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連載

#5 DA PUMPの「夢の叶え方」

DA PUMPの「夢の叶え方」 YORIが抱えた苦悩「別な道もあるのかな」

DA PUMPのYORIさん=関口達朗撮影
DA PUMPのYORIさん=関口達朗撮影

目次

ダンス&ボーカルグループDA PUMPは、ISSAさん、DAICHIさん、KENZOさん、KIMIさん、TOMOさん、U-YEAHさん、YORIさんの7人。「U.S.A.」のヒット後、大きな手術を経験したYORIさんは、ヒットに恵まれなかった時期を「いろんな葛藤があった10年」と振り返ります。「別な道もあるのかな」とまで思い詰めたとき、考えたことは何だったのか? DA PUMPの「夢の叶(かな)え方」を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・坂本真子)

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【連載:DA PUMPの「夢の叶え方」】「U.S.A.」で再ブレークを果たしたDA PUMPは、昨年も「桜」「P.A.R.T.Y. 〜ユニバース・フェスティバル〜」とシングルを出し、日本レコード大賞の優秀作品賞を2年連続で受賞。紅白歌合戦にも出場しました。 メジャーデビューから20年以上。決して順調な道のりではなかった中で、7人が何をめざして走り続けたのか、これからどう進もうとしているのかを、1人ずつ、全員に聞きました。毎週水曜日に配信していきます。

ダンスの始まり「18歳になって、やっと」

YORIさんは広島県出身。三次市観光大使を務めています。ダンスを始めるずっと前に、「直感」があったそうです。

「何かきっかけがあったわけじゃないんですけど、自分がダンスをやるだろうというのは、中学の頃に感じたんですよ。ただ、高校を出るまでは踊る環境がなかったので、どうにかできないかと、ずっと悩んでいました」

大阪の大学へ進学したYORIさんは、最初に友達になった同級生に「ダンサーはいないですか」と尋ねたそうです。すると、「駅前で踊ってるよ」と教えられ、連れて行かれたのが千里中央駅。周辺には、大勢のダンサーがいて、初めは横で見ていました。やがて意を決して話しかけると、「いつも踊っているからおいで」と言われ、大学の授業が終わった後、深夜に毎日通ってダンスを教わるようになりました。

「中学のときからやりたかったことが、18歳になって、大阪に行って、やっとできた。僕のダンスの始まりです」

2014年10月にシングル「New Position」を出したときのDA PUMP=ライジングプロダクション提供
2014年10月にシングル「New Position」を出したときのDA PUMP=ライジングプロダクション提供

何の当てもない中、東京へ

大学を卒業してダンスを続けるかどうか、決断を迫られました。

「親には『広島に戻ったらどうか』と言われていたんですけど、腑(ふ)に落ちないというか、ダンスを続けていかなきゃいけない、続けていくんだ、という思いがあったんですね。大学を卒業して1年ぐらいして、何の当てもないんですけど、バッグ一つ持って東京に出てきたんです」

2003年春、23歳のときでした。

友人に誘われてダンスチームに入り、コンテストで勝つようになると、ダンスの仕事も増えました。当時DA PUMPが出ていたダンス番組「少年チャンプル」(中京テレビ制作、日本テレビ系)にも出演するようになります。

そしてDA PUMPにスカウトされ、2008年12月に加入しました。

「ダンスだけで食べていくことを考えたとき、いちアーティストとして活動できることは、東京に来る目標の一つでした。いろんな人に相談して、すごく迷ったけど、やっぱり自分にはこの道が一番じゃないかと思って、決めました」

2019年2月にシングル「桜」を出したときのDA PUMP=ライジングプロダクション提供
2019年2月にシングル「桜」を出したときのDA PUMP=ライジングプロダクション提供

「いろんな葛藤があった10年でした」

しかし、それから約10年、DA PUMPはヒットに恵まれず、思うように活動できない時期が続きました。

「今まで生きた中で考えても、いろんな葛藤があった10年でした。それは一言では言い表せないんですけど、今振り返っても、そんなに生やさしいものではなかったと思います」

メンバーが9人から7人に減り、DA PUMPの活動が止まってしまったとき、YORIさんは、他のメンバーと一緒にダンスのコンテストに出ました。でも、結果は芳しいものではありませんでした。

「事務所に帰って社長に報告したら、『おまえたちが今やることはそれじゃないんじゃないか』と言われて、自分は何をやっているんだろうと悩みました。何もできない中でも、できることをみんなで見つけようとしていたんですけど、次のステップに進む時間が迫っているんじゃないかという思いもあって。僕自身は年齢もISSAくんの次に上だし、別な道もあるのかな、とリアルに考えたこともありました」

悩み、考え抜いた結果、YORIさんはある答えにたどり着きました。

「自分がどこにいるのか、ではなく、どこに自分が向かっていくのか。それが重要だと思いました。思い通りにいかない年月を何かのせいにしていて、このままでは、違う場所に切り替えても同じ結果を迎えるだろうから、自分で答えを出し切るまで、納得いくまでやり切ろう、と思ったんです」

2014年以降、DA PUMPは全国のショッピングモールを回って無料ライブを重ね、メンバー同士の絆も深めていきました。

2014年に行われた「DA PUMP EVOLUTION TOUR 2014」から=ライジングプロダクション提供
2014年に行われた「DA PUMP EVOLUTION TOUR 2014」から=ライジングプロダクション提供

「U.S.A.」のヒット「なんだこれは」

2018年、3年半ぶりのシングル「U.S.A.」は、6月の発売前からネットでバズり、じわじわと人気が広がっていきました。

「なんだこれは、という騒がれ方をして、それがどんどん広がっていき、映像とリンクしてYouTubeの再生回数がすごい勢いで上がっていって、そこから音楽番組のお仕事がたくさん入ってきて。1個1個きちんと処理していく方が大変で、最初は何をやっているのか、ちょっとつかみきれませんでした」

3年半ほど前からあった痛み

DA PUMPは紅白歌合戦に出場し、翌2019年6月には日本武道館で2日間のライブを行いました。

そして9月2日。YORIさんが胸椎(きょうつい)類骨骨腫で手術を受けた、と公式サイトで発表されました。

実は、背中の痛みは3年半ほど前からあったそうです。

「『U.S.A.』がバズり始めて仕事が忙しくなってきた頃は、痛みが増していて、寝ていても痛みで目が覚めるくらいひどい状況でした」

胸椎類骨骨腫と診断されたのは、2018年の暮れでした。仕事が忙しく、しばらくは経過観察で様子を見ていましたが、事務所の社長や医師と相談し、「このタイミングしかない」と、2019年の夏の終わりに急きょ手術が決まったそうです。

「すごい勢いで忙しくなっていたのに、また突然お仕事に間ができてしまう、それにメンバーにも負担をかけてしまうし、どうしたらいいんだろう、という思いはありました。でも、この痛みがなくなるのであればすぐにでも取りたい、という思いもあったので、メンバーや事務所の人たちに相談して、体を治すことにまず専念しよう、という結論に至りました」

術後、背中の痛みはなくなりました。最初は運動制限がありましたが、リハビリとトレーニングを続けて、2019年11月25日、公式サイトで、YORIさんの復帰が報告されました。11月27日のテレビ出演から復帰し、無理のない範囲で活動を順次再開する、とアナウンスされました。

2018年6月6日、CD発売イベントで「U.S.A.」を歌うDA PUMP=東京・池袋のサンシャインシティ噴水広場、ライジングプロダクション提供
2018年6月6日、CD発売イベントで「U.S.A.」を歌うDA PUMP=東京・池袋のサンシャインシティ噴水広場、ライジングプロダクション提供

「最後は人間力というか、人だと僕は思うんですよ」

YORIさんが大切にしているものは、「人間力」だそうです。

「僕がやっていることは芸事じゃないですか。芸事をやる人は、例えばダンスがうまいとか、容姿がいいとか、何か技術や特化したものを持っている人が多いと思うんですけど、最後は人間力というか、人だと僕は思うんですよ。人の痛みをわかる人間、人間力のある人になりたいな、とすごく思います」

そう考えるようになった理由の一つは、背中の手術でした。

「自分が休んでいる間、みんながDA PUMPを守ってくれて、自分の活動も助けてくれました。その中でたくさんの優しさに触れることが出来て、いっぱい感じることがあって。『ありがとう』とちゃんと言える、温かくて、人の気持ちがわかる人になりたい、と思いました」

「出られることに感謝」

YORIさんは昨年、一つの夢をかなえました。

「7人になってから『武道館に立ちたい』という目標があって、でも『無理』と言われていたときもあった中で、昨年実現できたことがすごく大きくて、一つの夢がかなったし、みんなで一つの目標を達成できたんですよね」

次にめざすものは何でしょうか。

「やっぱり会場を大きくしたいです。令和に向けては、ドームツアーをやりたい、というのが僕の目標です」

今年のDA PUMPはアリーナツアーで幕を開けます。2月11日、さいたまスーパーアリーナ公演は、YORIさんにとって久しぶりのライブになります。

「そこに向けてどう調整していこうか、自分の体をどう仕上げていこうか、考えています。復帰するから、というような浮ついた気持ちは全然なくて、出られることに感謝して、うれしいですけど、ものすごく冷静な自分もいて。背中の痛みがない状態でライブに臨めることが、僕にとっては一番うれしいことですね」

「子どもの心はずっと持ったままでいたいな」

最後に、いま夢を抱いている10代や20代に助言をするとしたら、どう言いますか、と聞きました。

「やって大変な目に遭うより、やらなかった後悔は一生残るじゃないですか。自分もいろいろ体験をしてきて、小さなことから大きなことまで、あのときなんであんな選択をしたんだと、やらなかったことの後悔は今もずっと残っていますからね。でも、やって、失敗して恥をかいたり、嫌な思いをしたりしたことは全然何とも思ってないので、『まずはやってみよう』と言って、背中を押すと思いますね」

2月9日で40歳。「不惑」の年です。

「芸事をやっていると、ずっと子どもでいられるところがあるし、子どもの方がいいものができたりするので、みんなと一緒にバカなことをしたり、遊ぶ気持ちはそのまま、子どもの心はずっと持ったままでいたいな、と思っています。でも10年間、親に心配をかけてきましたし、ようやく『U.S.A.』がヒットしたと思ったら手術をすることになり、心配ばかりかけてきたので、親孝行をしたいですね。ファンの人たちにも支えてもらってきたので、元気になってから、少しずつでもお返しをしていければいいな、と思っています」

     ◇

インタビューはYORIさんの復帰が発表された翌日、2019年11月26日に行われました。インタビュー翌日の27日からテレビ出演に復帰するというタイミングで、YORIさんだけでなく、他のメンバー全員がとてもうれしそうに、7人で舞台に立つ喜びを語っていたことが強く印象に残りました。

     ◇

LIVE DA PUMP 2020
2月11日、さいたまスーパーアリーナ(ディスクガレージ☎050・5533・0888)
3月8日、Aichi Sky Expo(キョードー東海☎052・972・7466)
3月19日、大阪城ホール(サウンドクリエーター☎06・6357・4400)

LIVE DA PUMP 2020 FUNKY TRICKY PARTY もーあしびー」
3月29日 沖縄県・宜野湾海浜公園屋外劇場(ピーエムエージェンシー☎098・898・1331)

3月25日 新シングル発売

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