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お金と仕事

銀座の一等地、1時間100円で出店OK 不動産業界の隙を突く発想

銀座の一等地で1時間100円で店が持てる、そんなマーケット・スペースができた。テナントが決まるまでの遊休空間を使って、1㎡から好きな広さを1日から借りられる。地方で面白いものや質の高いものをつくっている人やネット販売中心のクリエーターたちが気軽に集まれる交流スペースを目指している。

角材で仕切られたスペースを使い、小さな店が並ぶマーケット・スペース「STAND GINZA/80」=東京都中央区銀座3丁目
角材で仕切られたスペースを使い、小さな店が並ぶマーケット・スペース「STAND GINZA/80」=東京都中央区銀座3丁目

目次

 高級ブランド店が並ぶ東京・銀座の一等地に、1時間100円で店がもてる。

 なんでも1㎡から出店できる、そんなマーケットができたと聞いた。

 銀座で100円? 本当なのか。ぶらっと行ってみた。

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CHANELと同じエリアに

ビル1階にある看板。この階段を降りていくと、マーケット・スペース「STAND GINZA/80」がある
ビル1階にある看板。この階段を降りていくと、マーケット・スペース「STAND GINZA/80」がある

 地方出身の記者にとって、銀座といえば、高級店ばかりで、店に入るにも二の足を踏んでしまう。

 国が発表する地価で最も高い銀座4丁目の1㎡の地価は、5050万円(2017年)。365日で割っても約14万円で、とても100円で借りるのは無理そうだ。
 

 半信半疑ながら、11月11日のオープンの日に会場を訪れた。
 
 JR有楽町駅から徒歩5分。
 「STAND GINZA/80」という名のマーケット・スペースは、CHANELやアップルストアがある銀座3丁目の同じ区画にあった。
 
 通り過ぎてしまいそうなビルの地下1階に降りていくと、フロアは約5㌢の角材で1㎡に仕切られ、裸電球が垂れ下がる。なんだか闇市のようだ。
 
 全部で80区画。希望する広さによって大小様々な15店が軒を連ねていた。

店が並ぶ前の「STAND GINZA/80」
店が並ぶ前の「STAND GINZA/80」 出典: =Kazutaka Fujimoto氏撮影

1㎡を1時間100円で

各店舗を回り、商品を品定めする江口晋太朗さん
各店舗を回り、商品を品定めする江口晋太朗さん

 このフロアはもともとはブランドショップが入っていた。

 次のテナントが入る来年9月までの1年間を有効に活用できないかとのビルオーナーの意向を受け、企業のコンサルティングやまちづくりに携わる江口晋太朗さん(33)らが企画した。

 1㎡を1日から借りられ、出店料は1日12時間利用で1200円。本当に1時間100円だ。

 「普通に考えて、店を持とうとすると、月に15万円ほど(15㎡)の賃料がかかります。さらに保証金や内装費などの初期投資が必要です。でもここは好きな広さを1日から好きな期間借りられるのが特徴です。もちろん、来年9月までですけど」。

子どもたちが参加できるワークショップもあった
子どもたちが参加できるワークショップもあった

とはいえ…

 「本当に100円でできるんですね」と記者が感心していると、江口さんは「最初は銀座で100円というのが面白いなと思ったのですが、さすがに収支が厳しくて…出店した初日限定で、来年1月までの特典です」。


 さすがにずっと100円では無理でしたか。とはいえ、2日目以降は平日2000円、土日祝日は4000円…割安なことには変わりないですが。

不動産業界の隙を突く

ネパールでつくられたセーターなどを売る店や無農薬野菜を売る店もあった
ネパールでつくられたセーターなどを売る店や無農薬野菜を売る店もあった

 それにしても、なぜこのスタイルなのか。

 「テナントが空く1年間に何か面白いできないかとの話をもらい、このスキームを考えました。銀座に限らず、都市部は地価が高すぎて、大きな資本しか参入できません。地方で質の高い商品を作っている人や面白いことをやっている人が出店しようと思ってもハードルが高すぎます」

 「一方で、一般的な不動産契約は数年単位が基本です。だから、どうしても半年とか1年のスパンで空きが生まれます。これまでは、その空きを埋めることはしてきませんでした。このマーケットは、そうした遊休スペースを活用しようというもので、不動産業界の隙を突く発想です。細分化して貸すなんてことは、収支の計算が難しくなり、業界では、これまでやってこなかったことです」

ひもと木材でつくったハンガーラックに服を並べる
ひもと木材でつくったハンガーラックに服を並べる

地方からでも気軽に

 このマーケットでは火を使うなどの調理はできないが、ほかの出店条件はない。オープン初日は、アクセサリーや無農薬野菜、服などを売る店が出ていた。

 自家製のグラノーラを販売した香川県の箕輪ちせさん(36)は、「東京で売ってみたいと思っていましたが、香川だと、なかなかそういう機会はありません。ここで、東京のお客さんに『おいしい』と言ってもらえ、自分の商品に自信が持てました」と話す。

 長野から参加の農家、小城雄哉さん(34)は「おめかししているお客さんもいて、土の付いた野菜は買ってもらえないと思ったけど、質を求めている方が多かったです。こちらが付けた値段を理解して買ってくれたのが銀座ならでは。また出店を考えたいです」と話す。

集客はSNSで

SNSで出店を知り訪れた客と交流する出店者(左)
SNSで出店を知り訪れた客と交流する出店者(左)

 銀座とはいえ、ビルの地下1階のわかりにくい場所。集客は、どうするのか。

 出店者や来た人に聞くと、店側が告知したSNSを見て、もともとのファンや友人らが訪れたという。


 プロデュースする江口さんは「今後はぶらっときてもらえるような集客の工夫も必要でしょう。出店依頼や内見の問い合わせは来ています。このスキームを路面店や銀座以外の場所、地方にも広げて、個性的な人やモノの交流が生まれる場にしたい」と話している。

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