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ネットの話題

この列車〝たべられません〟 SNS騒然〝あの小袋〟デザインの理由

脱酸素剤「エージレス®」デザインでラッピングした水島臨海鉄道の気動車
脱酸素剤「エージレス®」デザインでラッピングした水島臨海鉄道の気動車 出典: 三菱ガス化学提供

目次

駅のホームで待っていると、やってきたのは〝たべられません〟と書かれた列車ーー。SNSで話題になっている画像。列車が食べられないのは当たり前ですが、画像を見ると、明確に「たべられない」と主張している! 企画した会社に聞きました。

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「電子レンジ不可」

話題になっているのは、岡山県倉敷市の水島臨海鉄道の車両です。

気動車の全面に「たべられません」「DO NOT EAT」「電子レンジ不可」……などの文字が印刷されているのです。

そう、これは日々どこかで目にしている、お菓子などに入っている小袋「脱酸素剤」のデザインそのものです。

SNSでは「乗車しても大丈夫? 酸欠しない?」「何積んでも痛まなそう」「なぜこのラッピングにしたんだ(笑)」「反射的に取り除きたくなるデザイン」などと反響を呼びました。

インパクトが強い列車について、問い合わせました。

水島臨海鉄道の気動車を脱酸素剤「エージレス®」デザインでラッピングした
水島臨海鉄道の気動車を脱酸素剤「エージレス®」デザインでラッピングした 出典: 三菱ガス化学提供

〝動く脱酸素剤「エージレス®」号〟

答えてくれたのは、このラッピング列車のデザインの脱酸素剤「エージレス®」を製造している三菱ガス化学です。

このラッピング列車は今年1月1日から運行を開始したもの。全面ラッピングの列車は「初めて」と言います。

そんな〝動く脱酸素剤「エージレス®」号〟が生まれたのは、この地域と深い関係がありました。

水島臨海鉄道は、全国有数のコンビナート「水島臨海工業地帯」と倉敷市の中心部とを約20分で結ぶ交通機関です。

その水島コンビナートの中にあるのが、三菱ガス化学の水島工場。

「前身の日本瓦斯化学時代の1960年に創業を開始し、塗料や香料などの原料となるさまざまな化学品を製造しています」

2021年の創立50周年の際には、水島臨海鉄道で記念ヘッドマークをつけた列車を走らせたそうで、「そのご縁もあって、今回のラッピング列車の運行が実現した」と言います。

車両デザイン
車両デザイン 出典: 水島臨海鉄道ウェブサイトより

目立たないところで役立ってるけど

寄せられた「なぜこの柄にしたんだろう」という疑問については、脱酸素剤「エージレス®」が「数少ない、普段から一般の方の目に触れ、かつ特徴的なデザインの製品」だから、と答えます。

「当社は化学品メーカーで、工業製品や商品のもとになる素材を多く製造しています。そのため、製品の多くは裏で役立っていますが、直接見える形では生活の中に現れません」

そんななか、あの脱酸素剤の小袋なら、誰でも「見たことのあるデザイン」で、「列車全体をラッピングすることで、インパクトを与えるとともに当社を身近に感じていただけたらと考えました」と話します。

過去には同じ柄のスマホカバーを作って「思っていた以上にかわいい」などと話題になっています。

過去には同じ柄のスマホカバーを作って話題になっています
過去には同じ柄のスマホカバーを作って話題になっています 出典: 三菱ガス化学提供
【関連記事】思っていた以上にかわいい…スマホケースになった「あの小袋」に反響

「乾燥しそう」は間違い

よく見る小袋ですが、ラッピング列車への反響には「乗ったら、乾燥しそう」などのコメントもありました。

実は、脱酸素剤 「エージレス®」は「乾燥剤」とはまったく違うものだそうです。

脱酸素剤 「エージレス®」は主成分が「鉄」。「鉄が密閉容器内の酸素を吸収して脱酸素状態を実現することで、容器内の物が酸素から受ける影響(酸化)を減らしています」。その結果、「食品に使用するとカビの発生や酸化劣化を抑制、味や風味、色合いなどを保持することで、賞味期限の延長に役立っています」とのこと。

これに対して「乾燥剤」の主成分は「シリカゲル」などで、「容器内の水分を吸収して乾燥状態を高めるもの」で、せんべいや海苔などの食品に使われているそうです。

三菱ガス化学では用途によって異なる脱酸素剤を提供している
三菱ガス化学では用途によって異なる脱酸素剤を提供している 出典: 三菱ガス化学提供

地域への感謝と大きな意思

「長年にわたり倉敷市で事業活動を続けてこられたことはひとえに地元のご理解あってのこと」と地域への感謝を込めて走らせているラッピング列車。

もう一つ、大きなメッセージを乗せていました。

「2050年カーボンニュートラル実現」

温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ実質〝ゼロ〟にすることで、気候変動を抑制するという目標です。

実現のために重視しているのは「会社や業種の枠を超えた連携」と言います。

「鉄道輸送を通じたCO2の排出削減」に注力する水島臨海鉄道と連携することで、「社会の発展とカーボンニュートラルを目指す企業としてともに歩んでいきたい」という意思を示していました。

ラッピング列車は、来年3月31日まで運行する予定です。

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