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IT・科学

東大女子限定ハッカソン、プロも驚くアプリ続々 その狙いとは?

ハッカソンでアイデアを練る東大の女子学生
ハッカソンでアイデアを練る東大の女子学生

目次

 イケメンボイス(イケボ)でダイエット、睡眠不足になると「疲れた顔」をARで再現。12月4日にあった、東大に通う女子学生向けのハッカソンでは、ユニークなアイデアが次々と生まれました。なぜ、あえて東大の女子学生限定なのか? そこには、圧倒的に男性ばかりというエンジニア界の「ガラスの壁」を揺さぶる狙いがありました。

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虎ノ門ヒルズに見慣れない集団が…

 クリスマスのイルミネーションが輝く東京の虎ノ門ヒルズに、普段は見かけない女性のグループが続々、集まりました。「東大ガールズハッカソン」の参加者たちです。

 ハッカソンでは、文系、理系問わず、30人の学生たちが「心と体」をテーマにアイデアを練りました。

 もともと学部生のうち女性は20%しかいないという東大。中でも理系は特に女性が少なく、ほとんどが男性だけの研究室も少なくありません。

 「東大ガールズハッカソン」は、そんな状況を少しでも変えようと、企画されました。

会場となった虎ノ門ヒルズ
会場となった虎ノ門ヒルズ

女子学生が来ない!

 「知り合いが全然いない」
 「話が通じない気がする」

 イベントを企画した東京大学新聞の担当者は「女子学生には、そもそも理系の研究室との接点が少ないんです」と言います。工学部や理学部情報系などの研究室も「女子学生に来てもらうにはどうすればいいのか?」について、日々、悩んでいるそうです。

 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など新しい世界が次々と広がっている現在。女性のエンジニア不足は企業にとっても課題となっています。

 「東大ガールズハッカソン」は、そんな学生側の問題意識と企業側の悩みが合致し、実現しました。IT企業からメンターとして技術者が協力。会場も虎ノ門ヒルズにオフィスを構える日本ビジネスシステムズが提供しました。

ハッカソンの評価基準、プレゼンの面白さもポイントに
ハッカソンの評価基準、プレゼンの面白さもポイントに

IT企業10社が協力

 学生は10班に分かれて、それぞれの関心分野についてアイデアを練りました。協賛したIT企業10社の第一線で活躍するエンジニアが、各班のメンターとしてサポートしました。

 メンターとして参加した日本ビジネスシステムズの蔵野早紀さんは、女性のエンジニアとして仕事をする中で「コミュニケーションの課題」を感じていました。

 「職場の雰囲気はいいんですが……9割が男性だと、どうしても男性目線の働き方になりがちで。体力的にも、しんどい時はあります」

 同じく日本ビジネスシステムズの中本千尋さんは「開発するサービスについては、男性も女性も使いやすいものを作ることに変わりはありません」と言います。

 その一方で「女性が増えることで、これまで企業が発見できていなかった新しい価値を製品化できる可能性はあるはずです」と話します。

ボタンのデザインにこだわる

 男性の立場で参加したメンター、サイボウズの天野祐介さんは「うちもエンジニアの9割は男性。どうしても言葉遣いが粗っぽくなってしまって、それが女性を遠ざける悪循環になっているかもしれません」と振り返りました。

 ハッカソンでは、クリックするボタンのデザインなど使い勝手のこだわりを大事にする女子学生が多かったのが印象的だったそうです。

 「僕らは、どうしても速さとか機能とかに目が行きがち。こういうイベントを通して、女性エンジニアが増えていくとうれしいです」

発表会ではIT企業のエンジニアが講評した
発表会ではIT企業のエンジニアが講評した

グランプリには…

 アイデアソンからハッカソンまで、1カ月にわたる期間を経て、発表会では独創的なアプリが発表されました。

 睡眠時間からお肌の調子をシミュレーションするアプリは、自分の写真にあえて「老化処理」を施すというユニークなもの。イケメンキャラが声でダイエットを応援してくれるアプリは、ポイントで様々なボイスが手に入れられるゲーム性が売りです。

 消費カロリーに応じておすすめのコンビニスイーツを選んでくれるアプリは、講評した企業の担当者が「協賛企業がつきそう」とコメントするなど、ビジネスセンスを感じさせるものでした。

 選考の結果、準グランプリには、スケジュールに登録した予定の内容からその人の適性を判断し、企業の採用担当とマッチングさせるアプリが選ばれました。メンバーは「自分の就活体験を元に、サービスの利用者のことを考えてアプリを作りました」と話しました。

 グランプリには、歩数をカウントして地球一周をめざすアプリが輝きました。アイテムを手に入れることで歩数が何倍にもカウントされるなど、ゲーム要素を入れた点が評価されました。

自作の紹介ムービーを用意するチームも
自作の紹介ムービーを用意するチームも

特徴的だった「使い手」目線

 今回の取り組み、プレゼン用にグラフィック制作ソフト「イラストレーター」で自作のキャラを描いたり、使っている場面を動画で作品にしたり、一般的なハッカソンにはない華やかな雰囲気でイベントが進みました。

 ウェアラブルデバイスから収集した睡眠時間やカロリーなどのデータに応じて、おすすめの化粧品を通知するアプリのターゲットは「忙しい20代の働く女性」。自分で化粧品を探す時間が取れなかったり、色んなコスメを試してみたいけど情報がなかったりといった、女性の心理を考えて作られました。

 詳しい技術者やエンジニアが集まると、仮想現実(VR)やスマートウォッチなど新しい技術や製品は「使ってみて当然」と考えがちでが、たいていの人にとってはマニアックで趣味の世界のものです。

 それに対して、今回の女子学生限定のハッカソンでは、新しい機能を使ってみる気にさせたり、受け身の姿勢でも利用してみたくなるようにしてみたりするサービスが目立ちました。エンジニアにも色んな視点が必要なんだと感じさせるイベント内容で、プログラミング初心者の学生も楽しみながら参加していたのが印象的でした。

 

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