連載
#28 #やさしい日本語
「もうお金がありません」コロナで無職……外国人労働者の現実
国からお金をもらったり、借りたりする方法があります
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生活に困った際に「使える」制度をいくつか見てきました。しかし、私が日々、日本で働く外国人の相談に対応して感じているのは、こういう制度は、外国人には本当に使いづらいということです。
まず、「緊急小口資金」などの支援策の名称。どの制度が、どんなことをしてくれるのか、日本人でもなかなか理解しづらいのではないでしょうか。しかも、これらの支援策についての情報は、ほとんど日本語でしか出されていません。日本語に不慣れな人にとっては、制度が存在していることすら、把握できないのです。
そしてなにより、「外国人」という立場の難しさです。例えば、最近増えている相談は、「今年1月、2月に来日したのに、4月からの授業がなくなったので解雇されました」という語学講師の方々です。
解雇されたときに使う制度は「失業給付」ですが、受給するには解雇される前に6カ月以上働いている必要があります。語学講師の方々は、就労期間が足りず、失業給付を受けることができません。そうなると、残りは借金しかありません。
というのも、日本で最後のセーフティーネットとされている「生活保護」は、永住者などしか受けることができないからです。この条件を満たすのは日本で暮らしている外国人の5割程度です(2019年6月末)。
つまり、よくまちで見かけるコンビニやファミレスで働く外国人や、農業や漁業、工場などを支えている外国人の多くにとって、「最後のセーフティーネット」は存在しないのです。
日本は特にここ数年間、「人手不足解消」の名のもとに、多くの外国人を受け入れてきました。しかし彼らが生活に困窮した際に助けられる制度は整っているとは言えません。
新型コロナウイルスではこうした問題も明るみになりました。国籍に関わらず、日本で暮らす誰もが、生存を脅かされない国をどうしたら再構築できるのか、まさに今から、社会で考えていけたらと思います。
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◆「もうお金がありません」コロナで無職に、外国人労働者の現実
新型コロナウイルス(coronavirus)のせいで、仕事を減らされたらどうしよう、クビになるかもしれない……といった仕事の悩みが増えています。いざというとき、日本の制度を知っていると安心です。日本語に慣れていない外国人にも、日本人にもわかりやすい「やさしい日本語」で、若者や外国人の労働相談に乗るNPO「POSSE」と一緒に考えていきます。
■「仕事もお金もなくて困っています」
こんにちは。NPO法人POSSEの岩橋誠です。今日は、仕事がなくて、お金がなくなって困っている人の相談です。
「こんにちは。家族と一緒にロシアから来ました。テーマパークの近くにあるホテルで働いていました。掃除の仕事です。一ヶ月に10万円もらっていました。でも、2月になると、ホテルに泊まるお客さんがへりました。そして、私が働く日も少なくなりました。 ホテルの仕事は、働く日が少ないので、辞めました。早く次の仕事を見つけたいです。でも、なかなか見つかりません。私は日本で一緒に暮らす家族がいます。夫と子供がいます。家賃や学校のお金を払うために、お金が必要です。もうお金がありません。どうすればいいですか。」
いま、新しい仕事を見つけるのは、大変かもしれません。そのときに、日本人も外国人も使える国の制度があります。
●仕事がない→お金がもらえます
仕事を辞めた人は、新しい仕事を探しながらもらえるお金「失業給付」があります。もらうためには、ハローワークに行ってください。
仕事を辞めた人は、新しい仕事を探しながらもらえるお金「失業給付」があります。これまでもらっていた給料の50パーセント(%)から80パーセント(%)を、国からもらうことができます。働いていた期間や、もらっていた給料で、もらえる金額が違います。 パート、アルバイト、派遣でも、もらえます。外国人ももらえます。もらうためには、ハローワークに行ってください。 でも、失業給付をもらうためには、働いているときに、雇用保険に入っていることが必要です。 そして、会社が「やめてください」という前に6カ月は日本で働いていないと、もらえません。(もし自分で「やめます」と言った場合は、1年働いていないともらえません) だから、今年の1月や2月に、日本に来た人はもらえません。お金をもらえる期間は、 日本で働いていた年数で変わります。90日もらえることが多いです。
●お金がない→借りることができます
新型コロナウイルスのせいで、給料が減って、生活することが難しいときは、お金を借りることができます。あなたが住んでいる町の「社会福祉協議会」に相談してください。アルバイトの人も、派遣の人も、外国人もお金を借りることができます。
お金を借りるための方法は2つあります。 ①いますぐお金が必要なときは「緊急小口資金」でお金を借ります。申し込みをして、1週間ぐらいでお金を借りることができます。10万円まで借りることができます。子どもの学校が休みになったので働くことができなかったという理由があれば、20万円まで借りることができます。返す金額は、借りた金額と変わりません(利子はありません)。保証人もいりません。新型コロナウイルスで、仕事を休んで、給料が減った人が借りることができます。仕事をしている人も、仕事をしていない人も、借りられます。
②仕事がなくなった人や、給料が減った人は「総合支援資金 生活支援費」でお金を借りることができます。1人暮らしの人は45万円、家族がいる人は60万円まで借りることができます。返す金額は、借りた金額と変わりません(利子はありません)。保証人もいりません。東京都は、申し込みから20日で借りることができます。
外国人でも借りることができます。どんな在留資格でも、借りることができます。でも、お金は借りるので、返さなければいけません。だから、あなたがお金を返すことができるかどうか、収入や貯金などを調べます。お金を返し終わるまで、日本にいることができるかどうか、あなたの在留期間も調べます。緊急小口資金は借りてから3年以内、生活支援費は借りてから11年以内で返します。 もし社会福祉協議会が「返すことができないかもしれない」と思うと、借りることができないかもしれません。
●家賃を払うことができません→お金をもらうことができます
家賃を払うことができない人は、3カ月間(長いときは9カ月まで)、家賃代としてお金をもらうことができます(住居確保給付金)。住んでいる町の「自立相談支援機関」に相談します。場所が分からないときは役所に聞いてください。
仕事をやめて、新しい仕事を探している人も、いま仕事をしている人も使うことができます。外国人も使えます。 もらえるお金は、住んでいる場所で違います。例えば、東京都世田谷区に住んでいる人は、53,700円までもらうことができます。 貯金が十分にあるときは、お金を借りることができません。
●とても困っている→生活保護
ほんとうに生活に困ったら、「生活保護」という仕組みがあります。国が生活費を払います。住んでいる町の役所に相談します。 外国人でも生活保護を使うことができます。でも、「永住」や「定住」など、限られたビザの人しか使うことができせん。働くビザで日本にいる外国人は、使うことができせん。 いろいろな仕組みがありますが、もし困ったら、POSSEに相談してください。あなたのために、私たちも考えます。
■身近な外国人に「セーフティーネット」はないのか
生活に困った際に「使える」制度をいくつか見てきました。しかし、私が日々、日本で働く外国人の相談に対応して感じているのは、こういう制度は、外国人には本当に使いづらいということです。 まず、「緊急小口資金」などの支援策の名称。どの制度が、どんなことをしてくれるのか、日本人でもなかなか理解しづらいのではないでしょうか。しかも、これらの支援策についての情報は、ほとんど日本語でしか出されていません。日本語に不慣れな人にとっては、制度が存在していることすら、把握できないのです。 そしてなにより、「外国人」という立場の難しさです。例えば、最近増えている相談は、「今年1月、2月に来日したのに、4月からの授業がなくなったので解雇されました」という語学講師の方々です。 解雇されたときに使う制度は「失業給付」ですが、受給するには解雇される前に6カ月以上働いている必要があります。語学講師の方々は、就労期間が足りず、失業給付を受けることができません。そうなると、残りは借金しかありません。 というのも、日本で最後のセーフティーネットとされている「生活保護」は、永住者などしか受けることができないからです。この条件を満たすのは日本で暮らしている外国人の5割程度です(2019年6月末)。
つまり、よくまちで見かけるコンビニやファミレスで働く外国人や、農業や漁業、工場などを支えている外国人の多くにとって、「最後のセーフティーネット」は存在しないのです。 日本は特にここ数年間、「人手不足解消」の名のもとに、多くの外国人を受け入れてきました。しかし彼らが生活に困窮した際に助けられる制度は整っているとは言えません。 新型コロナウイルスではこうした問題も明るみになりました。国籍に関わらず、日本で暮らす誰もが、生存を脅かされない国をどうしたら再構築できるのか、まさに今から、社会で考えていけたらと思います。
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