IT・科学
ネコに「いいね」しちゃう理由、東大の社会学者がガチで分析してみた
空前の猫ブームが続いています。特にSNSとの相性は抜群で、フェイスブックを開けば、たいてい一匹は出てくる勢いです。ここまで人をメロメロにさせる猫の魅力はなんなのでしょうか? 実は、単身者や共稼ぎの増加など社会構造の変化が背景にあるようです。社会学者で現在「猫ロス」中の専門家に聞きました。
一般社団法人ペットフード協会によると、2016年の猫の推計飼育数は984万7千匹。犬は987万8千匹です。1994年の調査開始時から犬が猫を上回ってきましたが、近年からほぼ同数になっています。
猫ブームによる経済効果もあり、「ネコノミクス」という言葉もでてきました。ネット上では、猫をテーマにした投稿をすることがバズる条件になると言う人もいるほどです。
猫ブームの理由は何なのか、その疑問を晴らすべく東大の門をたたきました。お話を聞いたのは、社会学者の赤川学・東大文学部准教授。セクシュアリティなどを研究し、少子化問題にも提言を続けています。
赤川さんは、犬に比べて猫を飼う人の割合が増えていることについて、家族構造や社会構造の影響を受けていると指摘します。
「犬の場合は、散歩の世話など、ある程度専従的ケアラー(多くの場合、専業主婦)が必要です。猫の場合は、共稼ぎでも、単身者でも飼いやすいという背景があるように思います」
犬については、鳴き声のトラブルや散歩の際のあいさつなど、対人交渉能力も必要になり、現代人には、猫の方がとっつきやすい点があると指摘します。
SNSとの相性の良さについては、猫の多くが室内飼いである点が大きいそうです。
「猫はほぼ室内飼いなので、そのほうが念入りに凝った写真や動画が撮れるという面もあるのでしょう」
またネットでバズる理由として「SNSで猫の投稿を拡散させる、猫のとりこになった多くの人たちの存在」を指摘します。
では、そこまで人をメロメロにさせる猫の魅力とは? 実は、赤川さん、20年近く飼っていた愛猫「赤川にゃんこ先生」が6年前に死にました。
「『赤川にゃんこ先生』がいなくなってから1年は、何もする気が起きませんでした。いまだにペットロスが続いています」と悲しそうに振り返ります。
「猫の死の悲しさは近親の死に匹敵するぐらい。その悲しさは、自分の子どもの死にすら近づく可能性があります」と話します。
それほどのまでの悲しさ。赤川さんが自らの経験を踏まえながら分析してもらいました。
理由の一つが、飼い主との関係が「重層化」する点にあると言います。「重層化」って、どういことなのでしょう?
「猫が小さい時は自分の子ども。大人になったら、会社の同僚。もうひとりの奥さんのような存在にもなりえます。一方で犬はある程度、上下関係があって、関係は固定的なのでは」と語ります。
もう一つ、飼い主は猫に「無償の愛」を抱いてしまうことも大きいそうです。
「猫はこっちの言うことを、全く聞いてくれない。全部が向こうの都合。相手から好意や愛情を向けられるかどうかわからないが、それでも愛し続ける。その関係は、人間にとっても楽なんです」。
「猫と過ごしていくこと、それは良好な関係を多く持つことなのかもしれません。だからこそ猫の存在が大きくなり、それがいなくなると、大きなダメージを受けるのでしょう」
1/14枚