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その日、英雄は”容疑者”になった。奇跡の生還劇に隠された驚きの真実
提供:ワーナーブラザース
2009年1月15日、米ニューヨークのラガーディア空港を離陸したUSエアウェイズ1549便。直後、鳥の群れに遭遇し衝突、両エンジンが完全停止した。制御不能に陥った機体のコックピットで、サレンバーガー機長は究極の判断を迫られた。ラガーディア空港へ引き返すか、それとも……。
上空850メートル。眼下には160万人が住むニューヨーク・マンハッタン。引き返しても、無事空港までたどり着くか。もし街中に不時着、ましてや墜落となれば、乗客乗員の命だけでなく、市民の甚大な犠牲も想定される。重力に引き寄せられるように急降下する70トンの機体。時間がない。機長は決断した。
「ハドソン川へ降りる。」
衝撃の実話『アメリカン・スナイパー』で自身のキャリア史上最大のヒットを記録したクリント・イーストウッド監督が次の題材に選んだのが、この『ハドソン川の奇跡』の生還劇に隠された真実。3度目のオスカー獲得を狙う主演のトム・ハンクスの初タッグを組み、早くも2017年度アカデミー賞最有力候補の呼び声が高い話題作だ。
乗客乗員155人全員生存を成し遂げたサレンバーガー機長。確かな経験に裏付けされた機長の決断は、一躍“英雄”として称賛されるはずだった――。しかしその究極の決断に掛けられる思わぬ疑惑・・・。本当にハドソン川への不時着以外の選択肢はなかったのか? 乗客たちの命を危険に晒す無謀な判断ではなかったのか? 事故調査委員会による厳しい追及は、機長を追い詰めていく。誰一人の命も失わなかった英雄が、なぜ容疑者になってしまったのか――。
驚くべきことに、映画で描かれるのはフィクションではなく全て実話。9月24日(土)の日本公開を前に、改めて機長の「究極のジャッジ」を振り返る。果たして、機長の判断は正しかったのか?
鳥の衝突によるエンジン破壊の衝撃は乗客も感じていた。異音、煙のにおい、阿鼻叫喚・・・当時の新聞記事には、上空で突如、命の危険に迫られた乗客の生々しい声が記録されている。
乗客は、サレンバーガー機長の冷静な呼びかけも記憶していた。
鳥の衝突、両エンジン停止から、不時着までわずか208秒。機長に逡巡している余裕はなかった。限られた時間の中で冷静に管制塔とやりとりし、衝撃に備えるよう、最低限の言葉で乗客に呼びかけた。
機体後部から着水した1549便はほぼ水平を保ったまま水上にとどまった。バランスを崩して着水すれば機体の大破、爆発、炎上のリスクもあった。前方の扉から両翼上に非難した乗客たちは、けが人はいたものの全員無事だった。ハドソン川に浮かぶ数々のフェリーが、マイナス6度の厳寒のなか、足を水面に浸し凍える乗客を救出した。機長は機内を確認し、最後に脱出したという。
1951年、テキサス州に生まれ、戦闘機パイロットを経て軍務に従事した後、エアラインパイロットになったベテラン機長、チェスリー・サレンバーガー。事故後、オバマ大統領の就任式に招かれた際にクルー全員の同行を依頼した話や、当時機内に携帯していた4冊の本を返せないことを地元の図書館に連絡した律義なエピソードも広く知られた。
そんな機長の「奇跡のジャッジ」を一体誰が裁くのか?
クリント・イーストウッド監督は「今回はフィクションではなく真実の物語なんだ。だから登場人物全ての人を再現することに力を尽くした。サリー機長の人間性をしっかりと描きたかったんだ」と話している。『アメリカン・スナイパー』で戦場という状況下における兵士の人間性を優しく見つめた巨匠が、その視点で新たに問いかける奇跡の裏側。9月24日、世界を震わす真実のドラマがついに幕を開ける。
9月24日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国で公開
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『機長、究極の決断 「ハドソン川」の奇跡』発売中
C.サレンバーガー著 静山社文庫刊