話題
リオ五輪、日本はダサすぎ?ドン小西さん「せっかくの選手の活躍が」
日本人選手のメダルラッシュに沸いているリオ五輪。テニスの錦織圭選手モデルのポロシャツが銅メダル効果で売れるなど、スポーツとファションの関係も密接です。そのスタートとなる開会式は、各国によるファッションショーでもあり、国旗の色のアレンジがスタイリッシュだったり、民族衣装が新鮮だったり。
さあ日本選手団の登場。でも。あれ?あれれ?なんか、ちょっと………? テレビを前に、職場でも微妙な空気が流れました。いったいなぜ? 4年後の東京五輪に向けてどうしたらいいの? デザイナーのドン小西さんに聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・松沢奈々子)
体操、卓球と日本人選手の活躍は素晴らしい、かっこいいよね。しかし、それを引き立てるはずの競技用ユニホームのデザインのダサいこと……。
スポーツメーカーにとっては絶好のPRの機会のはずなのにもったいないね。繊維の機能性は高いのかもしれないけど、ただ変わっていればいいと言うような、小手先だけの薄っぺらいデザインばっかりだよ。
テーマも感じないし選手の動きや体格を美しく見せるものも皆無だな。大胆な色柄はあるけど、どれも平面的でパソコン上で考えたグラフィック的なものがほとんど。
おしゃれ感や今っぽさはないね。若い選手が活躍するスポーツの祭典なのに、選手からみればおばあちゃん世代の大ベテランのデザイナーが作ったりしているのも、おかしいよね。
そもそもといえば開会式。真っ赤なブレザーに白いパンツという日本は1番ダサかった。あか抜けなくて古くさい。
「52年前(の東京五輪)と変わらない。使い回しかと思った」って言う人も多い。とにかく主張もなにもなくて見てて恥ずかしかったよ。
台湾はカラフルでモダンで勢いがあったし、ドミニカ共和国もブルーのジャケットに、派手なグラフィックプリントのネクタイがよかったし、デンマークも高級感あったし。
ハンガリー、ノルウェーもファッショナブルでよかった。中国の黄色のジャケットに白いスカートも爽やかでなかなか。
五輪のユニホームは国旗をアレンジすることが多いけど、固執しすぎることもないんじゃない。
カナダだってパンツは国旗の色じゃないし、古典的な式服を意識せずにデザインした。20世紀に構築された伝統にしばられず、今の時代の解釈でやるっていうのを見せたよね。
小さな国はコテコテの民族衣装になりがちだけど、今回はそれをモダンにアレンジしたものも多くかっこよかったね。
競技の記録一辺倒でなく、観光PRにもつなげているようだった。「ウェルカム・トゥ・マイ・カントリー」って言われてるような、広報の役割を持っていてよかったね。
昔は先進国と後進国でだいぶ違いがあったけど、今回の開会式は、その格差が埋まってきたのを初めて感じたな。かつてダサいと思っていた国も今回は違って見えた。文化の認識が高まってきたというか、それぞれのセンスが良くなったことを実感したね。
ユニホームは、機能とともに、審美性、時代性、テーマを盛り込むもの。ならば「今」の日本を象徴するようなデザインだったり、もっとも旬なデザイナーを使ったりするべきでしょう。
世界で活躍する次世代デザイナーはたくさんいる。今だったらサカイやハイク、ジュンヤワタナベなんていいんじゃない?
なのに、よりによって百貨店。デザインは見るからに制服。コンペ方式とはいえ、上層部だけで判断しているのが透けて見える。
僕も昔、日本選手団の公式服装選考委員会の委員や日本ユニフォームセンターの理事をやったことがあるけど、組織の問題が出ちゃう。五輪のロゴマークの選考でもわかったよね。
利権や決定権を持っている人間が私的な思いや好みで決めないように、専門家を集め、ただし第三者委員会などを通じて選考過程はオープンにすること。お金と時間と労力をかけて、無難なものを作っちゃうなんて、機会の損失でもったいない。
4年後に向けてねえ。日本の伝統や先端のメイド・イン・ジャパンをアピールできる機会にしなきゃ。
世界でファッションデザインの格差が縮まっているからこそ、その国らしさがより求められる。文化や歴史の重みを尊重するのと、自由を認めない保守的なデザインは違う。もったいないよ。勢いをもって攻めないと。
羽織はかまと着物や浴衣というのもひとつの手だけど、首都東京らしいモダンなものがいいね。
今回、ポルトガルが着てたようなジーンズこそ、まねてほしい。岡山・児島のデニムとか、静岡・浜松のシャツとか、全国にある技術を盛り込んだユニホームを期待したいね。
1/17枚