ネットの話題
謎肉・エビ・ネギが飛び散る!カップヌードルクラッカー誕生秘話
「中から麺、面白い」
今や私たちの生活に欠かせないカップ麺。この食品をモチーフとする「クラッカー」が、SNS上で話題を呼んでいます。外見から中身まで、実物を忠実に再現したアイテムです。しかし、実は発売4年目にして、初の「バズ」だといいます。思いがけない人気ぶりに驚く、販売元企業の担当者に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
注目を集めているのは、日清食品がネット上でのみ販売する「カップヌードルクラッカー」です。1セット4本入りで、275円(税込み)。同社の主力商品「カップヌードル」を模しています。
円錐形のパッケージのカラーは、本物と同じホワイトです。「CUP NOODLE」のロゴや、「!」マークを並べたように見える帯状の図形・通称「キャタピラ」など、おなじみのデザインも印刷されています。
最もこだわりを感じさせるのが、その中身です。鳴らしてみると、縮れ麺に見立てた黄色い紙テープが飛び出します。更に、色や外観を、実際の具に似せた紙吹雪が混ざっているのです。
黒っぽい固形の具材「謎肉」とエビ、刻みネギにスクランブルエッグ……。どれもリアリティーにあふれ、思わず食べてしまいたくなります。
「意味が分からないけどすごい」「発案者は転んでカップヌードルを床にぶちまけた経験がありそう」。SNS上では、関連画像が出回るたび、そんな感想が飛び交っています。
異彩を放つアイテムは、どのようにして生まれたのでしょうか? 日清食品マーケティング部ダイレクトマーケティング課・佐藤真有美ブランドマネージャーを取材しました。
同社は2016年に、ECサイトをリニューアルしました。そして当時の担当者たちが、ユーザーとのコミュニケーションを深めるべく、様々な新商品を開発します。クラッカーも、その一つです。
「お客様がメーカーの直販サイトに求める、『商品を確実に購入できる』というニーズを超えたい。そんな思いが基本にありました。カップヌードルのパッケージの形状を踏まえ、ブーケを発案するなど、ノンジャンルで色々なアイデアを考えたんです」
「あるときスタッフの一人が『パーティーを盛り上げるため、クラッカーを作るのはどうか』と提案しました。どうせなら、中から麺が出てきたら面白いんじゃないか。チーム内で盛り上がり、実現 に向け動きました」
製造は、クラッカー生産大手・カネコ(愛媛県宇和島市)に依頼。見た目のインパクトを追求するため、紙吹雪用の具材のうち、謎肉とエビは実物の写真をプリントしました。一方、表面積が小さいネギと卵の場合、本物に近い濃い色みの紙を使っています。
特に創意工夫が光るのが、麺風の紙テープの先端が、クラッカーの内部で束ねてある点です。
紙テープを巻き散らかしてしまうと、ユーザーに「汚い」という印象を与えかねません。食品を取り扱う企業としても、避けるべき事態と言えます。そこで、具材とともに麺も飛び出る一方、床に散らからない仕様とすることで、見栄えのよさと清潔感を両立させました。
「食べ物を粗末にしない、との気持ちを形にしました。中身をきれいに打ち出せる上、後片付けが楽になる利点もあります」(佐藤さん)
約3カ月の制作期間を経て、2017年12月20日、ECサイト限定で発売。ウェブメディアに取り上げられるなどし、ある程度話題を呼んだものの、ほどなく収束します。その後も、大きく売り上げが伸びる状況にはありませんでした。
「元々、カップ麺などを購入したお客様に、『ついで買い』してもらう目的で作ったものです。ECサイトの認知度を高める材料の一つになれば、と考えていました」
しかし今年5月、転機が訪れます。ツイッター上に投稿された商品画像が、広く拡散されたのです。佐藤さんいわく、受注数も「従来より二桁ほど増えた」といい、一躍人気商品の仲間入りを果たしました。
画像を見た人々からは、「ラーメン好きにはたまらない」など、好意的な反応が相次ぎました。実に4年越しとなるヒットに、佐藤さんは喜びを隠しません。
「正直に言って、『ウケ狙い』で作ったものなので、盛り上がって頂けたことは純粋にありがたいです。明るい話題を世間に提供できたことも、うれしく思います」
クラッカーは一見して、本業のカップ麺販売と無関係に思えます。しかし「ムダなこだわり」と感じられることを大切するのが日清食品らしさだと、佐藤さんは語りました。
「意味がなさそうな情報であっても、触れてもらうこと自体に価値があると思います。実際、4年前に発売したクラッカーが、時を経てブレイクしてくれました。費用対効果だけを意識していたら、決して実現しなかったでしょう」
「必ずしも売り上げにつながらないかもしれないけれど、弊社や弊社のブランドに興味を持ってもらうための、きっかけとなり得る。そんな施策に、社員たちは本気で取り組んでいます。これからも続けていきますので、ぜひオンラインストアをのぞいてみて下さい」
【6/10追記】本文の一部表記を修正しました
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