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防衛費って何? 過去最大「5兆2551億円」どんどん伸び続ける理由
25万人を抱える実力組織・自衛隊。今年度の防衛費は5兆1251億円に上ります。「国を守るための費用」をどう考えたらいいのか。超解説します。(朝日新聞政治部防衛省担当記者・相原亮)
自衛隊発足直後の1955年度は1349億円だった防衛費。その後は右肩上がりを続けましたが、冷戦崩壊後の90年代に入ると横ばいに。その後は若干下がる傾向にありましたが、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降、防衛費が再び上がり続けています。
今年、安倍晋三首相は「安倍政権は、10年間にわたり削減されてきた防衛費を再び増加させた」と発言。来年度はさらに増やして、過去最大の5兆2551億円の予算を要求しています。
米国の約58兆円、中国の約28兆円、ロシアの約15兆円(いずれも2016年度の概算)など、軍隊を持つ他国の国防予算と比べれば少ないように見えますが、憲法にもとづく専守防衛のもと日本が防衛費を増やし続けている現状について、日本政府内には「かつて防衛予算の増額は後ろめたかった。だが今は、核やミサイルの開発を進める北朝鮮、海洋進出を強める中国の存在もあって、国民の理解が得られやすい」との見方があるようです。
今年度予算のおおよその内訳をみてみると、最も多いのが「人件・糧食費」で2兆1千億円。自衛隊員の給料や退職金、食事のための費用です。
艦船や航空機などの燃料費や修理費などに充てる「維持費」は1兆円。また「装備品購入費」は8400億円。防衛装備品とは、つまり兵器のこと。トランプ米大統領が11月の来日時、「重要なのは、日本が(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ」と売り込みました。装備品購入費のうち新規購入分は一部に過ぎず、大半は過去に契約した分に対する支払いです。防衛装備品は高価なため、分割払いがメーンなのです。
さらに「基地対策経費」は4500億円。なかでも日本国内の米軍基地で働く日本人従業員の給料や光熱水費、福利厚生費などを日本政府が代わって負担する「在日米軍駐留経費負担」に2千億円を充てています。これは1978年に金丸信・防衛庁長官が「円高・ドル安の中で(米軍への)思いやりがあっていい」と発言したことから「思いやり予算」と呼ばれています。
これほど巨額の予算を使う自衛隊とは、どういう組織なのでしょうか。
自衛隊は「自衛官」と「文官」で構成します。自衛官は「制服組」、文官はスーツを着ているので「背広組」と呼ばれます。いずれの呼称も幹部を指すケースが多いです。
大半を占めるのが「自衛官」で、定員約25万人。このうち、最多は陸上自衛隊の15万人。海上自衛隊は4万5千人、航空自衛隊は4万7千人。これに陸海空の混成部署である統合幕僚監部の人たちがいます。一方、「文官」は事務官や書記官が約2万1千人います。
制服組、背広組の幹部が勤務する防衛省は、東京・市谷(いちがや)にあります。官庁街として知られる霞が関や、国会がある永田町からは車で10分ほどの距離です。
自衛官は希望者を募集する形で集めます。全国50カ所に「自衛隊地方協力本部」を展開し、学校説明会などを通じて18~26歳を募集します。ですが、少子化の波には逆らえず、1994年に1700万人いた対象人口は、昨年度は1100万人にまで減ってしまいました。これに対し、採用者数は増減はあるものの横ばいで昨年度は1万4千人でした。
国民の間では、災害派遣などで活躍する自衛隊への好感度は上がっています。ですが防衛省幹部は「採用となれば別。親が心配するケースが多く、募集に苦戦している」と明かします。
一方、幹部自衛官を養成する代表的な教育機関が防衛大学校。神奈川県横須賀市にあり、高校などを卒業した若者が4年間学んだ後、幹部候補生となります。幹部候補生は防衛医大などのほか、一般大を卒業した学生もいます。また、たたき上げの「曹」という階級にも幹部候補生になる道が開けています。
日本を取り巻く安全保障環境が刻一刻と変わるなか、適正な防衛予算の規模はどれくらいなのか、考えていく必要があります。