話題
古鉛筆から花が咲く! 土に植えて発芽、ムダなく使える 特許も出願
最後まで使い切ることが難しいのが鉛筆。でも、捨てるのはもったいない……。そんな思いから生まれた「花が咲く鉛筆」が話題になっています。
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最後まで使い切ることが難しいのが鉛筆。でも、捨てるのはもったいない……。そんな思いから生まれた「花が咲く鉛筆」が話題になっています。
最後まで使い切ることが難しいのが鉛筆。でも、捨てるのはもったいない……。そんな思いから生まれた「花が咲く鉛筆」が話題になっています。使い切れずに残ってしまう部分に植物の種子が入っていて、そのまま土に植えると芽が出て、花が咲く仕組みです。「環境保護への意識を少しでも持ってもらえたら」との思いで起業したという、神田剛さん(37)に話を聞きました。
話題になっているのは、「さくらさくえんぴつ」と「花咲く色えんぴつ」です。鉛筆全体の半分に芯が、あとの半分にコスモスやシロツメクサ、クローバーなどの種子が入っています。
芯の入った部分を使い切った後、短くなった鉛筆を土に植えると発芽し、育てることで花が咲きます。木材から作られた鉛筆を無駄なく使い切り、それを土に戻して新しい植物を育てるという発想から生まれました。
その名前もあって、合格祈願や入学祝いの品として人気が高く、学校の先生が生徒たちのためにまとめて購入するケースもあるそうです。2013年春に販売を始めてから、これまでに6000本以上が売れました。
テレビ番組などで紹介されるたびに、「アイデアと実用性が素晴らしい」「こういうのが子どもに必要」などと話題になっています。
これらの商品を企画したのが神田剛さん。転職活動中だった2008年、自ら温めてきた「発芽する鉛筆」というアイデアを実現させるために起業を決意しました。
アイデアをひらめいたきっかけは、大学卒業後に入ったデザイン専門学校で、イベントに出展するための企画を考えているときでした。
テレビで「ナガサキアゲハ」というチョウの生息地がどんどん北上していることを知ったとき、「チョウの幼虫が食べる植物はどうするんだろう」と思ったそうです。そこで、植物の話と、それまで何となく考えていた「使い切ることが難しい鉛筆の欠点を改良できないか」という思いが結びついたそうです。
「木材から作られた鉛筆を無駄なく使い切ることで、新たに植物を育てる。環境保護への意識を高められる商品ができるんじゃないか」
さっそく市販の鉛筆を買ってきて試作することに。水につけて柔らかくなったところで半分に割り、芯を取り出して半分にして戻し、上部に穴を開けて種子を入れました。
イベントなどで試験的に販売したところ好評だったため、量産化することに。量産化といっても、大切な部分は今も神田さんの手作業です。
鉛筆の芯が半分だけ入った、穴の開いた鉛筆を納品してもらい、神田さんが1本ずつに種子を入れます。水と光を遮断して種の品質を守るために穴にアルミをかぶせ、種がこぼれないようにテープで封をして、オリジナルの包み紙を手で折ってラッピングします。
2012年8月には、この商品に関する特許も出願しました。
そんな神田さんに、商品の特徴などを聞きました。
――商品の特徴を教えて下さい
「余った木材の部分を土に埋めて別の植物を育てることにより、木材を消費した分を補おうという思いを込めました。使っていただいて、自然環境保護への意識が芽生えたらという願いもあります。ただし、欠点もあります。種子の性質上、発芽率が100%ではないことと、使い終わりの時期が発芽に適さない時期になりうることです。購入していただいてから1年以内を目安に植えていただかないと、発芽率が下がってしまいます」
――「さくらさくえんぴつ」と「花咲く色えんぴつ」の違いを教えて下さい
「『さくらさくえんぴつ』は黒鉛筆でHB・2Bの2種類があり、入っている種子はコスモス(秋桜)です。『花咲く色えんぴつ』は、芯の色と同じ色の花が咲き、同じ色の実がなるという商品です。入っている種子には、発芽期間が短いものや、通年で調達できないものもあるため、一部を除いて季節限定の商品になります」
――工夫した点は
「種子の名前や種まきに適した時期、一部の商品には花言葉を入れるなど、細かな点もこだわりました。鉛筆を植える際は縦にするので、通常の鉛筆とは違って縦書きになっています。これは横書きだと左利きの人には読みにくくなることも考慮しています」
――生産を委託することは考えなかったのですか
「自分で作る前に、商品のアイデアを持って大手文具メーカーに売り込みにいったことがあります。ノートとセットにすることで『早く植えたいという気持ちで字をいっぱい書くので、ノートも売れると思います』と。でも商品化には至りませんでした」
――今後の展開については
「いずれは松の種子を使った商品を出したいと考えています。東日本大震災のとき、津波で多くの松がなくなりました。そこに子どもたちが使い終えた鉛筆を植えて、子どもたちの成長とともに松林を復活できたらいいなと思うんです。他にも、月が変わる度に捨てられるカレンダーに、まくのに適した種子をセットするというアイデアもあります。一人でも多くの人に使っていただくことで、環境保護への意識が高まり、緑が広がっていったらうれしいです」
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