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美少女ゲーム「うんコレ」開発 「日本うんこ学会」の真剣な狙い
日本うんこ学会。初めてその名前を目にした時は「『うんこ』ってはやってるの?」と驚いた学会でした。どんなことをしている学会なのか、話を聞いてみると、成り立ちは4年前。「うんこ」をきっかけに面白がっているうちに、医療に興味を持つようになってほしいと始まった、楽しく学べる学会でした。
学会長を務めるのは、外科医の石井洋介さん。
なぜこんな学会を作ろうと思ったのか尋ねると「ツイッターでバズる2大ワードって知ってます? 『うんこ』と『おっぱい』らしいんですよ」と真剣な顔で返されました。
もともとゲームや漫画が大好きな石井さん。
これまで、医療情報はどこか堅く、本当に届けたい人へ届いていないのではと感じていました。
そこで、エンターテイメントの力を借りて、医療や健康の正しい情報を届けることができないかと、「うんこ」をキーワードに活動を始めました。
まず挑戦したのが、うんこゲーム「うんコレ」の開発です。あおり文句は「うんこで救える命がある」「課金の代わりに うんこ報告!?」。
このアプリでは、自分のうんこを観察して(観便といいます)、色や形を報告すると、美少女に擬人化した腸内細菌のカードが引けます。そして、その腸内細菌たちが、大腸がんをやっつけるゲームが楽しめます。今年秋にはリリース予定です。
このゲームは、大腸がんを予防するため、まずは自分の「うんこ」に興味を持ってもらう狙いがあります。大腸がんになっても、ほとんど自覚症状がありませんが、患者の多くが、何かしら便や排泄(はいせつ)に異常があったと話しているそうです。
石井さんは「自分の便をよく見ていない人が多いんです。これで、毎日チェックする習慣がつけば」と話します。
大事なことなのに、なかなか話せない「うんこ」の話を、もっとオープンにできるようになったら、という思いもあるそうです。
昨年には、うんこを漏らしたエピソードをまとめた本『タイムマシンで戻りたい』も出版しました。
おもしろおかしく読み進めていると、日本で最も患者数が多い難病「潰瘍(かいよう)性大腸炎」についても紹介します。
企業の支援を受け、3年連続で「ニコニコ超会議」にもブースを出しています。
病院へ行くのはハードルが高いと思っている人に、気軽に医療情報にふれてほしいという思いから、
セクシー男優と内科医が性感染症について話したり、産業医がブラック企業撲滅を語ったりするトークイベントや、
AEDアイドルが歌う企画などを催しました。
実は石井さん自身も、難病の「潰瘍性大腸炎」の患者でした。
19歳のときに、大腸を摘出する手術をして、一時は人工肛門生活に。
「人生終わった」と思い、学校にもほとんど行かず、ゲームばかりしていたそうです。
ある日、ネットの掲示板に、人工肛門を閉じる手術をしている病院がある、
という書き込みを見つけ、それを頼りに受診し、無事にその手術を受けることができたのです。
「医療情報で助かる人がいるんだな、ということを実感したし、外科医にめちゃくちゃあこがれましたね」
そこから猛勉強。2年半かけて、高知大医学部に入学し、見事卒業。
目標の外科医になって、より多くの人に情報を届けたいと考え、学会を立ち上げました。
学会には、ゲームのプログラマーや有名な声優や絵師も、ボランティアで参加してくれています。
石井さんは「エンターテイメントには、その人の行動を変える力がある」と言います。
「遊んでいるうちに、実は啓発されて、行動につながっている。これからも、そんなことをどんどんやっていきたい」
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