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「とんでもない誇張だ!」グアム副知事がミサイルより恐れる「風評」
アメリカ領グアムのテノリオ副知事がこのほど、日本で会見しました。本来の目的は、北朝鮮が発射すると予告したミサイルへの懸念を払拭するためだったはず。しかし、副知事がこの日最もエキサイトしたのは、会見で出たある「心外な質問」でした。(朝日新聞国際報道部・疋田多揚)
8月23日、都内で会見を開いたテノリオさん。集まった日本のメディアを前に、「北朝鮮が本当にミサイルを撃ってきても、グアムは安全だ。安心して旅行に来てほしい」とアピールしました。
実は2日前にも都内で会見を開いています。観光客の半数を日本人が占めるというグアム。「風評」を強く心配しているようです。
質疑応答の時間。私からは「アメリカに属しているより、独立した方が(北朝鮮に狙われなくて)グアムは安全になると思いますか?」と聞いてみました。
ちょっととっぴな質問だったのか、会場から失笑が……。
テノリオ副知事は開口一番、「そもそも自分はアメリカ人であることを誇りに思っている」と一蹴。
そして、「日本もそうですが、世界で最も優れた軍隊に守られるというのは大きなメリット。こうした国と同盟関係にあることで、弱い立場の国や地域も守られますからね」とはっきり否定しました。
そもそも、テノリオさんは「軍人一家」。
5人のお子さん全員が、アメリカ軍で働いたり、軍人と結婚したりしているそうで、私の質問はぶしつけだったかもしれないです。
ただ、「グアムの中にも独立を望む住民はいる。でも、こうしたいろいろな異なった意見を持てるのが民主主義のいいところだ」とも。なるほど。
ところで、終始穏やかで冷静だったテノリオさんの表情が一変したのが、別の記者がした次の質問。
「グアムにはヘビがたくさんいるそうだけど……」
この記者はいくつかの質問をまとめてしたのですが、副知事は「まずヘビから答えさせてほしい」と切り出し、「これはとんでもない誇張だ!」と色をなして反論を開始しました。
「私は今の家に20年住んでるけど、ただの1回もヘビを見たことがない!」と強調。
でも、ちょっと思い直して、「いや、1回あった。でも家の外だった」
そして、「20年住んで1回だけだ」「365日×20年、それで1回だけ」と、人さし指を突き立てて「1回」という単語を5連発。
「この確率(の低さ)を計算してみてくれないか」
私は、「あ、やっぱりいるんだ」と思ってしまいましたが。
さらに、余勢を駆って立ち上がり、道ばたの犬のフンをよけるようなステップを繰り返し「グアムは、こんな風にヘビをよけないと道を歩けないと思ってるかもしれませんが、とんでもない誤解です!」と訴えました。
「0.000001%」(グアム政府観光局長)というミサイルの着弾確率と、20年に1回だけ出くわしたというヘビ。風評被害という意味ではどちらもグアムには脅威と言えるでしょう。
「グアムには古くから、『仲良くやっていこう』と仲裁を促すことわざがある。こうしたフレンドリーなカルチャーを味わいにぜひグアムを訪ねてほしいし、この言葉を金正恩・朝鮮労働党委員長にも知ってもらいたい」と語ったテノリオさん。
グアム愛がひしひしと伝わってきた会見でした。
会見後、気になってグアム政府観光局に問い合わせると、グアムにはもともと、人を脅かすようなヘビはいなかったそうです。
ところが、貿易をするようになり、船荷にまぎれて外から入ってきたのだとか。
困ったのが、グアムにしかいない「グアムクイナ」。飛べない鳥で、地面に巣を作ります。卵がヘビの格好の餌食になってしまい、なんと野生のグアムクイナは絶滅してしまいました……。
ただ、人工増殖には成功。今では、こうしたグアムクイナを保護する基金に充てようと、毎年チャリティーマラソンがグアムで開かれているそうです。
テノリオさんのヘビに対するリアクションは、決して大げさではなかったんですね。
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