お金と仕事
おしゃれ白衣、値段7倍でも人気 医師サイトで宣伝 あのドラマにも
「おしゃれな白衣がない!」の一言から生まれた高級白衣。医師向けサイトでの宣伝が成功し、口コミで評判が広がり、TVドラマにも、たびたび登場しています。
お金と仕事
「おしゃれな白衣がない!」の一言から生まれた高級白衣。医師向けサイトでの宣伝が成功し、口コミで評判が広がり、TVドラマにも、たびたび登場しています。
ドラマ「DOCTORS」で沢村一樹さん演じる腕利きの外科医・相良浩介を引き立てるのが、体のラインにピシッと合った白衣です。この白衣、若手ドクターが漏らした「おしゃれな白衣がない!」の一言から生まれました。医師向けサイトでの宣伝が成功し、TVドラマにも、たびたび登場。通常の7倍の値段にも関わらず、月間4000着を販売するまでに成長しています。
高級白衣を手がける「クラシコ」を創業した大和新さんは大学卒業後、IT企業で営業をしていました。10年前の2005年、中学生の同級生同士で飲んでいた時のこと。医師になった1人が「とにかく格好いい白衣がない」と愚痴りました。忙しい勤務の合間、たまの休日にこだわりの服を買うのが息抜きなのに、仕事となると同じような野暮ったいデザインの白衣しかない。そんな日常に不満を持っていたのです。
大和さんは、さっそく、知り合いを通じて医師30人にアンケートをしました。すると、8割の人が白衣のデザインに不満を持っていたことが判明。医療にも、アパレルにも接点のなかった大和さんでしたが、ビジネスチャンスと見て起業を決意しました。白衣のデザインは、服飾学校を出てテーラーで働いていた同級生の大豆生田伸夫さんに「同じ『お』から始まる名字で後ろの席に座っていた」縁で頼みました。
デザインや素材にこだわった結果、値段は通常の白衣の7倍、約2万円になりました。しかも、多くの病院には、普段から付き合いのある業者さんがいる中、どうやって販路を作るか。大和さんが注目したのがネットです。医師の9割以上が登録しているという医療情報のネットサービス「m3.com」に広告を出し、おしゃれ白衣を求める医師にアピールしました。
反応は上々でした。経済的に余裕のある医師は、安さで白衣を選んでいたのではなく、選択肢がないので仕方なく買っていたのです。口コミで評判は広がり、徐々に知名度が上がっていきました。
失敗もありました。女性の医師が白衣の下に着る、足首が出るくらいの丈のクロップドパンツ。白衣と同じようにデザインへの不満が多かったことから、商品化に踏み切ったところ「全然、売れませんでした」(大和さん)。白衣と違いデザインでのこだわりをアピールできる要素が少なく、ユニクロなどファストファッションのメーカーとの違いが出せなかったのです。結果、価格競争になってしまいました。
とはいえ、白衣の売れ行きは順調に成長。2009年には、TBSのドラマ「MR.BRAIN(ミスターブレイン)」のスタイリストから打診があり、白衣を衣装協力することに。ドラマでは綾瀬はるかさんらが着用しました。映画やドラマ業界でも、格好いい白衣が求められていたのです。
その後は、テレビ朝日のドラマ「DOCTORS(ドクターズ) 最強の名医」、フジテレビのドラマ「ガリレオ」など、衣装協力のオファーが相次ぐようになります。ドラマや口コミで評判が広がったことで、個人の医師だけでなく、大学の研究室など部署単位の発注も来るようになりました。
大和さんが次に狙うのは海外です。日本と同様、デザインにこだわった白衣がない国が多く、チャンスがあると見ています。2012年にはアメリカと台湾に現地法人を設立。カスタマーセンターも現地に設置し、本格的に展開していく計画です。
デザインと縁のなかった分野に注目しているのは、ベンチャーだけではありません。農機具大手のヤンマーは、スポーツカー風トラクターを開発するなど、かっこいい農業という新しい市場を築こうとしています。
ヤンマーホールディングス取締役には、イタリアの名車フェラーリをデザインした奥山清行氏が就任。機能重視で武骨、という機械のイメージを一新させ、デザインへの意識が高そうな欧米市場を開拓を目指しています。
福祉の分野でも、デザインは注目されています。「WHILL」の車いすは1台95万円もしますが、今までにないデザインと機能が評判となり、発売と同時に即完売するほど人気です。創業者の杉江理さんは「デザインも性能も、イノベーションがほとんどなかった産業だけに、望まれていると感じました」と話しています。