IT・科学
「まとめサイト」運営会社はどこ? 削除・不掲載…社名を伏せる理由
記事や写真の無断転載が問題化している「まとめサイト」。さまざまなサイトがある中に、運営会社が見えにくいものが出ています。社名が書いていなかったり、買収したことが伏せられていたり。なぜなのでしょうか?
会社の事業紹介から「まとめサイト」が消えた――。こんな指摘が、ITに詳しい個人ブログなどで出ているサイトがあります。
まとめサイトを複数運営するCandle(東京)では昨年冬、公式サイトの事業案内から「Healthil」「JOYTRIP」「Carcast」「Taspy」の4サイトを削除しました。削除前は「最適な答えを提供する『場』を創造します」と紹介文付きで、4サイトが大きく紹介されていました。
同社は取材に対し、以前は全ての事業を載せていたものの「今後の事業方向性を考慮の上、記載内容を変更しております」と説明します。
このうち医療情報をまとめた「Healthil」と旅行情報の「JOYTRIP」は、まとめサイトの社会問題化を受けて公開停止中です。現在両サイトには「メンテナンス中」と表示されていますが、運営会社名は書かれていません。企業サイトの側からも、まとめサイトの側からも、関係を示す記述が消えたことになります。
そこそこの買収金額なのに、非開示なんですね――。こんな指摘を、ネットで受けたサイトもあります。
ニュースアプリが人気のグノシーは昨年7月、女性向けまとめサイト「LINOMY(リノミー)」を運営するKumarを4億7100万円で買収しました。
調べてみると、確かに買収時に公表されていません。記者が問い合わせた今年2月まで、公式サイトの子会社一覧にも載っていませんでした。買収から約3カ月後に公表された四半期報告書の中で触れられただけです。
せっかく買収したのに、なぜなのでしょうか。
グノシーは取材に対し「日本取引所グループの制度に則り、軽微基準に該当(小規模なため)するため、適時開示は行っておりません」と、非公表だった理由を説明します。ただ小規模であっても、広く知ってもらうため公表するのは各企業の自由です。
また買収後、半年以上たっても子会社一覧に載せていなかったことは「該当ページの更新が滞っていたたため、掲載されておりませんでした」と説明します。
個人サイトじゃなかったのか――昨年末には、あるサイトの「実態」が話題を呼びました。
ゲーム情報の大手まとめサイト「はちま起稿」を、IT大手DMM.comが約1年前に非公表のまま買収していたことが発覚したのです。DMM.com自身が「刀剣乱舞」や「艦隊これくしょん」などの人気ゲームを提供しているため、自社に都合良く運営していたのではと臆測も飛び交いました。
DMM.comの広報担当者は、取材に対し「企業買収や譲渡をすべて公開しているわけではない。(今回の非公開も)特に意図的ではなく、たまたまという形」と説明。掲載内容をゆがめたことはないと強調します。
ただ、DMM.comは買収後も、はちま起稿に運営会社として自社名を記載していませんでした。買収前と変わらず元管理人の個人名を掲げ、広告掲載の問い合わせ先もGmailアドレスだけを載せていました。
社名非公表の状態でどんな事業展開を計画していたのでしょうか。DMM.comの広報担当者を取材しました。
いつか「広報の方で利用する」構想だったという、はちま起稿の買収。では、なぜ社名を載せていなかったのでしょうか。その点もDMM.comの広報担当者は「特別な意図はなかった」といいます。
一方DMM.comによると「はちま起稿」は9カ月ほど運営したあと、昨年秋ごろに広告会社インサイト(東京・渋谷)へと事業譲渡しています。
インサイトも「はちま起稿」について発表していません。理由や運営体制をメールで尋ねましたが、「広報担当へ渡した」と返信があったあと、回答はありませんでした。
まとめサイト問題の発端となったIT大手DeNAは現在、10サイトを公開停止し、無断転載被害の申告窓口をネット上に設けています。DeNA関係者によると「少なくない数の問い合わせが来ている」といい、賠償などの可否を検討しているといいます。
プロバイダー責任制限法(プロ責法)では、写真や記事で無断転載が疑われる場合、サイトの運営者は削除などの要請に対応する必要があります。
どの企業が、どのように運営しているのか。ウェブサービスの事業者には、実態を外部に分かりやすく公開し、透明性を高めていく姿勢が求められています。
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