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2019年01月08日

VR研究者に聞く「ソードアート・オンライン」の魅力とVRの可能性

  • 提供:アニプレックス

 『ソードアート・オンライン(SAO)』は、次世代オンラインゲームを舞台とした小説が原作。アニメとしては、2012年に第1期、14年に第2期が深夜帯に放映。17年には『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』が公開されたところ、国内外共に人気を博し、異例のスマッシュヒットに。そして、さらに18年10月6日から、新たなシリーズとしてテレビ長編アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』の放送がスタート。今回、VR研究の第一人者である廣瀬通孝教授に、SAOの魅力と共に、SAOが描くVRの世界が今後実際に起こり得るのか、お話を伺いました。

 

廣瀬先生

SAOは研究者にも様々な示唆を与えてくれるSFアニメです

バーチャルな世界で、コミュニティはどう形成されていくのか。

――廣瀬先生に今回、テレビアニメ「ソードアート・オンライン(SAO)」をご覧いただいたのですが、いかがでしたでしょうか。
 
 ゲームの世界に閉じ込められた人たちの戦いを描いたSFファンタジーということで、けっこう入り込みやすい物語でした。バーチャル・リアリティ(VR)の重要な部分も、非常に分かりやすく描かれていましたね。
 
 驚いたのは、SAOの仮想空間《浮遊城アインクラッド》が100層もあって、最上部のボスを倒さないと、仮想空間から抜け出せないこと。しかも、戦いに敗れて死んだ場合は、現実世界の本当の自分も死ぬという過酷なルールがあるんですね。まさに、命がけのサバイバルゲーム。だから、戦うことに疲れ、死ぬのも嫌だからと仮想空間に居ついてしまう人たちもいるというのも納得。その上で、彼らが仮想空間で、どのようにコミュニティを形成していくのか、仮想空間というフラットな関係の中で、どうやって頼れる人を見つけていくんだろうと考えさせられましたね。
 

――若い人に人気の作品ですが、どういうところに惹かれていると思われますか。先生の研究室にはSAO好きな学生や研究者も多いのではないでしょうか?
 
 様々だと思います。純粋に作品として面白いので、SAOならではの世界観を楽しんでいる人も多いと思います。私の研究室にも確かにSAOファンは多いですよ。おそらく少数派だと思うのですが、電極的神経直接インターフェイスを面白がっているスタッフもいましたね。
 

――SAOでは、キリトたちは2年間、仮想空間の中で過ごします。仮想空間での様子があまりにリアルで、現実とVRの差があまり感じられないほどです。
 
 時代と共に、私たちが実際に暮らす中でも、現実とVRの世界の境目が薄らいでいますよね。私が子どもの頃は、サイバーワールドと言われても想像すらできなかった。VRが登場したのは1989年。当時はまだWebすらなかったので、仮想世界があると言われても、今とは感じ方もかなり違っていました。ネットワークは遠方のリアルな世界とつながるものであり、シミュレーションという概念もありましたが、あくまでシミュレーションであって、仮想店舗みたいなものはなかったです。一般の人々がバーチャルを意識し始めたのは、ここ10年くらいではないでしょうか。ネットワークでオンラインゲームに入って遊ぶということが始まったあたりから、VRが現実の私たちに身近なものになってきましたね。
 

若い人たちにとってのSAOは、私たち世代にとっての鉄腕アトム。

――先ほど、電極的神経直接インターフェイスとおっしゃいましたが、SAOの世界では、仮想空間内に五感を接続してその世界に入り込んでしまう、究極のVR、すなわちフルダイブを描いています。操作する人は、仮想空間内のアバターと一体化し、コントローラーを操るのではなく、自分の体と同じように意識そのものでアバターを動かしています。そういうことは今後、実際に実現するものなのでしょうか。
 
 まさに、それに近い研究をしている研究者が東京大学にいます。例えば、ある神経系を刺激することで味覚が変わるという研究などです。でも、これを、すべての五感でトータルに実現させるためには、まだまだ道のりは果てしない。原理的に可能でも、一般社会で実現可能なレベルにするためには膨大な時間がかかるのではないでしょうか。
 
 SAOではフルダイブする際、ベッドに横たわり、ゴーグルを装着して直接インターフェイスして、五感も運動神経系も完全に仮想世界に入ります。アバターが仮想世界で手を動かしても、現実世界の自分の手は動かず、寝たままですよね。つまり、一瞬だとしても現実の身体の神経系を一度完全に切ってしまうので、本来なら死んでいる状態に近いわけです。半身不随状態みたいになるので、私たちが実際にこのようなことを経験することになったら、ちょっと怖いなと思いました。SAOの主人公キリトは、フルダイブしても死なないから良かったのですが。
でも、SAOのような作品のお陰で、こんな具合に、神経型インターフィスが可能になった時、一体どういうことが起こるだろうかということを私たちもまた、考えることができます。そういう意味で、私たちのような研究者にとってSF作品というのは、示唆を与えてくれる大切なもの。特に、SAOはVR技術の可能性はもちろん、倫理観など様々な課題を与えてくれる作品です。
 
 このアニメを観ながらふと、今の若い人たちが年を取った時、SAOは、私たち世代にとっての鉄腕アトムみたいな存在になるのかもしれないと思いました。
鉄腕アトムって胸を空けると真空管が出てくるんです。当時はトランジスタとかLSIの概念がなかったですからね、あの真空管で動くはずがないのに。しかも、原子力エンジンを積んでいるので、ちょっと恐ろしい。今なら、そうしたズレも分かるし、そのまま鉄腕アトムが現実になることはないと100%断言できます。ただ、鉄腕アトムにおいて語られたメッセージは今なお、全く意味を失わないわけです。SAOもまた、ただ単に仮想空間に閉じ込められた人々の戦いを描いたSFではなく、そこにはいろんな物語や人生があるので個々に感じ入るものが何かしらありますよね。受け取った抽象的なメッセージというのは永遠に有効です。
 

VRを丸ごとリアルに体験できて楽しめるのがSAO

――もし、無尽蔵の人材と予算があったら、VRを使って先生はどんなものが作りたいですか?
 
 タイムマシンを作りたいですね。いろいろな過去の断片を集めて、VRで自分の過去を再構築するということをやってみたい。すでに人類は、空間は征服したと言ってもいいかもしれません。でも、時間軸はまだ。時間軸を自在に行ったり来たりできたら、もう一回過去に戻って、人生をやり直すなんてこともできて、面白いですよね。
 
 コンピュータは基本的に情報を記録できるから、過去はこれまでの記録を集積して、VRのようなテクノロジーを使ってレンダリングすれば、ある過去の風景を表現することができます。では、未来はどうするか。シミュレーションを使って、現状はここで、こんな具合が続いている、だから、次はこうなるだろうという予測することで、一応合理的には判断できます。VR技術で最近好評だったのが、今の食生活、生活習慣から、将来こうなりますよと予測したものでした。そうやって未来図が見えたりすると、生活や行動も変わってきますよね。
 

――お話をうかがっていると、今後、VRの世界はますます私たちに身近になっていくんだと分かります。そういう意味でSAOを観ておくことも一つの学びになるのではと思います。あらためてこの作品の魅力をうかがいます。
 
バーチャルとリアルな世界の関係性をいろいろ考えさせてくれるところがやはりいいですね。
 VRが丸ごとリアルに楽しめます。この手のエンタメ作品は、つい技術寄りになってしまいがちで内容が伴わない作品も多いのですが、このSAOはVRの世界を超越して、何かを感じさせてくれる魅力に満ちています。おそらくキャラクターや、ストーリーの設定が良いのでしょう。初めて観る人でも、きっと引き込まれるはずです。
 
――ありがとうございました。
 
 

廣瀬通孝さん
東京大学 連携研究機構 バーチャルリアリティ教育研究センター 機構長

ひろせ・みちたか/1954年神奈川県生まれ。82年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2006年より、同大大学院情報理工学系研究科教授。システム工学、ヒューマン・インターフェイスの研究を通してバーチャル・リアリズム(VR)の分野に進出。現在は、VRの技術を端緒として、この種のインターフェイス技術について、いろいろな角度から研究を行っている。具体的にはマルチモーダルインターフェイスの研究、複合現実感、ウエアラブルコンピュータの研究、ユビキタス・コンテンツの研究などを実施。著書に、『技術はどこまで人間に近づくか 生体化するテクノロジーと21世紀』『電脳都市の誕生 バーチャルリアリティとアーバンデザイン』『バーチャル・リアリティって何だろう 仮想と現実のあいだ』など。

2018年10月より、毎週土曜日深夜0時~TOKYO MX、AbemaTVほかにて放送中
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
主人公キリトは、平和な日々を過ごしていたが、フルダイブ技術の進化を探るため、ボトムアップ型AIを生み出すための人口フラクトライト研究「プロジェクト・アリシゼーション」に参加する。新たな仮想世界、《アンダーワールド》へログインしたキリトを待ち受けていたのは……。
 

https://sao-alicization.net/
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
 

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