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感動

村上佳菜子が「ジャンプのレベル落としても」伝えたかったこと

引退を表明し、エキシビションで現役最後の演技を終えた村上佳菜子=2017年4月23日、北村玲奈撮影
引退を表明し、エキシビションで現役最後の演技を終えた村上佳菜子=2017年4月23日、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

目次

 フィギュアスケートで、引退を発表した村上佳菜子さん(22)。正式表明は4月でしたが、2016年末の全日本選手権の演技で引退を予感していたファンもいました。後日、「ジャンプのレベルを下げても心に残る演技をしたかった」と語ったその滑り。高難度の連続ジャンプを次々と跳ぶ時代、豊かな表情と表現力で第一線を戦い抜いた村上さんの「意思表示」でした。

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浅田真央を追いかけた「妹」

 村上さんは名古屋市出身。浅田真央さんとともに山田満知子、樋口美穂子の両コーチのもとで成長しました。

 2008-09年シーズン、初出場の全日本選手権で7位に入り新人賞を獲得。09-10年シーズンには、浅田さんに続いて世界ジュニア女王になりました。その後も追いかけるように、中京大中京高校、中京大へと進学。高校入学時には、浅田さんの名前の刺繡が入ったブレザーを譲り受けました。

 10-11年シーズンにシニアデビューすると、グランプリシリーズNHK杯でいきなり3位に入り、アメリカ大会では優勝。全日本選手権で表彰台に乗り、世界選手権に初出場しました。11-12年シーズンの全日本選手権ではショートプログラム(SP)首位につけ、会場を沸かせました。

2010年全日本選手権で表彰式後にリンクを回り、スタンドの声援に応える浅田真央(右)と村上佳菜子=2010年12月26日、上田潤撮影
2010年全日本選手権で表彰式後にリンクを回り、スタンドの声援に応える浅田真央(右)と村上佳菜子=2010年12月26日、上田潤撮影 出典: 朝日新聞

 浅田さん、鈴木明子さんと姉妹のように仲がよく、支え合い励まし合ってきました。12-13年シーズン、大阪開催の四大陸選手権では三人で表彰台を独占。13年3月の鈴木さんのオフィシャルブログには、「三姉妹」のタイトルで浅田さん、村上さんから誕生日プレゼントとして贈られた色紙が紹介されています。

http://ameblo.jp/suzuki-akko/entry-11501291070.html(鈴木明子オフィシャルブログ)
四大陸選手権の表彰台を独占した日本女子。左から2位の鈴木明子、優勝した浅田真央、3位の村上佳菜子=2013年2月10日、飯塚晋一撮影
四大陸選手権の表彰台を独占した日本女子。左から2位の鈴木明子、優勝した浅田真央、3位の村上佳菜子=2013年2月10日、飯塚晋一撮影 出典: 朝日新聞

 14年ソチ五輪も「三姉妹」で出場を果たしました。この五輪は、村上さんにとって現役時代で一番の思い出だと言います。

チャームポイントは笑顔、踊りのセンスも

 「佳菜子スマイル」と呼ばれるように、村上さんの笑顔は観る人にパワーを与えてくれます。試合でノーミスしたとき、苦しいシーズンを乗り越えたとき、アイスショーのフィナーレ……。いろいろな場面で笑顔を振りまいてくれます。

 踊りのセンスが抜群で、シニアに上がったシーズンのSP「ジャンピン・ジャック」は、弾けるような笑顔でリンクを駆け回る姿が印象的でした。ピアソラ・メドレー(12-13年フリー)や「ロクサーヌのタンゴ」(15-16年SP)では、音楽とシンクロする見事なステップを披露しました。

 喜び、楽しさ、悲哀…さまざまな感情を豊かな表情と表現力で魅せてくれます。腕から指先にかけての美しさも光ります。11-12年、13-14年のSP「バイオリン・ミューズ」では大人の女性を、14-15年には「オペラ座の怪人」を題材に、SPは歌姫クリスティーヌ、フリーはファントムと二役を見事に演じました。

左)2010年NHK杯でSP2位につけた村上佳菜子=2010年10月22日、遠藤啓生撮影、右)14年世界選手権SPの村上佳菜子の演技=2014年3月27日、金川雄策撮影
左)2010年NHK杯でSP2位につけた村上佳菜子=2010年10月22日、遠藤啓生撮影、右)14年世界選手権SPの村上佳菜子の演技=2014年3月27日、金川雄策撮影 出典: 朝日新聞

スケート人生を出し切った「トスカ」

 昨年末、大阪であった全日本選手権が競技人生の集大成となりました。フリーはプッチーニの歌劇「トスカ」より。ボーカル入りの重厚な曲を気迫あふれる演技で滑りきりました。

 観客はスタンディングオベーション、キス・アンド・クライでは、山田・樋口両コーチも笑顔で迎えました。総合8位。この演技を終え、村上さんは引退することをほぼ固めました。

 「全日本の前から、もうこれが最後なのかという思いがあって、先生と相談した上で自分がやりたい演技は、もし最後だったら何だろうと。全日本は悔しい決断だったが、ジャンプのレベルを下げて、皆さんの心に残るような演技がしたいというのが一番に出てきた。それができたのでこれで終わりなんだと。今まではよくても悪くても心残りがあった。全日本の後はあっ、終わりだなとすっきりすることができました」(17年4月23日、報道陣とのやりとり)

昨年全日本選手権女子フリーで演技を終え、高得点に抱き合って喜ぶ村上佳菜子=2016年12月25日、細川卓撮影
昨年全日本選手権女子フリーで演技を終え、高得点に抱き合って喜ぶ村上佳菜子=2016年12月25日、細川卓撮影 出典: 朝日新聞

世界国別対抗戦エキシビションで現役引退

 4月23日、世界国別対抗戦エキシビションで引退を発表。白い衣装を身にまとい、12-13年シーズンのSP曲「プレア・フォー・テーラー」にのせてしっとりと演じました。涙をこらえ最後まで笑顔を届けてくれました。

 エキシビションのフィナーレで選手から花束を贈られ、観客に向けて引退のあいさつをしました。

 「これからはフィギュアスケートを通して皆さんに恩返しをしていけるよう、より一層努力をしていきたいと思っています」

 全日本選手権で「トスカ」を演じきった時、「もしかしたら……」と引退を予感していたファンもいました。

 女子では16歳の樋口新葉ら10代の選手が、高難度の2連続3回転ジャンプを次々と跳び、難易度の高い技が注目を集めています。そんな中、ジャンプのレベルを落としても、表現力を大事にした納得のいく演技にこだわった村上さん。長年、その活躍を見続けてきたファンからは、盛大な拍手が贈られました。

エキシビションのフィナーレであいさつする引退を決めた村上佳菜子=2017年4月23日、北村玲奈撮影
エキシビションのフィナーレであいさつする引退を決めた村上佳菜子=2017年4月23日、北村玲奈撮影 出典: 朝日新聞

 「私のスケート人生は本当に浮き沈みが激しい、落ち着きのない人生だった。そんな自分を先生や応援してくれる人が見捨てずに、いつも支えてくれたお陰でここまで頑張ることができたし、オリンピックにも出られた。本当に感謝しかないです」(17年4月23日報道陣とのやりとり)

プロスケーターとして輝き続けて

 先月29日、横浜市内であったアイスショー「プリンスアイスワールド」に出演しました。

 黒い衣装で情感たっぷりに演じ、最後は「若い世代にバトンを渡す意味を込めて」と、赤いバラの花を観客に手渡す演出も入れました。

 アイスショー恒例のファンとのふれあいタイムでは、たくさんの花束やプレゼントを贈られました。「『お疲れ様』『これからも応援しているよ』と言ってもらえて、すごく幸せな時間でした」

プリンスアイスワールドで見られた村上さんのいろいろな表情
プリンスアイスワールドで見られた村上さんのいろいろな表情 出典: 朝日新聞

織田信成さんと「変顔コンビ」

 氷上での豊かな表情が光る村上さんですが、オフの顔も魅力的です。プロスケーターの織田信成さんとの「変顔」写真もファンの間では話題になっています。

 「#信ちゃん佳菜ちゃん」「#冗談は顔だけにして」のハッシュタグ付きでツイッターに度々投稿。村上さんが引退した先月23日には、織田さんが「佳菜子本当にお疲れ様!そしてありがとう!これからも信ちゃん佳菜ちゃんコンビよろしくやで!」と投稿しました。

 山田コーチの元で、「愛されるスケーター」として成長してきた村上さん。次は指導者になる夢もあります。

 「いずれはオリンピックに選手を連れて行けるようなコーチになりたい」

 プロスケーターとして、コーチとして、これからもキラキラ輝くような笑顔を届けてくれることをファンは楽しみにしています。

アイスショーで観客にバラを手渡す村上佳菜子さん =2017年4月29日、野田枝里子撮影
アイスショーで観客にバラを手渡す村上佳菜子さん =2017年4月29日、野田枝里子撮影 出典: 朝日新聞

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