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「転売ヤーの顔見たことない」スイッチ2発売日、秋葉原で直撃したら

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「ガチの転売ヤーは、秋葉原の買い取り業者に持ち込むよ」――。任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」(スイッチ2)の発売でも話題になった、「転売」。安く仕入れて高く売る「せどり」をする男性から、そう聞いた記者は東京・秋葉原に向かいました。(朝日新聞記者・堅島敢太郎)
「転売ヤーの顔って見たことないな」
自宅で風呂上がりにふと思いました。
ちょうど、任天堂の「スイッチ2」の発売日(6月5日)が1週間後に迫っていた時でした。
社会の様々な物が転売ヤーの餌食となり、批判の声は絶えません。でも、彼らはどんな人で、どんな転売が違法なのだろうという疑問が浮かびました。
取材を始め、弁護士や経済学者のほか、「電脳せどり」と呼ばれる手法で、月数十万円稼ぐ男性にも話を聞きました。
男性がやっているのは、まず猫の餌などを通販サイトで割安に買う。その後、その商品を、より高値で取引されているサイトで転売し、利益を出すそうです。
よく考えると、買ったものを売る行為は、市場経済そのもの。卸売業者とまったく変わらないし、男性のせどりも合法です。
行商がより「流通量」の少ない地域に商品を運んだように、転売ヤーは「情報量」の少ない消費者のもとへ運び、利益を出していることになります。
スイッチ2は、任天堂が大手フリマサイトと協力し、不正出品対策が強化されました。
ただ、男性は取材の最後に教えてくれました。「ガチの転売ヤーは、秋葉原の買い取り業者に持ち込むよ」
ならば行くしかない――。スイッチ2の発売日に6時間、買い取り業者3店舗の前で取材しました。
スイッチ2を持ち込んだ人に、店を出たところで声をかけます。金額、入手経路、何よりスイッチ2が本当に欲しかったのか知りたかったからです。大半は無言で足早に去りました。
そんななか、台車を使って段ボール箱を持ち込む男性がいました。店を出たところで話を聞くと、「10台を転売した」と話してくれました。
この店での買い取り額は、国内専用版で5万5千円。希望小売価格の4万9980円(税込み)を、約5千円上回ります。ただ、男性は利益は出ていないと説明します。
では、なぜ転売するのか……。男性は、クレジットカードの決済額を増やし、付与されたポイントを航空会社のマイルに交換するのが狙いだと明かしました。
備蓄米にマンションと、転売が世間をにぎわし続けます。今後も売り手や買い手の交錯する思いに迫りたいと思います。