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禁じられた改札タッチ、「とてつもない金額」とは? JR看板を検証
JR桜木町駅(横浜市)の改札に7月4日、一時的に置かれた看板が話題になっています。「振替乗車のお客様へ 改札機にはタッチしないでください」と呼びかけ、締めの言葉は「とてつもない金額が引かれます!!」。力の込もった書きぶりに、ツイッターでは看板の写真が3万6千回以上リツイートされています。しかし「とてつもない金額」とは幾らなのでしょうか。
看板は、以下のような内容です。
7月4日は京急線で人身事故が発生。品川-京急川崎間で運転見合わせとなり、JRなどが振替輸送をしていました。看板は桜木町駅員が設置。JR東日本は取材に「もっと分かりやすいご案内をすべきだった」としていますが、興味を引かれる内容でもあります。
振替輸送で到着した人は、なぜIC定期券を改札にタッチして出てはいけないのでしょうか。
JR東日本に聞くと「入場記録のある駅からの運賃を、IC定期券から差し引いてしまうため」と教えてくれました。
定期券や乗車券を買って、お金を支払い済みの人を助けるための振替輸送なのに、意味が無くなるというわけです。
19:18 【運行情報】雑色駅での人身事故の影響で品川駅〜京急川崎駅間の上下線の運転を見合わせています。
— 京急線運行情報【公式】 (@keikyu_official) 2017年7月4日
次の路線にて振替輸送実施中です。
JR線、東急線、横浜市営地下鉄線、りんかい線、東京モノレール... #京急 #keikyu https://t.co/djDfAaW9bB
しかし「とてつもない金額」の部分は、疑問が残ります。特別に運賃がふくらむ理由があるのでしょうか。
JR東日本からは、こう回答がありました。
「金額は、改札を通らないルートの運賃を差し引くことになります」
どういうことでしょうか。
振替輸送で他路線に乗り換えるときは、基本的に係員通路などを使うため、IC定期券に改札を出入りした記録が残りません。
そのまま桜木町駅でタッチすると、システムは厳密に運賃を計算します。京急線から一度も改札を出ずに、JR桜木町駅までたどりつけるルートを見つけ、その分の運賃が差し引かれてしまうのです。
そこで京急線の泉岳寺駅からJR桜木町駅まで、改札を出ないルートを探してみました。
泉岳寺も、京急線と都営地下鉄を改札なしで乗り換えることができます。
しかし大抵の駅は、違う鉄道会社の路線に乗ろうとすれば改札が現れます。下調べが不十分だったこともあり、巨大なダンジョンをさまよっているようでした。行ったり来たり運賃の出費が続きます。
現地確認をした結果、いくつかルートが見つかりました。
たとえば泉岳寺駅に入り、そのまま京浜急行ではなく、都営地下鉄に乗車。
その後は▼都営浅草線で三田へ→▼都営三田線で白金高輪へ→▼東京メトロ南北線で溜池山王へ→▼改札内通路で国会議事堂前へ→▼東京メトロ千代田線で北千住へ→JRを乗り継いで桜木町に到着。
首都圏を北千住まで北上し、南へとって返す、普通はありえないルートです。
JR東日本によると、こうした状態でタッチすると、改札を通らないルートの中で最安の運賃が、自動的に引き落とされるといいます。
条件を整えて、JR桜木町駅で新品のカードをタッチしてみました。
結果は・・・!
「978円」でした。
「とてつもない」かというと迷うところですが、一般的なルートなら441円なので2倍以上の運賃です。泉岳寺ー桜木町間という一例なうえ、IC定期券の区間によっても負担額は変わってきます。ただ、タッチで思わぬ金額が引き落とされる事はありそうです。
JR東日本は「IC定期券のお客様で、振替乗車をご利用の際は駅係員にお申し出いただき、係員通路などをお通りください」と呼びかけています。不要な入場記録も駅係員に伝えれば、消去できるといいます。
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