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「明日も一緒に散歩したいな」17歳老犬との日常描いた漫画に号泣

怖がっていた雷、聞こえなくなっても…

一匹の老犬との暮らしを描いた、4ページの漫画。種族の枠を超えて、一心に注がれる愛情を、静かに伝える内容です。
一匹の老犬との暮らしを描いた、4ページの漫画。種族の枠を超えて、一心に注がれる愛情を、静かに伝える内容です。 出典: ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

目次

私たちにとって、良きパートナーである犬。同じ時間を分かち合い、共に成長していく中で浮き彫りとなるのが、寿命の差です。人間よりも早く、天に召されてしまう――。そんな現実と向き合いつつ、17歳の愛犬との日々を描いた漫画が、ツイッター上で反響を呼んでいます。「老犬は可愛い。年を取っても、一緒に散歩したい」。そんな思いを込めたという作者に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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飼い主にくっつき続ける犬

「うちのワンコは小さい頃、母犬の前足の間から離れないコだったそうです」

7月10日、そんな一文から始まる、四枚組みの漫画がツイートされました。

登場するのは、小さな犬です。おびえているのか、耳が垂れ、母親の足元でうずくまっています。

成長しても、怖がりなのは相変わらずです。「夏は雷の音が怖くて、机の下にもぐり込んでふるえていました」。飼い主に抱きつく、犬の様子が描かれます。

「冬は雪が屋根からすべり落ちる音に怯(おび)えて 家事の間もずっと足元にいました」。四季を通じ、犬は飼い主にべったりくっついています。

最後のページに目を移すと、散歩中、飼い主に寄りかかる犬の姿が。傍らには、黒い文字で、次のように書かれています。

「17歳になったワンコは、雷も、雪の落ちる音も、もう何も聞こえなくなったけど、今も私の足元にいます」

「泣いた、長生きして」「犬の一生は短い。こうやって記録に残すことは素敵」。ツイートには読者からの投稿があふれ、9万以上の「いいね」がつきました。

出典:ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

臆病なのに、大胆に自宅を脱走

「臆病で、わがままで、ツンデレ。でも家族思いな、柴犬っぽい雑種の女の子。私の愚痴をよく聞いてくれます」。愛犬の性格を解説するのは、漫画作者のワンコ17歳さん(@wanco15sai)です。

出会いのきっかけは、17年前の夏に見かけた新聞記事。保護犬の引き取り手を募集する内容でした。体が他の犬よりずっと小さく、母親にまとわりついている……。面会時、お迎えしたいと申し出る人は、いなかったそうです。

結局、生後3カ月を過ぎる秋まで待ち続け、ようやく自宅に連れて行けました。性格は、まさに繊細そのものだったといいます。

打ち上げ花火や、豪雨の音に驚き、自宅を抜け出たことは数知れません。室内に設置した、脱走防止用のゲートを高くするなど、工夫を重ねました。それでも、畳や戸に穴を開け、大胆に外へと駆けていったそうです。

「夜の街を探して回る場面もありました。臆病なのに、おとなしくはないんですね(笑)」

出典:ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

雷鳴に反応しなくなったとき

ところがあるとき、愛犬に異変が起きます。大好きなジャーキーを目の前に置かれても、怖くてたまらない雷鳴がとどろいても、関心を示さなくなってしまったのです。

彼女は13~14歳の頃、「前庭疾患」を患いました。耳の奥にある「前庭」という器官の損傷により、神経症状が表れる病気です。

ふらふらしたり、嘔吐(おうと)や下痢を繰り返したり。治療を受け、歩けるくらいまで回復したものの、病はいつしか感覚を奪っていたのでした。

「ワンコが年を取ってしまうことが、受け入れられなかった。いつも、いつまでも、元気で私のそばにいるんだと思っていました」

「でも、もはや万一のことも覚悟しなくてはならない。とはいえ、どうしていいかわからず、不安ばかりが募りました」

そんなとき、ツイッター上で「#秘密結社老犬倶楽部(くらぶ)」というハッシュタグが使われていることを知ります。関連投稿をたどってみると、自分同様、老犬と暮らす人々の日常が、写真付きでつづられていました。

よろめきながらも、人間と楽しそうに外を歩く犬たち。その様子を眺める中で、ワンコ17歳さんは、ある言葉の意味に思いをはせるようになりました。

「いつか愛犬との別れがきたら、誰だって大声で名前を呼んで泣き、『寂しい』と声に出し、『またね』と天国へ送り出します」

「『またね』には、また会おう、また散歩しようという思いが込められている。ワンコにも、飼い主さんにも優しい言葉なのだ、と知りました。『老い』は受け止められないけれど、それでいい。ツイッターを通じ、そう感じたんです」

出典:ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

世に伝わった老犬の愛らしさ

愛犬の最期は、そう遠くないうちに訪れる。その事実を受け入れるため、ワンコ17歳さんは約1年前から、日々の暮らしぶりをイラストにしたためています。

散歩するとき、じっと動かないと思ったら、飼い主の周囲をぐるりと回り出す。わずか30メートルの道のりを、一時間かけて往復し、一緒に達成感を味わう。わが家に帰り、目やにを拭き取ってあげると、近寄って顔にキスしてくれる――。

春の日だまりを思わせる、穏やかで静かな毎日を、柔らかい線で描画していきます。ツイッター上で投稿を続けると、気付けば5千人を超えるフォロワーに恵まれました。

そしてこの夏、愛犬が17歳の誕生日を迎えた記念に、冒頭の漫画を手掛けました。臆病なのに大胆で、繊細でいて思いやりが深い。老いてなお、愛しいままの家族との、忘れ得ぬ記憶をかみしめるように。

「老犬の可愛さを伝えたいと思い、ツイートしてきました。でも、今回の漫画にコメントをくださる方のほとんどが、既に老犬との暮らしを経験されていて。皆さん、その愛くるしさを、もう知っているのかもしれませんね」

「保護犬たちの問題が、少しずつ世の中に認知されている。老犬との暮らしがどんなものか、犬を飼ったことがない人の目にも届く。そんな状況が生まれたのは、大好きな飼い主さんに天国へと見送られた、多くのワンコたちの力あってかなと思いました」

出典: ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

明日も一緒に、当たり前のことを

ワンコ17歳さんは今も、愛犬との生活を満喫しています。「いつも可愛くて、お世話は大変で、楽しいです」。常にベストな関わり方を模索し、試行錯誤してきた17年間。その蓄積があるから、年齢を重ねても、共に生きる意味は変わりません。

これから、どう過ごしていきたいですか――。尋ねてみると、「特別大それたことは考えていないんですが」と前置きした上で、こんな答えを返してくれました。

「明日も一緒に散歩したいな、と思います。人間の家族と似てますね。明日も一緒にご飯を食べるのと同じで、当たり前ですもんね」

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