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親戚の呼び名にこだわる中国 「親戚電卓アプリ」で救われる人続出
「おじいさんの弟の息子の嫁の兄」は何て呼ぶ?中国では、親戚の呼び名にとても気を遣います。間違えると「失礼な人」と見なされたりして、恥をかくため、たまに会う人に声をかけるときは、わりと緊張します。特に親戚一同が集める中国の旧正月(春節)は戦々恐々です。そんな中、最近、人気を集めているのが、一発で呼び名を教えてくれる「親戚電卓アプリ」です。
中国では、そもそも複雑な親戚の呼び名のシステムがあります。
例えば英語の「grandpa・ grandma」は、日本語の「おじいちゃん・おばあちゃん」です。ところが、中国では「父方のおじいちゃん・父方のおばあちゃん・母方のおじいちゃん・母方のおばあちゃん」にそれぞれ対応する単語があるのです。
・父の両親:爺爺、奶奶(女編に乃を2つ続ける)
・母の両親:外公、外婆
そこに地域ごとの方言が加わります。北方地域では、母の両親は「姥爺、姥姥」とも呼ばれています。
父と母の兄弟や姉妹、その配偶者となる、さらに複雑になります。英語と日本はすべて「uncle・ aunt」「おじさん・おばさん」です。でも、中国語の場合、少なくとも10通りの呼び名があります。
【おじ】
父の兄弟=兄は伯伯(伯父)、弟は叔叔(叔父)
母の兄弟=舅舅
父の姉妹の夫=姑夫
母の姉妹の夫=姨夫
【おば】
父の姉妹=姑姑、
母の姉妹=阿姨
父の兄の妻=伯母
父の弟の妻=嬸嬸(女編に審を2つ続ける)
母の兄弟の妻=舅媽(女編に馬)
「おじ」「おば」でも日本人にはついていけませんが、さらにいとこにも父方か母方かによる「堂」と「表」の違いが加わります。
さらにさらに、おじいちゃんの弟の妻、おばあちゃんの妹の夫など、ほかの親戚にも、それぞれ呼び名があり、もうカオスです。
中国版ツイッター微博(ウェボー)に書き込まれた「悲鳴」には、2500件の「いいね」と1000近くのコメントがつきました。
「さきほどお父さんのふるさと(老家)につきました。つまりおじいちゃんが生まれ育ったところです。そして、おじいちゃんの兄弟たちと、その息子たちと、その子供たち、さらに彼らの夫、嫁、子供たち、と数十人と一緒に食事をしています。いろいろな呼び名が複雑すぎて、現在、私の世界は混乱しています……」
現代の中国では、複雑な呼び名による混乱に共感する人々は少なくないようです。
そんな複雑な「呼び名カオス」から救ってくれるアプリが登場しています。「親戚電卓」です。
中国のIT企業小米(シャオミ)が開発したアプリで、テンセントのアプリストアでは、700万ダウンロードを記録しています。
「親戚電卓」に「妻の母の姉の兄の弟の息子」を入力すると「表大舅」が一瞬で表示されます。
「母の夫の弟の兄の父の姉の兄の妹の父の妹」は「曽祖姑母」。「父の母の弟の息子の妻」は「舅表伯母/舅表叔母」。
まるでドラえもんの「ひみつ道具」のように現れた「親戚電卓」。ITってすごい!
シャレで「夫の夫」を入力すると「関係は複雑ですね。好きのように呼んで。不幸中の幸いは、彼はほかの女性を愛していないこと…」。「妻の妻」だと「彼女を愛する人がまた増えてよかったね…」。
なかなかのセンスです。
ただし、入力項目が複雑すぎると、「親戚関係が遠すぎます。年上だったら、老祖宗(祖先)と呼んで、同年代だったら、美女/イケメンと呼んでね」という答えで逃げられます。
ネット上では「結局、母ちゃんに聞かないとダメだね」「母ちゃんがわからなかったなら、ばあちゃんか?」との突っ込みも。
とはいえ、長年、続けられた「一人っ子政策」によって中国の超複雑な親戚の「呼び名カオス」は自然となくなる可能性もあります。今年の春節で注目を集めた「親戚電卓」。時代のはざまに生まれた存在なのかもしれません。
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