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「加計学園」あの会見現場で起きていたこと…熱気がカメラに乗り移る
白いもやがかかったような、この写真。カメラの設定を間違ったわけではありません。「加計学園問題」で渦中の人物、前川喜平・前文部科学事務次官の記者会見会場の熱気で、レンズが曇ってしまったのです。カメラが写し撮った、その「熱気」とは。(朝日新聞映像報道部記者・関田航)
25日夕方、加計学園問題について、前川喜平・前文科事務次官が霞が関の弁護士会館で記者会見を開いた。
重要な記者会見だということで、映像報道部からは写真を撮る要員2人、さらに動画要員も1人という3人態勢で取材に臨んだ。私は動画要員。会場には、前川氏が何を語るのかを聞こうと、多くのメディアが集まっていた。
記者会見は急遽決まったということだった。
開始まで時間はなく、準備を急ぐ報道陣のドタバタもあり、会場は徐々に熱気に包まれていった。狭い会場に100人を超える報道陣がひしめき、用意されたイスでは足りず、中には立ち見の記者の姿もあった。始まる頃、会見場はいよいよ暑くなってきた。
私も他のカメラマンも、記者たちも、空調の効いていない会見場で、汗だくになりながら取材した。
カメラを構えるのは集中力のいることで、体を動かしていなくても、汗がじわりと出てくるものだ。
隣には、少しでも前川氏の声を拾おうと、息を潜めながらテープレコーダーを突き出す記者が2、3人。シャツは首から腹のあたりまでびっしょりだ。多くのカメラに向かい合う前川氏もまた、しきりに汗を拭いていた。
会見では、記者たちが質問を絶え間なく投げ、一言一句に会見場にいる誰もが耳を傾けた。緊迫したやりとりは、1時間以上続いた。
会見が進むにつれて、前方に位置取った、写真を撮影するスチルカメラマンたちの行動が大胆になってきた。はじめはおとなしく座っていたが、だんだん前川氏の近くに寄ってみたり、立ちあがって撮影したり。
私は後方の、動画を撮影しているこの場所から、各社のカメラマンと前川氏を一緒に写したら、現場の雰囲気が伝わる写真になると思い、使わないと思いカメラバッグにしまってあったスチルカメラを取り出した。
ファインダーをのぞいた瞬間、天を仰いだ。
視界が真っ白だった。
レンズが結露し、曇ってしまったのだ。
前にアジアに出張で行ったときに、冷房の効いた車から降りて撮影しようとしたら、同じようになったことがあった。
カメラバッグの中の温度と外の温度が極端に違ったのだ。レンズもファインダーも、結露して真っ白。こうなると、もう拭いてもダメ。曇りがとれるまで5分くらいはかかる。
いちおうシャツの袖で簡単にぬぐってはみたものの、やはり曇りはとれない。投げやりな気持ちで何枚かシャッターを切った。
会見が終わり、前川氏が退席すると、残された報道陣は緊張がとけたのか、「暑かった」「地獄だな」と、堰を切ったように言い出した。みんな我慢していたのだ。そう思い、失敗したと思っていた写真を見返すと、この1枚が写っていた。
あの会見場の熱気を、写し撮ったようにも見えた。
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