連載
#82 #となりの外国人
保育園、途中でやめた外国人ママの後悔 #日本のフツウが分からない
申し込みが「1年に1回」だけなんて…
モンゴルから15年前に来日したザヤさん。二人の子どもを育てながら、教科書にも、辞書にもない日本の子育ての習慣に直面してきました。その「失敗」を糧に、ザヤさんが開く子育てママを集めた勉強会には、多くの悩めるママが集まります。でも、勉強会をのぞくと見えてくる日本だけの「常識」って、言われてみると、不思議なことだらけ? 今日のテーマは「保活」。世界の視点から見つめてみませんか。
保活(ほかつ)
日本では、保育園に入りやすいのは4月。だいたい前の年の夏ぐらいから、「保活」(保育園に入るための活動)が始まります。
見学をして、秋ごろ申し込みをします。入ることができない子ども「待機児童」もいます。一度入ることができたら、簡単にやめず、考えた方がいいです。
私が開く「子育てママ集まれ!」の勉強会は4年目、40回を超えました。中でも人気のテーマの一つが、保育園と幼稚園についてです。
私も15年前に来日した直後、直面したのがこの問題でした。日本に来た時は妊娠4カ月で、日本生活は「子育て」とともに始まりました。
私はモンゴルで日本語ガイドの仕事もしていたので、少しは日本語ができる方だと思っていました。
でも、甘かった。言葉も、文化も、モンゴルで勉強したものとは違いました。
夫は日本人なので、役所の手続きも他の外国人カップルより楽だったはずです。
だけど難しいのは、言葉だけではなく、日本の仕組みでわからないこと。たとえば、役所での手続きで、夫が私の読めない漢字を読んでくれたとしても、制度がモンゴルとは違うので、それが何なのかイメージが湧かないんです。
たとえば「保育園」と「幼稚園」。それにも区立と私立とか、認可されているところと、そうでないところとか。
なんで、こんなに種類があるんだろうかと思いました。
日本では、仕事をしていないと保育園に入ることが難しいです。一番入りやすい申し込みのタイミングも、だいたい1年に1回です。
モンゴルでは、誰でも希望すれば、子どもを保育園に預けることができました。いつでも保育園に入ることができます。
そのせいで、私は大失敗しました。保育園に入園できてしばらくして、子どもがなんども体調を崩しました。「あたたかくなるまで、ちょっと休ませて、それからまた行かせよう」と思って、保育園をやめてしまったんです。
ある日、保育園に連絡して戻るタイミングを相談したら、「もう戻ることはできません」と言われました。ショックでした。
区役所にお願いして、なんとか、近くの幼稚園を紹介してもらいました。
面接の日に、主人と待ち合わせて、幼稚園に行きました。そこでも、失敗しました。周りは両親そろって、スーツ姿でした。私はジーンズと、オレンジのシャツで、ほんとうにはずかしかったです。
面接の「マナー」を知らなかった私のせいで、子どもが落ちてしまうんじゃないかって、泣きそうになりました。
どうにか入れた後も、日本人ママより服装が派手で、ママ友の中で浮いてしまう問題とか、いろいろな悩みが続いていきます。
外国人のママたちは、フェイスブックなどのSNSで情報交換をしています。せっかくなら、正しい情報を知ってほしいと思って、子育ての勉強会を始めました。外国人だけでなく、海外での生活が長かった日本人のママも参加してくれます。
15年、日本で子育てしてきたので、「失敗」もたくさん経験しました。外国人のママたちにも、ちょっとは役に立てるようになったと思っています。
実は、この春、3人目の子どもを授かりました。久しぶりの出産・育児で、一人で役所に行って、一人で母子手帳をもらえたんです! 「成長したなぁ」って、誇らしい気持ちになりました。
長女・次女の時は、役所でとてもたくさんの書類を渡されて途方に暮れましたが、3人目の時は、窓口で一つ一つ書類の意味や出すタイミングを説明してくれて、自分でも質問できました。「わからなかったらまた聞いてくださいね」と言ってもらえました。
私も日本語がだいぶできるようになりましたが、行政も、ずいぶん外国人に親切になっているように思います。
保育園・幼稚園の制度は、国によって違います。モンゴルのように誰でも保育園に入れる国があれば、保育園と幼稚園の区別がない国もあります。そのため、外国人のお母さんは、「入園は基本的に4月から」「保育園は働く人でないと入れない」というような、「日本のフツウ」がわかりません。「保育園と幼稚園って、何が違うんですか?」と質問されたことも、何度かあります。 そのような基本情報がわからないと、役所で細かい手続きを説明してもらっても、理解が難しいようです。私たちも日本の制度について説明するときは、日本人の中で当たり前となっている「前提」「常識」を相手が知っているか、確認しながら話を進めるようにしています。
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