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コラム

心を壊す研修の実態とは… 〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く

漫画家・吉谷光平さんが「心を壊す研修の実態」について描きました。

漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん

 参加者の心を壊す研修の実態とは? ツイッターに投稿した漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題になった漫画家・吉谷光平さんが描きました。

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漫画「ブラック新人研修」=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」=作・吉谷光平さん
 ゼリア新薬工業の新入社員だった男性(当時22)が新人研修中に自殺し、労災認定されていた。遺族が8月、記者会見して明らかにした。研修の一部を委託された会社の講師から、意に沿わない告白を強要されたことなどで精神疾患を発症。強い心理的負荷が自殺の原因と認められた。参加者の心を壊す研修の実態とは――。
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
 男性は2013年4月1日、ゼリア社にMR(医薬情報担当者)として入社。同10~12日、新入社員を対象にした「意識行動変革研修」を受けていた。

 「弱みをさらけ出せ」。遺族や代理人弁護士によると、講師にそう迫られた男性は、吃音(きつおん)を同期の社員らの前で「告白」させられた。

 「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になって、その後何をどう返答したのか覚えていません」。男性は研修日誌にそうつづったが、父親は「男性は吃音ではなかった」と話している。参加者によると、感極まって涙を流す受講者も多数出る異様な雰囲気の研修だったという。

 その後も長時間の研修や自主学習を強いられた男性は同年5月19日、自宅に帰る途中で自殺した。
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
 男性の研修参加報告書には、講師が赤ペンで書き込んだコメントが残っていた。「いつまで天狗(てんぐ)やっている」「目を覚ませ」

 研修の一部を手がけたビジネスグランドワークス社(東京)は、ゼリア社のほかにも多数の上場企業や有名企業の研修を受託し、委託先の企業名をHPに載せていた(現在は削除)。うち一社の広報担当者は「自分もここの研修を受けたことがある。泣いている人もいた。達成感、一体感があってよかったが、来年度の委託は中止した。こういう研修を受けさせているのかと消費者の目も厳しくなっているので」と話す。

 労働相談を受けているNPO法人POSSE(ポッセ)の今野晴貴代表理事は「肉体の酷使にとどまらず、人格を否定し、それまでの価値観を破壊するような『ブラック新人研修』はこの10年で増加傾向にある。ひどい労働環境でも辞めないように、最初に順応させる狙いがある」と指摘する。
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
 男性の両親は8月、ゼリア社とビジネス社、同社に所属していた講師を相手取り、計約1億500万円の損害賠償を求めて提訴した。ゼリア社は「係争中でコメントできない」、ビジネス社は「長い研修期間のうち3日を担当しただけで、当社の研修に落ち度はなかった」としている。
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「ブラック新人研修」の一場面=作・吉谷光平さん


 【よしたに・こうへい】 漫画家。サラリーマン生活や漫画家アシスタントなどを経て、月刊スピリッツの「サカナマン」でデビュー。漫画アクションで「あきたこまちにひとめぼれ」を連載中、月刊ヤングマガジンの連載「ナナメにナナミちゃん」の単行本1巻が発売中。ツイッターで公開した2ページ5コマの漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題に。

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