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「守護霊」使われた宗教学者が斬る 清水富美加さん「出家」の意味
「『出家』という言葉自体が、芸能界から抜け出すためにうまく使われている」と指摘します。
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「『出家』という言葉自体が、芸能界から抜け出すためにうまく使われている」と指摘します。
幸福の科学への「出家宣言」をして世間を驚かせた女優の清水富美加さん(22)。「毎日がギリギリ」などと精神的に追い込まれていたというメッセージを発表する一方、所属事務所は「本人の意向に沿う形だった」と反論し、主張は平行線です。過去に幸福の科学と訴訟になり、「守護霊インタビュー」にも登場したことがある宗教学者の島田裕巳さん(63)に、今回の騒動をどう受け止めたらいいか、聞きました。
島田さんによると、有名人と新興宗教は、古くは双葉山が入信した「璽宇(じ・う)」や統一教会、創価学会などで関わりがあります。幸福の科学も、作家の故景山民夫さんや女優の小川知子さんの活動が話題になりました。
なぜ、芸能人は新興宗教に入るのか? 一般論として、島田さんは「浮き沈みが激しい芸能人の不安定な立場が一因」だと言います。
人気が出ても、仕事が無くなるかもしれない芸能界。だけど、マネジメントを担う芸能事務所は頼りにならない。自分の意向が通りにくい場合もある。そういった時に、「新興宗教が心のよりどころとなってきた」と島田さんは指摘します。
しかし、代表的な新興宗教は50代以上の会員が多く、芸能界でも直接入信する若い人は「少なくなってきている」と島田さん。代わりに清水さんのような「2世信者」が増えていると話します。
2世信者の場合、「救いを求める切実さは少ないが、宗教自体が幼少のころから染みついている」と話す島田さん。清水さんの直筆メッセージから、「人の道に外れることに関して敏感で、真面目なんだと思う。だからこういう騒動に発展してしまったのではないか」と推測します。
また島田さんは、清水さんが使った「出家」という言葉にも注目。出家は通常、「俗人としての生活をやめ、仏門に入ること」(新明解国語辞典)など、世間から離れて、宗教家の道に進むことがイメージされますが、幸福の科学は「現代的な社会生活を送る中で、『幸福のコンサルタント』として多くの人々を幸せにするための救済運動を進める」と説明しています。人里離れた場所で修行生活をするわけではなさそうです。
島田さんによると、新興宗教の中でも「出家」という概念がある教団は数が少ないとのこと。清水さんの行動について、「『出家』という言葉自体が、芸能界から抜け出すためにうまく使われている」と分析しました。
幸福の科学によると、出家宣言のきっかけは、1月下旬に公開された大川隆法総裁による清水さんの守護霊インタビューです。大川総裁は政治家などの守護霊と「対話」したという霊言集を多数出版しています。
島田さんも、2014年に幸福の科学が出版した「宗教学者『X』の変心」で守護霊インタビューを経験しました。島田さんの実名は出ていませんが、教団関係者から「島田さんの本が出ました」と本を渡されたということです。
1990年代初頭には、批判的な言動をめぐり、幸福の科学と訴訟になったこともある島田さん。本が出版されたころは、教団が大学開学をめぐって文科省の認可を目指し、注目されていた時期でした(結果は不認可)。インタビューの中では守護霊が「幸福の科学に対して悪いことをした。反省している」と話す場面がありますが、島田さんが取材を受けたわけではありません。
守護霊を勝手に「使われた」経験から、「霊言には『こうなってほしい』という大川氏の願望が入っている」と指摘する島田さん。「清水さんもこうした大川氏の思いを感じ取ったのでは」とみています。
幸福の科学から、私の守護霊の霊言だと送られてきたものだけど、最後までXで、名前を明かしていない。とても失礼な守護霊で、公開霊言に集まっていただいた幸福の科学の会員の方たちには迷惑をかえたんじゃないかと思います。 pic.twitter.com/n6PYL3G9HJ
— 島田裕巳 (@hiromishimada) 2014年9月29日
さらに、幸福の科学が積極的に清水さんの対応をしていることについて、「教団としての起死回生を図ろうとしているのでは」とも話します。幸福の科学に限らず、新興宗教の課題は「世代交代」という島田さん。幸福の科学も、大学の認可を目指したり、私塾を開いたりして、若い世代の信者獲得を狙っていると言います。
精神的に追い込まれていたとされる清水さんと、若返りを目指していた幸福の科学が「出家」で結びついた今回の騒動。島田さんは「人気のある芸能人が新興宗教の広告塔になることは、リスクもあるからあまり例がなかった。清水さんや教団の発信を世間がどう受け止めるか注目していきたい」と話しました。
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