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2018年07月18日

うますぎてマズイ!北九州市「孤独のグルメ」久住昌之さんと歩く旅

  • 提供:北九州市

 「孤独のグルメ」や「花のズボラ飯」の原作者として知られる久住昌之さん。見知らぬ街にふらっと立ち寄った主人公が、独特の感性でお店を選び、メニュー札や常連さんのふるまいを観察しつつ、”一期一会”の一皿を選び愉しむ。そんな物語を数多く手がけてきた久住さんが北九州市にやってきた。「ガイドブックはいらない。街を歩いて見て店を探す」と話す”旅と食の達人”は北九州市をどう喰らうのか?まずは初日の小倉編。
 今回のレポートではあえて店舗名を伏せ字にしています。どうしても知りたい人は記事末尾に各店舗の情報を載せていますので参考にしてください!!

北九州は「発祥推し」がすごい

 待ち合わせ場所は小倉駅南口。「この辺りは何年か前に歩いたなぁ」と久住昌之さん登場。今回は北九州市役所の職員さんが渾身のアテンドを務めます。
 アーケード入口には、北九州市民が愛するパン屋「S」がある。駅から下るエスカレーターまで甘い匂いが漂ってきます。人気のサニーパンは1個90円。オムレットはなんと40円。「安いよね。売り場の後ろでちゃんと作っているのも良いね」と久住さん。間食用に購入。

 魚町銀天街を歩きます。ここは日本初のアーケードとのこと。久住さんは「北九州って発祥自慢すごいよね。前に門司にいったときも『バナナの叩き売り発祥の地』って石碑があった」と反応。「最近、地方の市場はシャター閉まったままの店が増えてて寂しいんだけど、ここは市場らしい賑やかさがあっていいね」。確かに老若男女、いろんな世代の人たちが歩いていて活気があります。

市民の台所「旦過市場」で地味地味丼

 アーケードが途切れた横断歩道の先に市民の台所「旦過市場」が現れます。「前に来たときにも気になっていたんだけど日曜日で閉まっていたんだよ」と久住さん。間口の狭い商店が隙間なく連なる。「おでん屋のおかあさん、声が通っていいね」。お客さんも多く活気に満ちています。まずは市場の中央部にある「D」という食堂へ。ここは北九州市立大学の学生らが日替わりで店長を努めるお店。名物の「大學丼」はどんぶりいっぱいにごはんが盛られて200円。これに市場で売っている鮮魚や肉などをどんどんのっけていくという趣向です。さっそく市場を歩きながら物色。「迷っちゃうなー。歳で食が細くなってるのに(笑)」。まず足を止めたのが北九州名物「糠(ぬか)炊き」のお店。糠みそをだし汁にサバやイワシを煮付けた郷土料理。試食を勧められた久住さん「うまい!これは白米に合う。決まりだね」と大絶賛。魚屋さんでは「昨日、テレビ見ました!」と呼び止められる。さすがの知名度です。ここではプリプリのヒラメの刺身を購入。途中、量り売りの駄菓子屋に心を奪われ、ジェリービーンに浮気するなど”寄り道”もありましたが、15分くらいウロウロして終了。さあ「大學丼」を仕上げましょう!!

 まずのっけたのは「カナッペ」。市場名物のすり身の揚げ物です。さらに高菜漬けとキュウリといりこの酢の物、真竹煮しめ、キムチ、佃煮、枝豆とすり身揚げ、最後に糠炊きのサバと半熟卵。「色味が地味だね。でも茶色い地味弁、実は好きだったんだ」と笑う久住さん。海鮮や肉系に流れないのがさすがです。「これは箸がすすむなぁ。特に糠炊きとご飯はちょっと危険な組み合わせだね」。同行女子2人はご飯をお代わりしていました。久住さんは「市場を楽しむ良いシステム。大学生エライ!」とベタ褒め。すっかり満腹になって市場周辺をウロウロ。近くの映画館「S」を覗いて、館長さんに歴史について説明してもらった後、一路南へ。

メーテルがお出迎え

 小倉駅北側の施設「あるあるシティ」へ。ここはネットカフェのほか、漫画関連古書店、ライブイベント会場など、ポップカルチャーが集積したコンセプトビル。その中核施設が「北九州市漫画ミュージアム」です。北九州市は松本零士さんを始め、たくさんの漫画家を輩出。同ミュージアムは地元ゆかりの漫画家を中心に、幅広く漫画作品と関連資料を収集・保存し、漫画の特性や魅力を伝えていく活動を行っています。

 いきなりメーテル(松本零士さんの作品「銀河鉄道999」の登場人物)姿の女性が受付に座っていてびっくり。入口には地元出身の漫画家の作品を陳列しているコーナーが。「あっ畑中純さんも北九州なんだ。陸奥A子さんも!」とその多彩さに驚く久住さん。展示は名誉館長・松本零士さんのメッセージから始まり、漫画の文法など、なるほど!と思わせるものが続きます。久住さんが足を止めたのが、漫画の海外版を紹介するコーナー。日本と海外ではページのめくり方が異なります。右から左に読ませる日本の漫画を、左から右の海外版にするためには、絵を左右反転(いわゆる裏焼き)する必要があります。「(『孤独のグルメ』の主人公の)五郎も海外版では左右反転させるので左利きです。下手な漫画家だと絵がおかしくなるけど、(作画担当の)谷口ジローさんは狂ってない。本当に谷口さんはすごい」と久住さん。

 いろんな漫画家さんの裏話を聴きながら、最後の展示室へ。数万冊の漫画本が所蔵されています。久住さんが関わったものもたくさんありました。久住さんも「マニアックなものがある!『プロレスの鬼』これは珍しいですよ。嬉しいなぁ」と懐かしそうに手に取っていました。大人向けのものは子どもの手がと届かない高さに置くなどきちんと配慮されていています。また、子どもと一緒に寝そべって楽しめるようなスペースもあり、漫画好きな人間にとっては天国のような施設。これで入場料は一般400円、小学生100円。年間パスは一般2000円、小学生1000円。漫画の描き方講座も定期的に開催しているそうで、エッジの効いた子育てにぴったりの施設です。

さっと呑んでさっと帰る 角打ちの流儀

 午後6時ごろに向かったのが角打ち「H酒店」。すでに常連さんが賑やかに盃を傾けていました。その間に入れてもらいます。お酒は持ち帰るのも、ここで飲むのも同じ値段。カウンターの先にある棚には缶詰が所狭しと置いてあります。「グッと値上がりしました ¥340」という注意書きに久住さんが「グッとおいしくなりました、なら分かるけど。正直すぎて面白い」と反応。店のお母さんが「最近、イワシが不漁で缶詰も高くなって…。でも、これが美味しいから、しょうがないの」。まずは大瓶ビールで乾杯。お母さんが魚肉ソーセージの上に山盛りいっぱいのスライス玉ねぎを持ってくる。お母さん、やおらマヨネーズをかけだす。乳白のラインが幾重にも重なっていきます。純白の玉ねぎが見えなくなると、さらに七味唐辛子とお酢、醤油。どんな味が想像つかない…。久住さんがぐっとかきこむ。「ウマイ!」と満面の笑み。周りの常連さんも嬉しそう。

 久住さん「週何回くらいこちらにいらっしゃるんですか?」。

 常連さん「週2回かな。それ以外は他のお店に行って、土日は家で呑む」。

 そんな会話を楽しんでいるとおもむろに帰り支度を始める常連さん。「呑んだらさっと帰るのが角打ちの流儀なんよ」。にこやかに久住さんと握手を交わし、暖簾をくぐり薄暮の街に戻っていきました。いろんな人生が良い按配で交差する酒場には、そこでしか出会えない”教養”があります。

良い酒と良い肴に名言が…

 すっかり夜の帳が下りた小倉の街を歩くこと約10分。「小倉城って、どこを歩いていても見えるのがニクイよね」と久住さん。少々、酔いが回っている?

 再び魚町銀天街へ。2軒目の居酒屋「M」は昭和28年創業の名店です。「あっ!ここ前回小倉に泊まったときに呑んだ店だ!」と久住さん。北九州市役所スタッフのとっておきのスポットだったんですが、久住さんのさすがの嗅覚に一同ビックリ。前回は1階のカウンターだったそうですが、今回は2階の大広間へ。「おっ、掘りごたつ形式なんだ。ボクは正座やあぐらで飲むのが苦手なんで、これは嬉しいね。メニューの木札もシブイ。売り切れたらちゃんとひっくり返している」とすかさず観察する久住さん。大広間はお客さんでいっぱい。みんな楽しそうに飲んでいるのに騒々しいことはない。「天井が高いから話声が反響しにくいんだよ。こういうところも居心地の良さに影響するね」と久住さん。

 まずはビールでのどを潤す。中瓶350円という親切価格。つまみをチョイス。若いスタッフが携帯端末で注文を受け付けます。「建物は古めかしいけど、掘りごたつや注文システムなど新しいものもちゃんと導入しているね」と久住さんも感心。まずは野菜の糠漬け。「ナスが良いね。子どもの記憶がよみがえって、夏が来たな、と感じる」と久住さん。続いて、先ほどの角打ちの常連さんがすすめてくれたクリームチーズ。かつお節とのハーモニーが抜群です。「先に醤油かけてあるのが良いよね。お客さんに食べてもらいたい味が分かる」。さらにアラカブ唐揚げを手づかみでガブリ。骨まで喰らいます。その他、関門海峡の荒波で揉まれたタコ酢や、おばいけ(さらしクジラ)など。当然、日本酒モードになり、地元のお酒「天心」を頂く。

 ここで出てきたのがイカのうに和え。「これは…うまくてまずい」と苦り切った表情の久住さん。イカは美味しいのに雲丹は不味いということ?

 静まり返る一同。すると、表情一変、「美味すぎて酒がどんどんすすんじゃうってこと!これは美味すぎてマズイことになるぞ!」と笑顔の久住さん。懸念どおり地酒がどんどんすすんでいきます。

 会話もどんどんディープに。「僕の漫画はいわゆるグルメ漫画とは違う。『孤独のグルメ』であって『孤独にグルメ』ではない。『グルメ』には力点を置いていません。だから作り方や素材なんかのうんちくには興味がない。自分の漫画の主人公は、どこのお店に入って、何を食べるのか、自分で考える。それが一貫しています。お店の良さはほとんど大将と女将さんで決まる。それがなんとなく外までオーラのように出ている。それをどう感じるかだよね」。久住さんから”創作論”をさらっと聞き出せたのは居酒屋「M」のオーラのおかげです。

音楽家・久住さんが語る「ユーミンの衝撃」

 ほろ酔い気分で促されるまま駅前へ。なにやらあやしげな雰囲気の路地に至る。成人映画館の看板を見ながら、「なんで裸で吊り輪もってるの?こういうのって、注文から絵を描くまでいろんな人が絡んで出来てるはずだけど、どこかでおかしいってならないのがいつも不思議」とつぶやく久住さん。3軒目は焼肉「H」駅前店。ここは100円ビールで有名。さらに24時間営業。呑兵衛にとってはまさに食虫植物のように抜け出せなくなってしまいそうなお店です。生センマイやもやし炒めを注文。コーンバターがすこぶるウマかった。

 ミュージシャンとして「孤独のグルメ」の音楽などを手がけている久住さん。「若い頃、どういう音楽を聞いてました?」というベタすぎる質問に、「ユーミンが一番衝撃的だった。デビューアルバムのバックは、はっぴいえんどのメンバーが担当していたんだけど、当時、ボクが大好きだったはっぴいえんどは、世間的にはすごくマニアックでマイナーな音楽というイメージだった。でもユーミンの楽曲を彼らがアレンジして演奏したら、ものすごく斬新なポップになった。あ、日本の歌謡界が変わるぞ!って本当に嬉しくなった」と教えてくれました。久住さんは全国各地でライブ活動中。「地方でのライブは初回は動員など苦労するけど、良い演奏をすると必ず次に友達を連れてきてくれる。初めて聞いてくれたお客さんに、次はいつですか、と言ってもらえると嬉しいね。北九州でもライブしたいな」。

 結構呑んだなぁと思っていましたがまだ午後10時すぎ。もう一軒ぜひ、ということで旦過市場まで戻ります。魅力的な路地にあるカクテルバー「S」へ。生フルーツのカクテルで有名なお店です。お母さんおすすめのマスカットで作ってもらう。うーん濃厚!

 想像以上にアルコール度数も高くて、すっかり酔っ払ってしまう。このあと道向かいのソウルバー「G」ものぞいてみました。おしゃれなお店だけど、5軒目のはしごで長居はできず。後ろ髪を引かれる思いで、北九州市の旅、初日はすっかり酔っ払って終わりです。

●初日に訪問したお店情報
シロヤベーカリー 小倉店…小倉北区京町2-6-14/093-521-4688/8:00~20:00/無休
大學堂…小倉北区魚町4-4-20旦過市場/080-6458-1184/10:00~17:00/水日祝休
昭和館…小倉北区魚町4-2-9/093-551-4938/
平尾酒店…小倉北区紺屋町6-14/093-521-3268/12:00~21:00/日祝休
酒房 武蔵…小倉北区魚町1-2-20/093-531-0634/16:30~22:00(ラストオーダー21:45)/日祭休
白頭山駅前店…小倉北区京町2-4-6/093-551-0858/24時間営業/
カクテルバーしろ…小倉北区魚町4-2-3/093-521-9750/18:30~23:30(お客さん次第で延長有り)/日祝休
Music & Bar GAUDI…小倉北区魚町4丁目2-2/090-2851-6031/営業時間/店休日

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