えてでも、若い世代に何が必要なのか、若い世代が希望を持てる社会にするにはどうしたらいいのかを真剣に議論して政策を打ち出していけば、おのずと投票率が上がると思います。
――最後に、若者は選挙のときに共産党に入れたほうがいいですか。入れるべきならその理由を教えてください。
入れたほうがいいです。皆さんの1票は絶対に無駄にしません。その声を必ず政治に、国会に届けるのが共産党の議席だし、そこにあなたの1票を届けていただければと思います。
国会でいい質問をすることで、政策実現をしていく。そのことの大事さを知るとともに、そこに力を入れてきた共産党の実力をあらためて感じた。政党の機関紙である赤旗をはじめ、地方議員との連携、国会議員の中で振り分ける質問など、組織力の強さは他の政党にないものがある。
一方で、極端な政策や、理想を示していることで実現に至っていないことも少なくない。政権の監視役としての存在感を発揮したとしても、与党と連携しながら政策を提言していくことが、本当にできるのか。政権交代した時、独自色の強いこれまでの政策との整合性を取れるのか、不安も多い。
デモの現場に足を運び、困っている人の声に耳を傾けているのが共産党の強みだ。地方では、貧困に苦しむ人が共産党の議員に駆け込んで、そのまま党員になるケースも多いと聞く。これだけ格差が進む中で、社会主義の考え自体は国際的にも注目されている。「アメリカの従属からの脱却」というこれまでの主張から、格差を是正する政党として性格を変えつつあることが、支持されているのだろう。
実現してほしい政策を、どの政治家にもっていくべきか。政党によって実現の度合いは変わってくるが、共産党の地方議員に相談することは、親身になって相談にのってもらえ、また組織がしっかりしているから国政の場にも届きやすくていいと思う。ジェンダー政策や気候変動などに力を入れてきた実績は、若者にとって心強い存在になるだろう。
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