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インスタでよく見る「完成度の高いお弁当」どんな人が作っているの?
インスタグラムの人気コンテンツの一つに「#お弁当」があります。検索すると毎朝、忙しい時間に作っているにもかかわらず、完成度の高いお弁当が膨大に現れます。いったいどんな人が作っているのか。なぜ、その熱意が持続するのか。そこには、朝の料理の省力化だけでなく、作る側の気分を高める、愛のこもった「いいね!」のコミュニケーションがありました。
まずは「完成度の高いお弁当」が作れない派の声を紹介します。
「実は、こんなことを投稿するのは恥ずかしいのですが、夫のお弁当を作ったことがありません。何回か作ろう!と思って、インターネットや本などで色々調べてみたのですが、いざ作ろうと思うと重たい腰が上がりません。世の中の奥様の皆さんはどうしているのでしょうか」
長野県の花岡薫さん(31)は、0歳の子どもと夫の3人ぐらしです。「今年こそがんばろう」と考えていますが、花岡さんは4年前に聞いた夫の言葉が心に引っかかっているからです。
「お弁当作ってくれたらいいな」
でも、「早起きしなきゃ」「保冷剤を入れれば傷まないの?」といった疑問が次々わいてきます。「お弁当は『おいしい』と言ってくれる場面を私が見られないから、モチベーションが上がらないのかな」ともいいます。
花岡さんの声を紹介した記事をSNSで読んだ長崎市の主婦、田島知子さん(51)は、こんな感想を書き込みました。
「夫のお弁当だったらテンション上がらないけれど女子高生のお弁当はお友だちの評価が厳しいので気合が入ります。夕食の支度の時からお弁当メニューも頭に入れて取り分け、リメイク、自家製冷凍と色々考えています。慣れてくると意外と毎日の生活の一部になります」
毎日、高校生のお弁当を作り、会社に食堂がある夫も休日出勤する時にはお弁当を持たせているそうです。夫のお弁当はテンションが上がらない理由を尋ねてみました。
「多分、作ったお弁当を見る人が夫だけだからかな?」
「特別に文句も言わないけどほめてもくれない!」
ただ、高校生のお弁当はリアクションが違うといいます。
「娘は友だちに〇〇って言われたー」
「〇〇は歯に挟まる、におう、食べる音が恥ずかしいから二度と入れないで!」
「〇〇今度は〇〇な味付けにしてー」
田島さんは、毎日、こんな感想や文句も案外楽しみにしているそうです。
そこで「完成度の高いお弁当」のカリスマに話を聞きにいきました。
インスタグラムにお弁当を中心に料理写真を1200枚以上アップしている東京郊外に住むANNAさんです。フォロワーは16000人います。
本名は、佐藤杏名さん(33)。夫と子どもは中学生2人、小学生2人の6人家族でした。ANNAさんも週5日は仕事をしています。
お弁当作りを始めたのは、末っ子の幼稚園児のお弁当を作り始めた2年10カ月ほど前からでした。ただ、ANNAさんは、幼稚園児の息子にいきなり高いハードルを突きつけられました。
「お家で食べる方が楽しい」
ご飯とおかずをお弁当箱に詰めるだけでは、食べてくれませんでした。同じ料理でも、家での温かい料理と冷えたお弁当では違ったようです。親子で公園にお弁当を持って行ってもなかなか食べてくれなかったそうです。
「もともと料理は好きでしたが、お弁当は得意ではなかったので、あまり楽しいとは思っていませんでした」
インスタグラムにほぼ毎日作るお弁当の写真をアップし始めたのは、2年ほど前からです。
「写真を投稿するのは、毎日作るモチベーションを維持するため、毎朝起きるためでしょうか」
最初の頃は、アニメ「となりのトトロ」のトトロのほか、「スヌーピー」、「アンパンマン」、「ドラえもん」といったキャラ弁をつくっていました。スヌーピーは、「ママ、イヌ?」と言われたそうで、今振り返ると「恥ずかしい」といいます。
お弁当を作る時間も、最初は1時間ほどかかりましたが、今では30分ほどで作り上げています。最大のポイントは、「朝は極力、配置だけにする」ことだそうです。
ANNAさんがお弁当作りにのめり込んだのは、子どもに食べてもらうためであり、帰宅した後の感想を聞くことが楽しくなったからです。今は中学生の娘にお弁当を作っていますが、「毎日楽しみにしている」と声をかけられており、それがモチベーションにつながっています。
「私が中学生の時は、反抗期で親とそんなに仲が良くなかったので、今はお弁当を通じて親子で会話できてよかったです」
ANNAさんのところには、フォロワーからダイレクトメッセージで質問が届くこともあります。
「(キャラクターの顔を作るノリを切るため)どんなハサミを使っているんですか?」
こんな質問には、拍子抜けかもしれませんが、「100円ショップで買った文房具のハサミですよ」と答えています。
「キッチンハサミや、眉毛ハサミ、お弁当用ののりパンチを使う人もいますが、私は100円ショップの文房具が一番使いやすかったです」
お弁当のふたを開けた時に、がっかりさせないためのコツもあります。
お弁当を詰めたら配置がずれないようにラップをかける。必ず色みを考える。煮物系が多いと「茶弁」になってしまうから。例えば、茶色の曲げわっぱにいなりすしを入れる場合、チリソースやポテトサラダを使って、明るい感じにするといいとアドバイスします。
また、仕切りは使わず、味が混じるのを防ぐたのレタスを使います。お弁当箱の底にはお弁当シートをしきます。お弁当シートは、洗うのが楽になります。
そんなANNAさんには、秘密のノートがありました。2年間書き続けたノートです。キャラ弁のデザインや色みを書き込んでいます。今は、頭の中に入っているため、キャラ弁を意識せずに作れるようになったそうです。
夜ごはんでから揚げを余分に作る
↓
お弁当のおかずとして甘辛く味付けしてごまをふる
↓
茶色いので副菜にブロッコリーやゆで卵を組み合わせる
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それからお弁当箱の配置を考える。
「じゃあ、今日のおかずならニワトリにしよう、アンパンマンにしよう、となります。キャラを決める順番は最後で、朝考えます」
最初の頃は、キャラクターを最初に考えたため、「あれがないと作れない、と思って買い物をしていました」と振り返りますが、今は「ハムがなければカニかま、ソーセージで代用できると考えられるようになりました」と言います。
そんなANNAさんも、朝寝坊して顔を作れない時もあるそうです。ただ、子どもたちからは「お弁当に顔がないと、どこから食べていいか分からなかった」と言われたそうです。コロッケを使ったクマのキャラ弁も、お弁当箱のご飯の上に乗せて詰めるコロッケの裏側にソースをぬっています。
「小さなソース入れを入れたことがありましたが、『ママ、ソースをかけると顔が汚れちゃう』と言われ、工夫しました」
1年前には、一眼レフカメラを買いました。インスタグラムにアップする時、フィルターを使っていますが、まずは撮影する時の「自然光が大切」とアドバイスします。
ANNAさんが実際に「くまさん弁当」を作るのも取材させてもらいました。そこで気づいたのは、朝30分でかつ見栄えのいいお弁当が作れるのは、パーツの「配置」や「色の組み合わせ」に最も力を注いでいること。
ANNAさんが「陥りやすい罠」として挙げていたのは、キャラ弁作りの本や絵本を見たりして、そのキャラクターにそっくりに作ろうとすることです。
絵を描くように、とよく言われますが、絵を描くことでさえ不得手だと、負担を感じる人も多いでしょう。社会人も、中高校生も、コンビニでお弁当を買うことがそれほど恥ずかしくない時代になりました。
が、だからこそ、お弁当を食べる人には、ちょっとした特別感をプレゼントできるのです。
目の位置を変えて優しい表情にしたり、怒った表情にしたり、少し崩れたりしていても、それが帰宅後のコミュニケーション、つまりリアクションにつながるそうです。
私も料理は好きですが、最近は遠ざかっています。お弁当づくりは、子どものお弁当を1週間ほど作ったことがあります。キャラ弁にはなりませんし、冷凍食品も使いました。ただ、「茶弁」だけは避けてあげたいという気持ちでした。
キャラ弁にするかは別にして、リアクションのあるお弁当を作れるか、私も少しずつチャレンジしていきたいと思います。
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