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母さん手書きの「攻略本」、今も私の宝物だよ… 一人暮らしする娘へ
母が手書きした「独り暮らし攻略本」とは?
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母が手書きした「独り暮らし攻略本」とは?
今から10数年前、大学進学で親元を離れることになった女性。下宿先への荷物搬入が終わった後、母が去り際に「これ、あげる」と手渡してくれたのは、手書きの「独り暮らし攻略本」だった――。先日、入学シーズンを前にそんなツイートが注目を集めました。「今でも宝物です」と話す女性に話を聞きました。
3月28日、こんなつぶやきが投稿されました。
大学進学を機に初めて親元を遠く離れ独り暮らしをすることになった10数年前、母が自作して持たせてくれた《独り暮らし攻略本》
— pugyurata (@fuguhugu) 2019年3月28日
料理の作り方から暮らしの注意点などなど…膨大な情報量そして謎のギャグに独特なイラストが笑いを誘う。
心細い初独り暮らしの身には最良の友のような一冊だった。宝物。 pic.twitter.com/WWhrVmIOkY
ツイートに添付されている画像は計4枚。
攻略本の一部を撮影したもので、料理レシピや暮らしの心得が、すべて手書きで記されています。
天ぷらの揚げ方を紹介したページの最後には、「これをめんつゆでいただくと日本人であることに感謝するぜー」の一文。
丼もののページでは「汁ごとごはんの上にどばーっとかけて出来上がり。つゆだくを楽しみたまえ!」
文章だけでなく、手書きのイラストも笑いを誘います。
暮らしの心得については、こんな感じです。
「ドレッサーや衣装ケース、時々ドアやふたを開けて風を通す」
「家計簿をつけよう=日記、自分史になる」
「手持ちの服を 頭をつかって リセエンヌのようにおしゃれを楽しむべし」
このツイートに対して「愛があふれていてちょっと泣きました」「寂しさをぐっとこらえて書いたんだろうなぁ」といったコメントが寄せられ、リツイートは9千、いいねは3万8千を超えています。
ツイートしたのはカラサキ・アユミさん。
幼少期から小遣いを古本につぎ込むほど大好きで、自身の古本ライフをつづった書籍「古本乙女の日々是口実」(皓星社)も出しました。
「春……新生活スタートの季節なんだなぁ……と、ふと思ったのがきっかけでつぶやきました」とカラサキさん。
自分が新生活を始めた時のことを振り返って、真っ先に思い浮かんだのが、母が書いてくれた攻略本のことでした。
「ひとりで笑いながら思い出に浸るのは、なんとなくもったいないな、誰かとこの気持ちを共有したいな、と思ったんです」
攻略本を受け取ったのは、下宿先への引っ越し作業が終わった日。今でもよく覚えているそうです。
「初めての土地、初めての下宿先、ひとりになってしまう不安を精いっぱい隠しながら、母を玄関先で見送っていた時に『これ、あげる』と差し出されました」
「電車の時間があるから行くね。また電話するからね」と言いながら去っていく母。
姿が見えなくなるまで、お互い何度も手を振ったそうです。
静かになった部屋で体操座りをしながら読んだ攻略本。
A4サイズ計12枚に手書きしたものが、クリアファイルにまとめられていました。
これとは別に、公共料金の説明やゴミ出しの分類表、親戚の住所や連絡先、下宿の契約書など、必要な情報も一緒にファイルされていました。
母の優しさと、娘を心配する気持ちが詰まった一冊。
ふざけた文章や絵にププッと噴き出しながらも、泣きじゃくりながら読み終えたそうです。
「初めて読んだ時は、うれしさよりも寂しさの方が上回ってました」
攻略本に書かれていた通り、家計簿をつけ始めたカラサキさん。
三日坊主に終わっては、新しい家計簿を買って、ということを3回ほど繰り返して、あきらめたそうです。
「どれも最初の1週間ぐらいしか書かれておらず、古本屋や本屋で買った本のレシートばかりが貼られた家計簿でした」
最も役立ったというアドバイスが「浮いたお金は貯金。本に化けてもgood」。
本好きで蔵書家だった母の影響もあってか、幼い頃から古本好きだったカラサキさん。
「この助言を盾に、アルバイト代はほとんど本代に消えてしまい、時には仕送りから捻出したこともありました。さすがに母から『限度ってモンがあるでしょ!』と怒られました」
ひとりで暮らし始めた当初は何度も読み返しましたが、最初の半年でほとんど頭に入ってしまい、1年経ったころには本棚にしまいっぱなしに。現在は自宅の本棚に並べているそうです。
そんな攻略本を紹介したツイートが話題になりました。
カラサキさんの自宅から車で40分ほど離れた所に住んでいる母に伝えると、こんな反応が返ってきました。
「汚い字やし、変な絵やし、はずかしいわー。人様に見せれるような文章やないし…… ええ~! どうしましょ」
コメント欄に寄せられた感想を見せると、「もったいないぐらい優しいコメントもこんなに……お母さん、すっごいHAPPYやわぁ」と、子どものように目をキラキラさせていたそうです。
多くの反響が寄せられたことについて、カラサキさんはこう話します。
「軽い気持ちで投稿したつぶやきに、これだけたくさんの方々に反応いただき、ただただ驚きでした。私が目標としている女性像は母で、その母の魅力を知っていただけて感激です。この気持ちを共有してくださった方々に“ありがとう”とお伝えしたいです」
攻略本に込めた思いについて、カラサキさんのお母さんに尋ねたところ、書面でこんな文章が送られてきました。
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