MENU CLOSE

エンタメ

155人を救った機長の「その後」 ハドソン川の奇跡、全員生還の真実

提供:ワーナーブラザース

米ニューヨークのハドソン川に不時着したUSエアウェイズ機と、主翼の上に避難する乗客
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved
米ニューヨークのハドソン川に不時着したUSエアウェイズ機と、主翼の上に避難する乗客
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved

目次

前代未聞の航空機事故、奇跡的に全員生還

あなたは覚えていますか? 2009年ニューヨークで実際に起こった、史上最大の航空事故を。“乗員乗客155名全員生存”という驚愕の生還劇を成し遂げた、チェスリー・サレンバーガー機長を――。

マンハッタン上空1000メートルで、とつぜん全エンジンが完全停止、制御不能となった飛行機をハドソン川に不時着させ、着水後も浸水する機内から乗客の避難を指揮したサレンバーガー機長。この奇跡的な事故は、「ハドソン川の奇跡」として当時世界中で大々的に報道をされ、冷静かつ的確な判断は下した機長は、国民的英雄として称賛。日本のメディアにも登場し、多くの人々に勇気と希望を与えてくれました。

監督イーストウッドと主演トム・ハンクスで、その真実を映画化

そして9月24日(土)、この事故を映画化した『ハドソン川の奇跡』が公開されます。監督は、2度のアカデミー賞®監督賞に輝き、世界中で大ヒットを記録した『アメリカン・スナイパー』を手掛けたクリント・イーストウッド。

クリント・イーストウッド監督
クリント・イーストウッド監督 出典: 朝日新聞社

卓越した判断力と操縦技術で155人の命を救い、「サリー」と呼ばれて親しまれる英雄・サレンバーガー機長を演じるのは、2度のアカデミー賞®主演男優賞を手にするトム・ハンクス。

主演をつとめるトム・ハンクス
主演をつとめるトム・ハンクス 出典: 朝日新聞社

映画の原作となったのはサレンバーガー機長の回顧録「機長、究極の決断『ハドソン川』の奇跡(Highest Duty: My Search for What Really Matters」(静山社文庫)です。

機長、究極の決断  「ハドソン川」の奇跡
機長、究極の決断  「ハドソン川」の奇跡 出典: 静山社

映画では、「ハドソン川の奇跡」の裏側で、機長の判断をめぐり国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われていた、知られざる真実に迫ります――。乗客乗員155人全員の命を救った決断の裏にあった葛藤や思惑とは? 『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』など、命や正義の意味について深いメッセージを発信する映画を生み出し続けている巨匠の最新作とあって、「奇跡」の「その後」の全貌が、どのように描かれるのか注目されています。

「ハドソン川の奇跡」緊迫の交信記録、4分間のやりとり全文

米連邦航空局は事故の翌月、操縦席と管制官らの約4分間の交信記録を発表しました。機長の声は落ち着いており、極限の状況でも冷静に判断を導いた様子がうかがえます。

■USエアウェイズ1549便と管制官らとの主な交信記録(時間はいずれも午後3時台)
27分36秒 1549便 あー、こちら、えー、サボテン1539。鳥が当たり、両エンジンの推進力を失った。ラガーディアに引き返す。
27分42秒 管制官 OK。ラガーディアに戻る必要がある。左旋回、機首を2-2-0に。
27分49秒 管制官 タワー(空港管制塔)、出発便を止めて。緊急事態で戻る便がある。
27分53秒 ラガーディア空港 だれ?
27分54秒 管制官 1529。えー、バードストライクだ。すべてのエンジンを失った。すべてのエンジンの推進力を失った。すぐに戻ってくる。
27分59秒 ラガーディア空港 サボテン1529か。どのエンジン?
28分01秒 管制官 両エンジンの推進力を失ったと言っている。
28分03秒 ラガーディア空港 わかった。
28分05秒 管制官 サボテン1529、もし確保できたら、1-3滑走路に着陸したいか?
28分11秒 1549便 できない。最後には、ハドソン川に向かうことになるかもしれない。
28分31秒 管制官 よし、サボテン1549。左になる。滑走路3-1への進路は。
28分34秒 1549便 できない。
28分36秒 管制官 OK。着陸に何が必要だ。
28分46秒 管制官 サボテン1549、左へ進路を取りたいなら、4番滑走路は利用可能だ。
28分50秒 1549便 どの滑走路も、確信が持てない。あ、右側のあれは何だ。ニュージャージーの何かだ。テタボロ空港かもしれない。
28分55秒 管制官 OK。うん、そちらの右下にあるのはテタボロ空港だ。
29分02秒 管制官 テタボロに行きたいか?
29分03秒 1549便 イエス。
29分05秒 管制官 テタボロ、ラガーディアの出発便が緊急事態で入ってくる。
29分10秒 テタボロ空港 OK。どうぞ。
29分21秒 管制官 サボテン1529、右旋回して2-8-0へ。テタボロの1番滑走路に着陸できる。
29分25秒 1549便 それはできない。
29分26秒 管制官 OK。テタボロのどの滑走路がいいか。
29分28秒 1549便 ハドソン川へ降りるつもりだ。
29分33秒 管制官 すまないが、もう一度言ってくれ、サボテン。
29分51秒 管制官 サボテン、えー、サボテン1549、レーダーから消えた。2時の方向、約7マイルにニューアーク空港もある。
30分09秒 他機 わからないが、彼はハドソンに向かうと言ったのではないかと思う。
30分14秒 管制官 サボテン1529、えー、まだいるか。
2009年2月6日朝日新聞夕刊社会面「『奇跡』の交信4分間 機長『ハドソン川へ降りるつもりだ』」

「生きていると感じた」日本人乗客男性が語る

不時着した航空機USエアウェイズ1549便に乗り合わせた日本人の会社員男性(当時36)は、目の前の危機への恐怖、極寒のなかでの極限状況とともに、機体の着水がいかにスムーズだったのか、当時の状況を取材にこう語っています。

焦げ臭いにおいが漂い始めたと思ったら、他の乗客たちが「火が出ている」と騒ぎ始めた。爆発するのでは、と不安になったが、テロとは思わなかった。

窓から、マンハッタンのビルが見え始め、高度が下がっていることがわかって頭の中が真っ白になった。前の座席に手をかけてかがみ込んだ。着水の瞬間まで、川へ降下しようとしているとは気付かなかった。
2009年1月17日朝刊朝日新聞社会面「搭乗の出口さん、衝撃少なく『生きてる』 浸水『沈むのか』 米航空機不時着事故」
着水の瞬間、意外にも、少々乱暴な着陸ぐらいの衝撃しか感じなかった。「現実の世界とは思えなかったが、生きていると感じた」。だが、本当の恐怖はそれからやってきた。

機体後方から、すぐに機内に水が入ってきた。足元がぬれ始める。機体と一緒に川へ沈むのか――。機内は大混乱に陥り、席を乗り越えて非常口へ殺到する乗客もいた。機外に出るまで、5分か10分ほどかかっただろうか。

ようやく主翼脇の非常口から出て、主翼の上で救助の順番を待った。ひざ近くまで水に漬かり、体はかじかんでいたが、助かったという実感がわいた。座席4人分ほどの小さなボートに20人ぐらいが乗り込んだ。結局、持ち出せたのは、財布と携帯電話だけ。愛用のパソコンは、川に沈んでいった。
2009年1月17日朝刊朝日新聞社会面「搭乗の出口さん、衝撃少なく『生きてる』 浸水『沈むのか』 米航空機不時着事故」
「機長には本当に感謝している。彼が判断を一歩間違えただけで、大惨事が起きていただろう」。
2009年1月17日朝刊朝日新聞社会面「搭乗の出口さん、衝撃少なく『生きてる』 浸水『沈むのか』 米航空機不時着事故」

機長の栄光と葛藤 映画「ハドソン川の奇跡」は9月公開

クリント・イーストウッド監督(右)と主演のトム・ハンクス©2016 Warner Bros. All Rights Reserved
クリント・イーストウッド監督(右)と主演のトム・ハンクス
©2016 Warner Bros. All Rights Reserved

2009年1月15日、厳冬のニューヨーク。160万人が住むマンハッタン上空1,000メートルで突如起こった航空機事故。全エンジン完全停止。制御不能。高速で墜落する70トンの機体。未曽有の大惨事を救った生死を分けた30秒。その時一体何が起きたのか――?
航空旅客機史上最大の非常事態の中、制御不能となった飛行機をハドソン川に不時着させ、“乗員乗客155名全員生存”という驚愕の生還劇に隠された真実を、常に映画を通して時代と寄り添ってきたイーストウッドならではの視点で突きつけるヒューマン・ドラマ。「全員生還」の裏で、実際にあったさまざまな葛藤や思惑を描く本作の公開が楽しみです。

映画『ハドソン川の奇跡』オフィシャルサイト。2016年9月24日(土)公開

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます