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「空気が汚いほどマスク割引」小林製薬が企画、中国で予想外の結果に
大気汚染が深刻な中国では、マスクが欠かせません。そんな中国で小林製薬が「空気が汚ければ汚いほど、マスクが安くなる」という世界初のキャンペーンを実施しました。いったい、なんでそんな企画を思いついたのか。そして、効果はあったのか? 取材しました。
キャンペーン「Air pollution Discount」は、小林製薬のマスクの性能をアピールする目的で2016年の12月23日から2017年の1月22日まで実施されました。
スマホのGPS端末情報を利用して、その時にいた地点と時間に対応したPM2.5の情報を取得。その値により、クーポン券が発行されるというものでした。
空気が「汚ければ汚いほど」5元から20元までクーポンの額が上がり、マスクが割引価格に。クーポンは、アリババ傘下の中国最大のオンライン・ショッピングモール「天猫」の直営店で使う仕組みでした。
キャンペーンには、商品の宣伝だけでなく、大気汚染への関心を高めたり、健康に気を配ったりするような目的もありました。「空気が汚い場所」というマスクの必要性が高い人に手頃な値段で商品を提供することにつながり、一石三鳥の効果を狙っていました。
肝心の広告効果は、どうだったのでしょう?
小林製薬の担当者は「期間中の空気汚染状況が想定よりも悪くなかったため、売り上げへの効果は見込みより低かった」と回答。予想を下回る結果になったようです。
残念な結果になってしまった今回のキャンペーン。
小林製薬は、中国版ツイッター微博で影響力のあるアカウント(インフルエンサー)を活用しましたが、フォロワー数68万人の「君君食尚美●(女編に馬)」1人だけでした。動画を通して「Air pollution Discount」のサイトの使い方を紹介したり、マスクの使い心地について話したりしたものの、力不足は否めませんでした。
中国には7億人を超えるネットユーザーがおり、SNSで話題を集めるには、複数のアカウントが必要だったようです。
起用したアカウントは、「育児・食・ファッションの達人」というイメージで、フォロワーの多くはマスクの値段よりも質を重視する人たちでした。空気が本当に汚い場合、子どもを外に連れ出さないような人たちだったので、割引クーポンの効果は限定的になってしまいました。
実際、微博でのコメント数は200件程度にとどまりました。
空気の汚染と割引を結びつける手法は、新鮮だった反面、違和感を持つ人もおり、SNSなどでは拡散しにくい面もあったようです。
とはいえ、大気汚染が中国で深刻な問題になっていることに、変わりはありません。微博にはキャンペーンに対して次のようなコメントが投稿されていました。
「マスクでスモッグ問題を解決できたらいいなあ~」
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