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話題

若者イビリ、電車でキレる…困ったおじさんおばさん対処法三カ条

おじさん、おばさんに嫌なことをされたら、どう対処すればいい?
おじさん、おばさんに嫌なことをされたら、どう対処すればいい? 出典: 朝日新聞

目次

 中高年向けの「若者解説本」は多いですが、若者向けの「おじさん・おばさんトリセツ」はあまり見かけません。若者にとっても、おじさん・おばさんの言動は意味不明です。無視したくても、社会に出ると、おじさん・おばさんはやたらと若者の前に立ちはだかります。どう対処したらよいのでしょう。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

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おじさんおばさんトリセツ

おじさん・おばさんを知り、攻略法を知るこの企画。
今回の授業は3時間目。いよいよ、攻略編です。

1時間目 団塊世代を知ろう
2時間目 バブル世代を知ろう
3時間目 おじさんおばさん攻略法(今回)

 

講師は引き続き、コラムニストで淑徳大学客員教授の深澤真紀さんです。

生徒役の大学生も、この4人(明治大学4年・小出英知さん/慶応大学4年・永井大輔さん/早稲田大学3年・英佳那さん/津田塾大学3年・大橋実結さん)。

おじさんおばさんについて学生に解説する深澤真紀さん(左)
おじさんおばさんについて学生に解説する深澤真紀さん(左) 出典: 朝日新聞

おじさんおばさんのここがイヤ

 

深澤さん

さてみなさん。

日頃、おじさん・おばさんに対して疑問に思うこと、嫌だなと思うことがあると思います。

それをひとりずつ教えてもらえますか?

 

学生・大橋さん

私はいろんなバイトをしてるんですが、思い込みが強くて世間が狭い人が困ります。

コールセンターでバイトした時、おじいちゃんが住所を「青葉区」っていうから「横浜市ですか?」って確認したら、「仙台に決まってるだろうが!」ってキレられました。

 

深澤さん

横浜の青葉区を知らなかったのかもしれませんが、こういうふうにキレられるのは困りますよね(苦笑)

突然キレるおじさんには、どう対応すればよいのか(画像はイメージです)
突然キレるおじさんには、どう対応すればよいのか(画像はイメージです) 出典:PIXTA

 

学生・大橋さん

日本料理店でバイトしてた時は、先輩のバブル女性のいびりがひどかったです。

「最近の若い子は甘えてる」とか「若いからってチヤホヤされてる」とか。ずっと我慢してたんですけど、耐えられなくなって言い返したら、泣かせちゃいました。

それでそのバイトは辞めたんですけど。

 

深澤さん

そうやって我慢しないで言い返していいし、バイトも辞めてよかったと思いますよ。

若い子に言い返されたから泣くなんて、最近のバブル世代は甘えてるね(笑)

 

学生・大橋さん

あと、おじさんおばさんって、なんですぐにあだ名つけたり、「○○ちゃーん」って呼んだりしてくるんですか?

私は名前が「みゆ」ですけど、「みゆみゆー」って言われるのがすごい嫌で。

 

深澤さん

ああ、それは私もよくやってしまう!

私も「みゆゆ」とか呼んじゃうと思う。どうしてなのかな。

いまとても反省しました。

 

学生・大橋さん

人間関係の距離の詰め方が早いんですよ。

いやいや、そんなに親しくないから、ってなっちゃう。

 

深澤さん

あだ名で呼ぶ方が、親しみがあるって思い込んじゃってるかもしれない。

気をつけます……。

――記者がツイッターで「おじさん・おばさんの言動で『なんでこんなこと言うの?(やるの?)』『自分たちの世代とは違う』と思うことを教えてください」と聞いたところ、10~20代の人たちからたくさんの意見が寄せられました。

 その中で、多かった意見のひとつが「店員にため口で話す」でした。

 若者には「知らない人なのになれなれしい」となるようです。言い方次第では「あなたの召使いじゃない」と不愉快なことも。

「若いからってチヤホヤされて調子にのるんじゃないわよ」というイビリを受ける若い女性は少なくない(画像はイメージです)
「若いからってチヤホヤされて調子にのるんじゃないわよ」というイビリを受ける若い女性は少なくない(画像はイメージです) 出典:PIXTA

 

学生・英さん

若者に対して「我慢が足りない」っていうくせに、自分たちは電車とかですぐキレて、横柄な態度をとるじゃないですか。

あれはイライラします。

 

深澤さん

電車で駅員に暴力をふるうのは60代以上が一番多いというデータが出ています。

次が50代で、一番少ないのは20代です。暴れる老人は問題になっていますね。

――記者のツイッターに寄せられた若者の意見でも、

 「ケガをして優先座席に座っていたら大声でイヤミを言われた」
 「電車に乗るときに、降りる人を待たない」

 など、電車内でのおじさんおばさんの言動が多く挙がりました。
 駅や電車の乗務員への暴力行為は、鉄道各社が頭を悩ませています。

京浜急行電鉄は、主要駅や電車内に警備員をおいている。駅員には年1回、近くの警察署で護身術の訓練を受けさせている。
京浜急行電鉄は、主要駅や電車内に警備員をおいている。駅員には年1回、近くの警察署で護身術の訓練を受けさせている。 出典: 朝日新聞

 

学生・英さん

私のバイト先がカレー屋なんですけど、店長がイヤミっぽくて。

「そんな野菜の切り方でふだん家事とかできるの?」ってすぐイチャモンつけてくるし、なにかにつけて「僕たちが君くらいの時にはもっと努力してた」って言われます。

 

深澤さん

そういうことを言うおじさんおばさん、多いですね。

若い時の自分はたいてい美化されがちで、自分がアホでダメだったということは忘れてしまうんですよね。

 

学生・永井さん

僕は、1年半バーでバイトしてました。おじさんの話題って、1から10までセックスなんですよね。

本当かどうかわからない武勇伝をやたら語ってくるんですよ。

「俺がお前ぐらいの時は、毎日セックスしてたぞ」とか。

 

深澤さん

そういうおじさんもいますね。

たぶんそれもウソなんだけど、もし本当だとしても、学生時代に毎日セックスしてることって自慢なのかな(笑)。話題がセックスしかないなんて、なんかかわいそうだよね。

そして、だいたいそういうおじさんって「君たちは草食で情けない」とかディスってくるでしょ。

 

学生・永井さん

ですね。

で、「あやかりたいんで、女性を紹介してください」って返したら、「それは困るよー」で話が終わります。

 

深澤さん

本当にモテる人は、女性が余ってるから、紹介してくれます(笑)。

それにバブル世代と今の世代の童貞率は変わらないですからね。

今も昔もモテる人は一部の存在なんです。そして、本当にモテた人は、そんなしょうもない自慢話はしません(笑)。

おじさんの下ネタにうんざりする若者もいる(画像はイメージです)
おじさんの下ネタにうんざりする若者もいる(画像はイメージです) 出典:PIXTA

 

学生・小出さん

しょーもない話をしてくるおじさん・おばさんって、たいてい「お前はどこの大学なんだ(どうせバカだろう)」ってマウンティングしてくるから。

「東大です!」ってウソついてマウンティングし返したら、黙ります。

 

深澤さん

それマウンティングじゃなくて、ただのウソでしょ(笑)。

まあウソにはウソで対処するという手もあるかもしれないけどねえ。

①敵を知れ!

 

深澤さん

では、そういうおじさんやおばさんと、どうやったらうまく付き合えるのか。

みなさんに提案したいのは三つです。

まずひとつめは、「知る」こと。

みなさんは、おじさんおばさんが生きてきた時代をよく知らないでしょう?

 

学生

たしかに、バブルと団塊の違いもイマイチよくわかっていなかったです。

 

深澤さん

まずは戦後がどういう時代で、団塊やバブルがどういう時代を生きたのかを知ることです。

世代ごとの肝になる出来事は歴史として押さえておくといい。

団塊なら東京五輪(1964年)とか、バブルならディズニーランド開業(1983年)とか。小中学生の時に受けたインパクトは、その後の人生でも影響が大きいですから。

そのうえで、個々の人の違いに興味を持つ。「俺はディズニーランドは行かない主義だ」というバブル世代も少なくないですからね。

 

学生

世代でひとくくりにはできないっていうことですね。

1983年に開業した東京ディズニーランド。開業を祝いテープカットをする様子
1983年に開業した東京ディズニーランド。開業を祝いテープカットをする様子 出典: 朝日新聞

 

深澤さん

みなさんは「自分の頭を使え」「自分の頭で考えろ」とよく言われませんか? 

すごくいい言葉のようだけど、私は、学生時代は「自分」よりも「他人の頭」「他人の言葉」を集める方が大事だと思います。

右から左まで、どれだけ多くの「偏見」を集められるか。

年を取ったらどうせ頭がかたくなるんだから、若いうちは自分の頭だけを信じない方がいい。

たとえば自分のツイッターのタイムラインが極端に右とか左だったら、それはつまらない。

いろんな偏見を知れば、自分に合った偏見に出会えます。

 

学生

なるほど。その発想はなかったです。

 

深澤さん

みなさんと全然価値観の違うおじさんおばさんも、彼らがなぜこんな偏見をもつのか、そのもとになっているものを知ることも大事なんです。

 

学生

正直、おじさんおばさんの若かった頃とか興味なかったんですけど、知った方が自分のためになるんですね。

おじさんおばさんが生きた時代を知ることが、攻略の近道
おじさんおばさんが生きた時代を知ることが、攻略の近道 出典: 朝日新聞

②利用or逃げろ!

 

深澤さん

二つ目は、「『利用する』と『逃げる』を使い分ける」こと。

めんどくさいおじさん・おばさんからは、逃げた方がいいんです。

「まじっすか~あはは~」と適当に話を聞いて、その後全力で逃げましょう。

本気で衝突したら嫌がらせされるし、笑って合わせていたらこき使われて疲弊しちゃう。

 

学生

良かった、逃げていいんですね。でも逃げられるかな……。

 

深澤さん

もちろん直属の上司などのように、逃げられない関係もあります。

その場合は、必要最低限の関係だけを維持して、あとは逃げられないまでも、上手に「よける」ことです。

めんどくさいおじさんからは、できるだけ上手に逃げよう(画像はイメージです)
めんどくさいおじさんからは、できるだけ上手に逃げよう(画像はイメージです) 出典:PIXTA

 

深澤さん

でも、おじさんおばさんのなかにも、自分にとって興味のある人、面白い人もいます。

そういう人は、いい意味で利用してしまいましょう。

ただ、若いときってくそ真面目だから、尊敬できる人を見つけると、全人的に尊敬してしまう。

でもそうすると、例えばその人が鼻をほじってるのを見るだけでがっかりしちゃう。

 

学生

たしかに! 特に女子ってそうなりがちです!

 

深澤さん

女子って、同性の先輩にあこがれても、1年くらいで「あの人にはがっかりした」って幻滅してしまうことが多いですよね。

勝手に片思いして、勝手に振ってしまう。

絶対的に誰かを尊敬したりあこがれるのは、ちょっと危険な部分がありますから、おすすめは「フランケンシュタイン型メンター」です。

 

学生

ん? どういうことですか?

 

深澤さん

あの先輩の話がうまいところから学ぼう、この先輩からは気遣いを学ぼう、とか、パーツごとのメンターを探せばいいんです。

その時々に、自分が必要なものを持っている人を見つけて、パーツを組み替え続けていけばいいんです。

体のパーツをつなぎあわせてつくられた怪物「フランケンシュタイン」のような、パーツごとのメンターがおすすめ(画像はイメージです)
体のパーツをつなぎあわせてつくられた怪物「フランケンシュタイン」のような、パーツごとのメンターがおすすめ(画像はイメージです) 出典:PIXTA

③プレゼンせよ!

 

深澤さん

三つ目は、「おじさんおばさんに、自分たちの良さをプレゼンする能力をつける」ことです。

これができると就活にも役立ちますよ。

 

学生

どういうことですか?

 

深澤さん

「今の若い世代ってこうなんですよ」とか「若者にはやっているこれってこうなんですよ」と、おじさんにもわかるように言語化できる力です。

おじさんが会社や家庭で「これって知ってるか?」とドヤ顔できる情報を提供できるといい。

例えば「シンゴジラ」と「君の名は。」はどうしてあんなに流行したのかを、解説してくれるとうれしいわけです。

 

学生

おじさんにそんなニーズがあるんですね
JR飛驒古川駅跨線橋に集まった「君の名は。」の「聖地巡礼」のファン
JR飛驒古川駅跨線橋に集まった「君の名は。」の「聖地巡礼」のファン 出典: 朝日新聞

 

深澤さん

おじさんやおばさんに、「すごいですね!」とか「尊敬してます!」って言ってとりあえずこびるのは、簡単なんです。

でもいつまでもこびてばかりもいられない。

あなたたちだからこその言葉・情報を持ってきてくれると、おじさん・おばさんにとって、君たちがただの「若者」じゃなくて有益な存在になるんです。

もちろん、嫌いな相手じゃなくて、メンターになるような人に、物々交換のような感じで、情報を提供できればいい。

 

学生

調子よくあわせるか、「嫌い」オーラを出して衝突するか、どっちかになりがちでした。

お互いの役に立つ関係っていいですね。

 

深澤さん

おじさんおばさんにプレゼンするためには、相手のスペック(仕様)だけじゃなくて、自分のスペックを知ることも大事です。

そして、これができるようになると、今度は自分たちがおじさんおばさんになった時に、下の世代とうまく付き合えるようになります。

上に自分たちのことを説明できれば、下にもできるようになるんです。

練習しよう!

 

深澤さん

さて。ここからは練習です。

おじさんおばさんにプレゼンできるようなみなさんの「自分の武器」は、どんなものですか?

 

学生・大橋さん

私はライブとか音楽フェスによく行くんですけど、若者がなぜフェスに熱狂するのか、とかなら話せます。

 

深澤さん

いいですね! 

いまどきのフェスはおじさんにとってあまりわからない文化だから。

そこに紅白にも出たようなセカオワ(SEKAI NO OWARI)とかゲス(ゲスの極み乙女。)とかRADWIMPSを入れて説明できるといいね。

 

学生・大橋さん

でも面倒なのは、おじさんってすぐ洋楽を持ち出すじゃないですか。

「やっぱりビートルズは越えられないんだよ」とか。

 

深澤さん

私も含めて、おじさん世代は、ビートルズ、ローリングストーンズとか言いたくなっちゃうんですよね。

音楽の歴史を見たら、ビートルズは重要な存在ですから。

たとえば、あなたもビートルズを聞いて学んで、あなたが知ってる今の音楽につなげてくれるといいですよ。

「このバンドでは、ポールがこの人でジョンがこの人なんですよ」、みたいに。

 

学生・大橋さん

なるほど、そうやるんですね。

2015年のフジロック・フェスティバル。音楽フェスはおじさんも知りたがっている
2015年のフジロック・フェスティバル。音楽フェスはおじさんも知りたがっている 出典: 朝日新聞

 

学生・英さん

私はバンドサークルに入ってて。「BOOWY(ボウイ)を見てバンドを始めた」っていうおじさんやおばさんがいるって聞いたんですけど。

それって、いまの私たちにとってのワンオク(ONE OK ROCK)みたいなものですか?

 

深澤さん

たしかにそうかも。そういうたとえは、おじさんにもわかりやすいですね。

あなたもBOOWYを聴いてみて、ワンオクはみなさんの時代のBOOWYですよ、とすすめてあげるといいですよ。

ワンオクなんて聴いたらかっこよすぎて、おじさんはびっくりするんじゃないかな。そういう情報は役に立ちます。

 

学生・英さん

よかった。具体的なイメージがわきました。さっそく使います(笑)

バンドの今昔でおじさんおばさんと近付けるかも?(画像はイメージです)
バンドの今昔でおじさんおばさんと近付けるかも?(画像はイメージです) 出典:PIXTA

 

学生・永井さん

僕は料理系の漫画・アニメなら少し語れます。

 

深澤さん

それもいいですね。

バブル期にはじまった「美味しんぼ」や「クッキングパパ」とかを絡めて語れたらなおいいね。

私たちおじさんやおばさんは、自分の記憶スイッチを押してもらうのが好きなので、昔呼んだ漫画の話とか、語りたがります。

私も学生時代は貧乏だったから、この二つの漫画の貧乏レシピを作ったり、いつかここに載ってる豪華料理を食べたいと思ってました。

そういう話を若者とするのは楽しいです(笑)。

 

学生・小出さん

僕はよく雑誌を読んでたから、総合格闘技の話なら。

 

深澤さん

それもいい! おじさんは格闘ネタ好きだから。

昭和の格闘技の歴史をふまえたうえで、今の複雑になりすぎた日本と世界の総合格闘技の情勢とかを教えてくれると、うれしいですよ。

九州プロレスの選手たち
九州プロレスの選手たち 出典: 朝日新聞

――授業はおおいに盛り上がり、気がつけば3時間近くになりました。

 「今どきの若者は」とか「おじさんって最悪」とか、お互いにけなしあっていては、断絶は深まるばかり。

 若者も、おじさん・おばさんも、互いにうまく付き合える方法を少しでも知ってもらえたら、幸いです。

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