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洗面台のデザイン、こんな意味が…車いす生活になって知る〝不便さ〟
「当たり前」だった風景が怖くなる
パラリンピックでは、選手たちの鍛えられた競技姿が多くの人に感動を与えました。一方で、日常生活では、バリアフリーが進んでいるとは言えないのが現実です。突然の事故で車いす生活になった人が描いた、「少しの違い」が生む不便な風景のイラストが、話題になっています。よく見かける「普通の洗面台」でも、車いすユーザーにとっては〝やっかいな存在〟です。車いすから見える風景とはどんなものなのでしょうか。作者に話を聞きました。
1枚目には、下が扉付きの収納スペースになっている洗面台。
2枚目に描かれた洗面台は、収納がないタイプで、排水管がむきだしになっています。
どちらも、街中で当たり前に見かけるものですが、白四さんのイラストには、さらに車いすで手を洗おうとする人が書き添えられています。
収納がないタイプの洗面台だと、下の空間に車いすの足ごと突っ込めるため、蛇口に近付きちゃんと手が届きます。
このイラストには、「なるほどー!」「見た目がよろしくないなと思ったら、バリアフリー配慮されたやつだったんだ」「つくづく世の中が五体満足を前提にした作りだと気づいた」「想像力って大事」「実際にそういう立場にならないと分からないことですね」などのコメントが集まり、2万件以上のいいねがつきました。
車椅子生活をはじめて気づいたちょっとした作りの違いの差がこんなにも不便なんだなって事#リハビリ絵 #車椅子 pic.twitter.com/bDu05oIOwv
— 白四@EPFC(入院中) (@Shiroyon_A) August 15, 2021
作者の白四さん(39)は、現在、入院でリハビリ中のため、メッセージでお話しを伺いました。
白四さんは今年7月下旬に事故で、足首、腰、手を骨折しました。また歩けるようになるため、今はリハビリをしています。
突然始まった車いす生活で、それまで見ていた景色の意味が違って見えたと言います。
たとえば、今回イラストにした洗面台については、車いすを使う前まではまったくと言っていいほど、作りの違いを意識することはなかったそうです。
収納スペースがない洗面台を見ても、「シンプルな洗面台だなくらいの認識」でした。
しかし、車いすで使おうとした時、そのデザインの利点に気づきました。
収納付きの洗面台を使う時は、車いすをななめにして「角から攻める」ように使うことになります。
「あまりにも生活の視点が変わって不便だなと感じたことが多かったので、絵描きとして記録しておこうと思いイラストにしました」
「不便」は洗面台だけではありませんでした。
トイレの室内は、「車いす対応」となっていても、広さが十分でないことがあり、車いすで旋回しづらいことがあります。
片手しか使えないので、病院内の壁にある手すりがあると、両手で扱えない車いすでの移動に、ものすごく助かりました。
風が強い日の屋外では、車いすごと風に押し流されてしまう恐怖を感じました。
車いすに乗って、「当たり前」だった風景の中の不便さや、怖さが初めて見えてきました。
日本でバリアフリー新法が2006年12月に施行され、少しずつ街中の整備は進んでいますが、白四さんは「健常者目線では発見できない不便がとにかく多く感じた」と言います。「自分が思った以上に、まだまだ日本は、バリアフリーに関しては、整備が行き届いていないことを実感しました」
事故や病気や老い。いつ、体が不自由になるか、誰にも分かりません。不便さに気づける想像力は、誰にとっても暮らしやすい社会を作っていくのかもしれません。
「車いす生活になって気づけた不便さを、少しずつでもイラストにしたりして、認知してもらえたら嬉しいと思います」
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