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2017年01月02日

亡き猫からの贈りもの 家族の再会綴った正月の投稿、ネットで話題に

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20年連れ添った猫「たら」

20年連れ添った猫「たら」

出典: 吉田さん提供

 「猫の贈りもの忘れない」と題した新聞投稿が、ネット上で話題になっています。2014年1月3日に掲載された文章で、いずれも東京都内に住んでいながらなかなか会うことのなかった家族が、飼い猫の死をきっかけに集まり、思い出を語り合いながら一晩を過ごしたという内容です。ツイッター上では「涙が止まりませんでした」「実家の猫を思い出しました」といった声が寄せられています。あれから3年が経ちましたが、家族はどう過ごしているのでしょうか? 投稿した女性に会って話を聞きました。

2カ月ほど経ったころのたら

2カ月ほど経ったころのたら

出典: 吉田幸子さん提供

20年連れ添った「たら」


 「友達から『インターネット上で話題になっているよ』ってメールが送られてきて、びっくりしたんですよ」。そう話すのは、東京都清瀬市に住む吉田幸子さん(75)です。メールを印刷した紙を手に、照れくさそうに笑います。

 新聞投稿に登場する猫は「たら」。1993年、中学生だった次男が夏祭りの夜に、段ボール箱の中に捨てられていたところを連れ帰ったのが始まりでした。

 自宅には柴犬の「こたろう」がいたため、吉田さんは飼うかどうか迷ったそうです。それでも、反抗期だった次男の「全責任を俺が負う」という言葉を聞いて決心しました。

 20年が経った2013年12月2日、たらが死にました。半月ほど落ち込み続けたという吉田さんですが、その時に感じた思いを残そうとペンをとり、朝日新聞の読者投稿欄「ひととき」に投稿しました。

柴犬「こたろう」(左)と一緒に眠るたら

柴犬「こたろう」(左)と一緒に眠るたら

出典: 吉田幸子さん提供

新聞投稿の内容はこちら


 2014年1月3日に掲載された文章は以下の通りです。

 うちには3人の子がいる。看護師やホテル勤務なので、正月でも一堂には集まらない。この前そろったのはいつ? 何のとき?とまず最初に確認するほど、2、3年ぶりの再会はざら。みな東京在住なのに。

 年末、20年余り共に暮らした猫が逝った。次男が中学生のころ、夏まつりの夜に拾ってきた子。最後の数日はお水だけ飲んでいた。可愛がってくれた私の友人が会いに来た。子どもたちも駆けつけた。

 長女が来ると最後の力を振り絞り、お帰り、と玄関で迎えた。最も疎遠気味だった長男に最後の水を飲ませてもらうと、びっくりするほどきれいな目を見開き、さよならをして逝った。

 その夜、お気に入りのカゴにまーるくなって眠りについた子を囲み、夫と私、子どもの5人がそれぞれ思い出を語り合った。悲しくも楽しい時間だった。この子の20年間は、我が家の歴史だ。子どもらの青春、結婚、夫の脳内出血と車いす生活。みーんな見てきた子との別れに、山ほどの涙と別れの言葉を浴びせた。

 このお正月もそろわない家族。あの一夜は、あの子からの最後の贈りものだった。可愛かったよ。いい子だったよ。忘れないよ。

出典: 2014年1月3日の朝日新聞

「ひととき」欄に掲載された吉田幸子さんの投稿

「ひととき」欄に掲載された吉田幸子さんの投稿

出典: 2014年1月3日の朝日新聞

次男が差し出した封筒


 看取った日の夕方、数年ぶりに5人が集まりました。

 家に来た時は手のひらにのるほど小さかったこと。こたろうに付き添うようにして一緒に散歩していたこと。血尿の後で行方がわからなくなり、探し回った末に近くの畑の穴の中でうずくまっているのを見つけた日のこと……。夜が更けるまで思い出話は続きました。

 子どもたちが「親が死んでも、こんなに泣かないよね」と冗談を言うと、吉田さんは「私たちのときも少しは泣いてよね」と返して笑い合ったそうです。

 「たらには助けられてばかりでした。家族の間に入るクッションみたいな存在。ケンカが始まっても、たらを膝の上に乗せてたら大きな声で怒鳴ることもできないじゃないですか」

 弔った後、中学生のころに「全責任を俺が負う」と宣言した次男が、吉田さんに封筒を差し出しました。「20年分には足りないかもしれないけど……」と言いながら、かかった治療費などに充ててほしいと現金を入れていました。

 「ちゃんと覚えてたんですね。その気持ちがうれしくて」と吉田さん。

雪の日に外で遊ぶたら

雪の日に外で遊ぶたら

出典: 吉田幸子さん提供

その後、家族で会うことは?


 たらを看取ってから3年が過ぎました。あれから家族で顔を合わせる機会はあったのでしょうか?

 「2016年の1月に、久しぶりに集まりました。入院していた夫の誕生日のお祝いをしようと次男が言い出して、外出許可をもらって食事会をしたんです。孫たちも集まって、にぎやかな会になりました」

 吉田さんの家には今、黒猫「あぽろ」がいます。たらが死んでから半年以上が経ったころ、動物病院で里親募集の貼り紙を見つけて、一緒に暮らすことを決めたそうです。

 「たらが人なつっこくて、刺し身が大好きだったのとは対照的。とってもビビリで、ケーキやチーズが好き。私たちにとって大切な家族です」

黒猫「あぽろ」。後ろにいるのが吉田幸子さん

黒猫「あぽろ」。後ろにいるのが吉田幸子さん

出典: 吉田さん提供

「どこの家でも同じ」


 昨年12月23日、吉田さんの投稿が載った新聞の切り抜き画像がツイッターに投稿され、多くの人の目に触れました。

 「泣いてしまいましたが、とてもあたたかな気持ちです」「うちの黒猫を思い出しました」といった声が寄せられ、ブログで紹介する人たちも。そのことを知った吉田さんの友人が、「すごいわね」と知らせてくれたそうです。

 昔の投稿が話題になったことについて、吉田さんは「きっと猫や犬を飼っていれば、どこの家でも同じだと思います。たらちゃん、ありがとうね」と話します。

 3年遅れで届いた、たらからの「もう一つの贈り物」。話の途中で吉田さんは、何度も昔を思い出しながら目元をぬぐっていました。

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