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「重版出来!」、視聴率では測れない名言 心に刺さる台詞の裏側は?
TBSに聞きました。
週刊コミック誌を舞台に、黒木華さん演じる新人編集者が漫画家や編集者たちと一丸になって人気漫画を作ろうと頑張る群像劇を描いたTBS系ドラマ「重版出来!」(火曜夜10時)。視聴率は一桁台を推移していますが、放送後にツイッターで話題になるのが、ドラマで登場した台詞の数々です。「深い」「心に刺さる」などのつぶやきが相次ぎ、「名言集」のまとめサイトもできるほど。作品作りで心がけたことについて、ドラマのプロデューサーに聞きました。
重版出来、1話のドラマに名言いくつも出てくるわ役者の個性強いわで楽しい
— ひなたぼっこ (@HinataBot46) 2016年6月7日
「ゆとりですがなにか」と「重版出来!」は名言多いなあと思う
— りら (@rirarira76) 2016年6月5日
みんなそれぞれもがきながら頑張って生きてるんだなあって思わせられる
重版出来とは、漫画が売れたことを意味する出版業界の用語です。ドラマでは編集者や漫画家だけでなく、営業部員や書店員たちも奮闘する姿が登場。各話ごとに中心人物が変わるのも見どころとなっています。那須田淳プロデューサーは「黒沢心という主人公を中心に、チームで漫画作りを仕掛けている。どんな仕事にも通じる物語になっている」と話します。
そんな全員野球を象徴するシーンが第2話に登場します。自分の仕事にやりがいが持てなかった坂口健太郎さん演じるコミック営業部員の小泉が、上司である岡の手帳を見るシーン。そこには、書店員の好みや、交わした会話が細かく記載されていました。
「書店員の、趣味まで……」。こうつぶやく小泉に、上司役の生瀬勝久さんが語りかけます。
真剣に聴く小泉。そして最後、岡の言葉に熱が帯びます。
「俺たちが売るんだ」
このドラマは同名の漫画が原作です。同じプロデューサーの八尾香澄さんは「原作の漫画には、ぐさりと刺さる素敵な言葉が多い。それを脚本家の野木亜紀子さんが、ドラマとして説得力のある作品に仕上げている」。このシーンも原作ではいくつかに分かれていた場面を一つにしています。那須田さんも「描きたいものは漫画と同じ。凝縮することによって、視聴者が日々の生活と照らし合わせて想像できるように作っている」と制作の意図を明かします。
一方、「決め台詞」にはならない言葉にも制作陣はこだわったそうです。漫画家を目指す女子大学生・東江がメインとなった第4話では、就職活動を心配する東江の母が、社会人の兄とこんな会話をしています。
原作でも登場するこのシーンは、脚本にする段階で削るかどうか議論になりました。最終的に、那須田さんが「こういう価値観って、子どもと親の世代の『普通』がずれてきているリアリティが出ていて面白い」とドラマに採り入れたそうです。
放送後のツイッターでは、この場面を書き起こしたツイートが1万3千リツイートされました。那須田さんは「言葉の脇役たちも活躍させたかったので、決め台詞がないこうしたシーンに反応してくれているのは、意図が伝わっているのかな」と手応えを感じていました。
ドラマの台詞以外にも、劇中で登場する漫画を実在の漫画家が描き下ろすなど話題は多かったですが、視聴率は一桁台にとどまっています。TBSは「各話ごとの結果を受けて、演出などの工夫をしています。視聴率二桁を目指すことは一貫して変わりません」と話します。
6月14日放送の最終話では、原作にはないオリジナルのストーリーも登場します。那須田さんは「『一つのことを成し遂げるまでに、どんな背景があるのか』と想像することは、仕事や学校生活、広い意味では生きていく上で大事になる。最終話でもそんなエピソードが出てくるので、何かを感じ取ってもらえればうれしい」と話しました。
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