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J2岡山、過酷過ぎるキャンプが、さらに進化 寝る場所あるだけまし?
雪山登山、無人島自力脱出……。深夜番組で特集されるほど過酷なことで、サッカー界では知られていたJ2ファジアーノ岡山のウィンターキャンプ。しかし、昨年から少し内容がマイルドになりつつあるんだとか。うわさを確かめるため、今年のキャンプに足を運びました。(朝日新聞大阪スポーツ部・大西史恭)
今年のキャンプの舞台は岡山県吉備中央町の国立吉備青少年自然の家。16日から1泊2日の日程で行われました。サッカーチームのキャンプにもかかわらず、サッカーボールはどこにもありませんし、選手もスパイクを持ってきていません。
J1清水エスパルスから加入したばかりのMF石毛秀樹選手は「なんか、無人島とかサバイバルとか聞いていて……」と戦々恐々のキャンプイン。慣れている選手はスキーウェアを着て防寒対策もバッチリでした。そもそも深く雪が積もる山でも、無人島でもない時点で、選手に笑顔がありました。
まず、このキャンプをコーディネートしている野外教育者の岡村泰斗さんの話。昨季を振り返り、目標設定の仕方などを聞いて、いよいよASE(社会性を育成するための活動体験)と呼ばれる課題へ。約30人の選手たちは三つのグループに分かれて、フィールドアスレチックのような課題に挑みました。
「高さ4メートルの壁にグループ全員が登れ」
「くもの巣のように張ったロープに触れないように隙間をくぐり抜けろ」
「頭上3メートルほどに架かった丸太をグループ全員が越えろ」
いくらアスリートのサッカー選手でも簡単に達成できる課題ではありません。協力して、頭を使って、時に笑い声もこだまする中、課題クリアを目指しました。
長沢徹監督は「毎年、こういう合宿から始まる。選手が打ち解けた状態でトレーニングに入っていくためにも重要な時間」と言います。今季の岡山は3分の1の選手が入れ替わりました。これは大切な合宿なのです。
キャンプ初日を終えて、石毛選手は「正直、そこまできついメニューではなかったし、楽しかった」と少し驚いた様子。ある選手は「大変は大変やけど、ちょっと前まではこんなもんじゃなかった」と戸惑いの表情すら浮かべました。
それもそのはず。過去は無人島からいかだを作って真冬の海を渡って脱出したり、雪山でテントを張って寝たりしていました。魚や海藻をとって料理コンテストをしたり、流木アートを作って競い合ったりしたこともありました。もはや、サッカー選手の合宿の域をはるかに越えていました。
それが、昨年からよりコミュニケーションを重視したメニューになり、サバイバル感は少し減ってしまいました。しかし、成績はJ2でクラブ史上最高の6位。J1昇格プレーオフ決勝まで進出し、悲願達成まであと1歩に迫りました。
そんな流れを継承したのか、今年のウィンターキャンプは寝る場所、食事も用意され、課題の一部は体育館など室内でした。
報道陣から「ちょっと甘くなったのでは」という問いに、長沢監督は「これは非日常がポイント。遠くの山とか島に行かなくても、岡山はすぐ近くに非日常を味わえる場所がある。この2日でも(コミュニケーションの深まりは)1カ月分くらいの効果はあると思っています」と説明しました。
首脳陣が、「来季のキャンプはやっぱりもっと過酷にしないとダメかも」と思わないためにも、選手はJ1昇格という結果を残すしかないのかもしれません。
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