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東野圭吾、中国で人気 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」に感動、その理由とは

中国で東野圭吾さんのブームが起きています。中でも人気なのは『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。なぜ、東野作品? なぜ『ナミヤ雑貨店の奇蹟』?

中国で人気の東野圭吾さん(左)と代表作「容疑者Xの献身」
中国で人気の東野圭吾さん(左)と代表作「容疑者Xの献身」

目次

 中国で東野圭吾さんのブームが起きています。中でも『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(中国語『解憂雑貨店』)は、中国の書籍の専門サイト「開巻(Open Book)」で、2015年に入ってからつねにトップ5位に入っています。なぜ、東野作品? なぜ『ナミヤ雑貨店の奇蹟』? 背景には、現在の経済発展に日本の高度経済成長を重ね合わせる、中国人の心情があるようです。

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昔は欧米、今は「日本ブーム」

 世界各国の文学作品の中国語訳を手掛ける出版社「訳林出版社」の編集者、張遠帆氏によると、10年ほど前から、中国では「日本ブーム」が起きているそうです。出版業界でも、日本の書籍は人気になっています。

 一昔前は、欧米への憧れから、英文の翻訳小説などがよく読まれていました。しかし最近は、中国から「爆買い」と呼ばれる買い物客が日本に大勢、訪れるなど、地理的な近さから日本や韓国への注目が高まっています。

 韓国は書籍ではなく、主にドラマやポップカルチャーがメインですが、日本はマンガのほか、小説、歴史、建築、作法やライフスタイル(生け花、整理術、収納)などが人気です。

 夏目漱石や川端康成のほか、山岡荘八の『徳川康成』、塩野七生の『ローマ人の物語』、近藤麻理恵の『人生がときめく片づけの魔法』などが注目されています。

中国で人気の塩野七生さん
中国で人気の塩野七生さん 出典: 朝日新聞

東野人気 きっかけは『容疑者Xの献身』

 日本の小説家といえば村上春樹さんです。もちろん、村上作品は根強い人気がありますが、張さんは「村上さんはすでに『世界の村上』と認識されており、『日本』という色が薄れています」と言います。

 日本作家として中国で人気なのは、推理作家の東野圭吾さんです。

 中国では長い間、推理小説は日本ほど人気はなく、むしろ認知度の低いジャンルでした。「開巻」サイトでは、業界の推計として、1990年代の推理小説の愛読者は5000人に過ぎないと指摘しています。

 しかし2000年以降、推理小説の人気が高まります。きっかけになったのが東野さんの『容疑者Xの献身』でした。

 『容疑者Xの献身』は推理小説でありながら、倫理や道徳などの問題を扱っているのが特徴です。そして、クライマックスまで一気読ませるストーリーの面白さから、中国で推理小説の人気を高めました。

映画「容疑者Xの献身」に出演した福山雅治さん(右)と堤真一さん(左)=2008年10月
映画「容疑者Xの献身」に出演した福山雅治さん(右)と堤真一さん(左)=2008年10月 出典: 朝日新聞

意外なヒット作『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

 最近よく売れている本は東野さんの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』です。2015年9月19日付の北京の新聞「新京報」の『ベストセラーリスト』によると、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は2位にランクインしています。

 推理小説というより、ミステリ・ファンタジーのジャンルに入るこの作品。「開巻」サイトの統計では発売後3カ月でベストセラーのリスト入りし、アマゾンのランキングでも上位を長く占めています。

 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』はなぜ人気なのでしょうか。作品で描かれている時代はちょうど1980年代の日本です。経済が高度成長を遂げ、社会が転換期にある今の中国と合致しています。現在の中国が抱える悩み、迷いが通じる部分があり、共感を呼んでいるようです。

新たな市場、出版社も注目

 新たな市場を狙って、日本の出版社も中国との関係を深めています。

 2014年8月に北京であったブックショーに合わせて講談社、小学館、マガジンハウスの社長も北京を訪れ、中国側と意見交換をしています。

 ロングセラー「窓辺的小豆豆(窓ぎわのトットちゃん)」(黒柳徹子)は、正式な訳本が出た2003年以降で710万部が売れています。

 一人っ子への教育熱を背景に児童書は、成長市場になっています。生活に余裕をもった人たちには、ダイエットや旅行、美容、ファッション、写真など趣味の本も人気です。経済発展による新たな需要の高まりが、日本の書籍人気の背景にあるようです。 
 

中国でも人気の「窓ぎわのトットちゃん」
中国でも人気の「窓ぎわのトットちゃん」
海賊版だらけで商売にならなかった時代から、著作権への意識も少しずつ変わっている。巨大市場をつかもうと、8月末のブックショーにあわせて講談社、小学館、マガジンハウスの社長も北京を訪れ、中国側と意見交換した。
2014年9月7日:(波聞風問)北京に日本の著作 日中の壁、乗り越える好奇心:朝日新聞紙面から
 ロングセラー「窓辺的小豆豆(窓ぎわのトットちゃん)」(黒柳徹子)は、正式な訳本が出た2003年以降で710万部が売れた。子供むけの推薦図書でもある。30年がかりで750万部に達した日本を超える日も近い。絵本版も翻訳中だ。
 実は80年代から、独自に訳された「小豆豆」が出回っていた。文化大革命が終わり、外国の文化に多くの中国人が飢えていた。「こんなに自由な発想や学校が日本にあったんだ」。ある50代の女性は、当時の感想を語る。
2014年9月7日:(波聞風問)北京に日本の著作 日中の壁、乗り越える好奇心:朝日新聞紙面から

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