連載
#13 ネットの話題フカボリ
「すごくない自分」認めたら楽に 一歩ずつ進む大切さ、漫画で描く
「私はもっとできるはず!」。そんな気持ちにとらわれ、悩んだ実体験を描いた漫画が、ツイッター上で共感を集めています。作品が評価されず苦しむ、イラストレーターの主人公。思いわずらった末に、「すごくない自分」を受け入れてみると、少しずつ事態が好転していきます。「一歩一歩進む大切さを表したかった」と語る、作者の男性を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
「スゴい人になりたい」けど「実際は全然スゴくない自分」が「スゴく辛い人」へ。
そう名付けられたイラストが今月15日、ツイッター上で公開されました。
イラストレーターの主人公は、有名な先人に憧れ、自分も認められたいと奮闘します。
読者からは「人生と同じだ」「1人では導けないものが見えた」などのコメントが殺到しました。漫画は今も拡散され続け、リツイート数が5万を超えています。
作者はイラストレーターのさいとうなおきさん(@_NaokiSaito)です。有名ゲームのキャラクターデザインや、トレーディングカードの挿絵を手がけた経歴があります。
「スゴい人になりたい」けど「実際は全然スゴくない自分」が「スゴく辛い人」へ pic.twitter.com/ZSuTtvM7uq
— さいとう なおき (@_NaokiSaito) 2018年7月15日
漫画に描いたのは、約6年前の出来事です。当時はフリーランスで、制作会社などから業務を請け負っていました。
しかし内容は、カードゲームに登場する、モンスターの造形を考えるものなどが中心。人物を描きたいという本心との間に、ずれがあったといいます。
「日々、『有名になりたい!』という気持ちばかりがふくらんでいました。そんな時に、ゲーム開発会社から『新作の女性キャラを担当しないか』と誘われたんです。張り切って完成させたのですが、ネット上で『可愛くない』と酷評されてしまって……」
この経験を機に、「ダメな自分を認めよう」と考えたさいとうさん。会社に所属し、実績を積んでいた先輩イラストレーターに、アドバイスを求めました。その人の作品を分析し、気付いたことをノートに書き留める、といった努力も重ねたといいます。
「続けるうち、『良くなってきたね』と言ってもらえるようになった。ツイッターでも絵を投稿していたのですが、同時期に『いいね』の数や、ツイッター経由での仕事依頼が増えたんです。『俺はすごい』と根拠無く張っていた虚勢が、自信に変わった瞬間でした」
漫画を公開したことで、うれしい結果も得られました。今回、「いいね」の数は14万件を超えています。これまでの最高は、人気ゲームのキャラクターイラストについた約10万件。オリジナル作品で記録を塗り替えられたのです。
「今まで手がけた絵の大半は二次創作。『自分には独自の視点が持てないのでは』と、悩むことも度々でした。漫画が話題になったおかげで、『これは俺の表現だ』と初めて思うことができました」
「できない自分」を素直に認める。やれることに、一つ一つ謙虚に取り組む。そんな姿勢こそが人生を豊かにするのだと、さいとうさんは考えています。
「こだわりを捨てることで、僕は良い方向に変わることができました。同じ悩みを持つ人に、漫画を読んで『何だか元気が出た』と感じてもらえれば、とてもありがたいですね」
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