植田 5本の作品を同時に走らせて作るのは簡単ではなかったですが、とても刺激的な試みでした。
長屋 ヤンマーには創業以来受け継がれてきた「HANASAKA(ハナサカ)」という価値観があります。未来を支える人材や才能を支援しようという取り組みで、まさに今回の制作形式は、アニメ界の「HANASAKA」につながるのではと感じています。アニメ業界の人と未来を育む機会になればうれしいですね。
植田 それならば私は「花咲じいさん」みたいな存在ですね(笑)。今回はオリジナルアニメということもあって、どのスタジオも高いモチベーションで、素晴らしい作品を作ってくれました。過去の例を見てもオリジナルのアニメ作品は世の中を変えていく力を持つことが多いんです。アニメ界の現状としては残念ながら消費財として制作されている傾向や、企画の偏りといった課題がありますが、今回のヤンマーさんの野心的なプロジェクトが、アニメの可能性を広げる刺激になって欲しいと願っています。この5話は序章に過ぎず、海外展開など広がって欲しいですね。
長屋 ヤンマーの次のステップとして、『未ル』で生み出された造形やデザイン思想を実際のプロダクトに落とし込むことができたら面白いですね。モノづくりは未来を想像し、夢を描き、現実に変えていくことが大切です。「MIRU」を通じてヤンマーの未来の製品の在り方を感じてもらい、そのテイストを持った製品が未来の現実世界で人を助ける——いわばアニメと現実がつながった未来をつくりたいです。
植田 これもまさにバタフライエフェクトですね。
長屋 そのとおりです。『未ル』プロジェクトをはじめたことで、私たちもストーリーの中に組み込まれてしまったのかも知れませんね。私と植田さんが出会ってしまったこともそう。偶然の出会いや一人ひとりの行動が連鎖して、新しい未来が生まれる。作品を見た皆さんも、クリエイターの皆さんも、ヤンマーの全社員も巻き込みながら、「未来は自分の手でつくれる」ということを証明していきたいです。それが「A SUSTAINABLE FUTURE」にもつながるのではないでしょうか。
(肩書・役職はすべて2025年3月時点のものです)