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「ゾウが落ちた!」深夜に村人が団結 救出後、予想外の過激な行動に
16日深夜、タイ中部チャンタブリー県で、誤って井戸に落ちた野生の子ゾウを住民らが数時間かけて助け出しました。暗闇の中、なかなか穴から引き出せない子ゾウを、集まった人たちが試行錯誤しながら、最後は重機を使い、ようやく救出。しかしその後、子ゾウは意外な行動に……。(朝日新聞ヤンゴン支局長兼アジア総局員・染田屋竜太)
「夜中の1時だったかな。『ゾウが穴に落ちている!』という連絡を受けたんです。村のみんなに慌てて声をかけ、その場所に行くことにしました」。そう話すのは、チャンタブリー県ケーン・ハン・マオ郡にある、クロンポン村の代表者、ウィチャイ・サーリーさん。現場は、ゴム栽培をしている農園の中でした。
すぐ近くにあるカオ・シップ・ハー・チャン国立公園にも連絡が行きました。公園の責任者、アナン・ノッパウェッチさんは、近くの村に呼びかけ、村人らと現場に走ります。
「うーん、難しい……」。集まった人たちは悩んでしましました。子ゾウは3メートルほどの深さの井戸に落ちていましたが、母親と思われる大きなゾウが近くをうろうろとしています。ウィチャイさんは、「親が鼻を使って助け出そうとしているんだが、全然うまくいかない。我々が近づこうとすると母ゾウが怒って向かってくるもんだから、救出を始められなかった」と話します。
2時間以上、「待機」が続き、30~40人の人が集まってきました。その時、母ゾウが歩き回っている途中にゴム園の電気柵に引っかかり、電流で気絶してしまいます。
「いまだ」と村人たちは穴に駆け寄り、棒やひもでゾウを引っ張り上げようとしますが、ゾウの体力も落ちているのか、うまくいきません。そこへ、国立公園を取り仕切るアナンさんが村人に頼んでいたショベルカーが到着。
「ショベルカーで井戸を壊して、ゾウが登れる道をつくろう」とアナンさんが指示すると、村人がショベルカーを操作して土を切り崩していきます。少しずつ掘り進め、ようやく子ゾウが上がれるくらいの緩やかな坂ができ、子ゾウも必死で登ろうとします。
作業開始から2時間以上たった午前5時ごろ。子ゾウ自力で坂を上がり、無事みんなの元へ。歓声が上がって……と思ったら、ショベルカーを敵と思ったのか、突然突進し始めました。
母親も意識を回復し、村人らは2頭を森の中に誘導。けが人もなく救出作戦は終了しました。
タイ政府で野生動物を管轄する担当者にきくと、タイ国内には3千数百頭の野生のゾウがいるそうです。
今回、子ゾウが落ちた村の周辺だけでも30頭以上はいるとのこと。村の代表者、ウィチャイさんは、「普段は村の中までゾウが入ってくることはあまりないけれどね。食べ物がなかったんだろうか。でも、無事に助かって良かったよ」と話してくれました。