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栗山監督「戦力外」から復帰 ドラフトの当たりくじ、必死の“対策”
悲喜こもごものドラマを生んできたプロ野球ドラフト会議。注目のあの投手はどこへ? くじ引きでの勘違いから1年、ヤクルト・真中満監督はガッツポーズを取り返せるか。日本ハム・栗山英樹監督はくじ3連敗の屈辱を晴らせるでしょうか。運頼みとはいえ、くじを引く人選に頭をひねったり、下着の色にこだわったり…球団は、あの手この手で必死です。運命の会議は10月20日に開かれます。
昨年のドラフト。阪神とヤクルトが高山俊選手(明大)を1位指名したため、抽選が行われました。ヤクルトの真中監督が引いたのは外れくじでしたが、ドラフト会議のロゴマークを交渉権確定の印と勘違いして当たりと思い込み、ガッツポーズ。ヤクルトが交渉権確定と発表されました。
ところが確認の結果、阪神の金本知憲監督が当たりくじを引いていたことがわかり、訂正されました。金本監督は「ビデオ判定で本塁打に覆った心境」とにんまり。真中監督は「あのガッツポーズを返してください」としょんぼり。高山は今季阪神でレギュラーに定着し、新人王の有力候補です。逃した魚は大きかった、ですね。
日本ハムの栗山監督は大舞台に「復帰」です。13年のドラフト。松井裕樹投手(神奈川・桐光学園高)を外すなど3連続で1位のくじを外したことで、2年間くじの「戦力外」となっていました。
しかし、今年は抽選となれば自らくじを引くことが決まりました。リーグ優勝の強運ぶりを発揮できるでしょうか。
くじに強い男といえば渡辺久信・元西武監督です。09年に6球団競合の菊池雄星投手(岩手・花巻東高)を引き当て、翌年も6球団競合の大石達也投手(早大)を当てました。大石の時は、早稲田カラーのエンジ色の下着を身につけて臨みました。
13年の広島は監督ではなく、担当スカウトが大瀬良大地投手(九州共立大)の当たりくじを引き当てました。高校時代から大瀬良を追い続けてきた田村恵スカウトの「自分が一番、見続けてきたので、絶対に当たると信じた」という熱い言葉が、感動を呼びました。田村スカウトもチームカラーの赤いパンツをはいて臨んだそうです。
09年からは一般ファンを1000人招待する「公開ドラフト」になりました。抽選結果が決まると歓声が起こったり、壇上でインタビューが行われたりと盛り上がっています。
「投手が豊作」といわれる今年。ナンバーワン右腕は150キロ超の速球を投げる田中正義投手(創価大)です。春に痛めた肩も治り、競合する球団は増えそうです。佐々木千隼投手(桜美林大)と柳裕也投手(明大)も1位候補です。
高校生は「ビッグ4」に注目です。春の時点で評価が高かった藤平尚真(横浜高)、寺島成輝(大阪・履正社高)、高橋昂也(埼玉・花咲徳栄高)の3投手に、夏の甲子園を制した栃木・作新学院高の今井達也投手を加えて評価する声が高いです。
社会人では山岡泰輔(東京ガス)の名前が挙がります。
戦力均衡や契約金の高騰防止を目的に1965年に始まったドラフトには、様々なドラマがありました。野球協約の盲点を突いた「空白の一日」を利用して巨人と電撃契約した江川卓投手の「江川事件」は、社会問題になりました。
甲子園で活躍した大阪・PL学園高の桑田真澄投手、清原和博選手は明暗が分かれました。巨人入りを熱望していた清原ですが、西武が交渉権獲得。その巨人が指名したのは早大進学を打ち出していたチームメートの桑田で、清原は涙を流しました。
最多球団指名競合選手は、1989年の野茂英雄投手、90年の小池秀郎投手で8球団です。近鉄に入団した野茂は1年目から最多勝、最優秀防御率を獲得するなど大活躍しました。小池は交渉権を得たロッテへの入団を拒否。社会人野球に進み、92年のドラフトで近鉄に入団しましたが、故障もあって長く活躍を続けることはできませんでした。
近年は長野久義選手、菅野智之投手が他球団の指名を拒否してプロ入りを遅らせ、巨人入りの意志を貫きました。
最近は日本ハムの「果敢な指名」が話題になっています。11年には早大ソフトボール部の大嶋匠捕手を指名。12年は大リーグ行きを表明していた大谷翔平投手(花巻東高)を果敢に指名して口説き、獲得に成功しました。巨人入りを希望していた長野や菅野にもアタックしています(入団を拒否されましたが)。
過去にはダルビッシュ投手、中田翔選手らの将来性を見込んで獲得し、今の常勝チームの礎を築きました。今年も周囲の予想を覆すような指名をするのか、目が離せません。
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