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警備バイトとお笑いの共通点 ハナイチゴ関谷「仲が良い」の相乗効果
建設現場が「やりやすい」理由
新星男女コンビとして注目を集めるお笑いコンビの「ハナイチゴ」。出演するバラエティー番組も増え、「売れっ子カウントダウン」に入っているようにもみえますが、女性の関谷友美さんは今も、建設現場の警備員バイトをしています。「実はライブやバラエティー番組にも共通していることがある」と語る関谷さんに、バイトを通して得たことや、今後の夢を語ってもらいました。(ライター・安倍季実子)
ハナイチゴは、普通なら直接本人に言えないこと(ツッコミ&毒)を互いに言い合う芸風で、存在感を放つ男女コンビです。
芸歴16年目になる関谷さんは、今年の夏に15歳年下の男性と結婚したばかりの新婚さんで、『有吉ジャポンⅡジロジロ有吉』(TBS)では、関谷さんが結婚式に向けてダイエット合宿に挑む企画回も放送されました。
『ツギクル芸人グランプリ』(フジテレビ)や『にちようチャップリン』(テレビ東京)などのバラエティー番組に出演する一方で、月に15本前後のライブにも出演しています。新ネタも、月に1~2本を作っているそう。
そんな、売れっ子芸人への階段を一歩ずつ上がっている関谷さんですが、実はいまも交通誘導の警備員アルバイトを続けているといいます。
バイトを始めたきっかけは、それまでやっていた介護のバイト中に腰を痛めてしまったため。
「ギックリ腰になって、ライブに出られなくなってしまったんです……。それで、一年ほど前に、事務所の後輩のまりんかちゃんに紹介されて、警備員のバイトをはじめました」
バイトは週に3~4日、勤務時間は朝8時から夕方5時まで。1日1万円の日給制で、平均的な収入は12~14万くらいだといいます。
「朝6時に起きて7時に出勤。8時に現場に着いて、5時までバイトして帰宅します。その後は、ネタ合わせをしたり、ライブがあればそちらに向かいます。ただ、現場作業が早く終われば、警備も早く終了するんで、たまに昼過ぎに終わったりすることもあるんですよ」
建設現場に入るトラックを誘導したり、一般車道を走る車両を誘導したり、歩行者に注意を促すのが仕事です。
「建設現場が、道の突き当りや車両の流れが少ない道沿いにあると仕事もしやすいんですが、大きな通り沿いなどの場合は、工事・車道・歩行者全方位に、常に注意を向けていないといけません。なので、バイト初日は要領がうまくつかめず、めちゃくちゃ苦労しました……」と話します。
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— 関谷(ハナイチゴ) (@cobrasekiya) August 28, 2021
リアルベイマックス🤖 pic.twitter.com/1cRtfKlvwU
仕事に慣れるまでには個人差があるそうですが、関谷さん自身は1カ月ほどで何とか一人前になれたといいます。そこには、関谷さんの努力はもちろん、人間関係や周囲の協力も大きかったのだそう。
「私が所属する警備会社には、同じ太田プロの芸人がたくさんいるんで、色々と心強いですね。はじめは工事現場の職人さんたちに対して怖いイメージがあったんですが、話しかけてみたら意外にみなさん優しくて。優しくて真面目で、シャイな方が多いんだと思いました。それに女性が少ない業界だから、親切にしてもらえることも多くて、私的にはとてもやりやすいですね」
一方で、煙たがられる存在だと付きつけられることもあると関谷さん。
「近所の方から、『うるさいんですけど』『いつ工事終わるの?』って聞かれたり、休憩中に寄ったお店で冷たい態度を取られたりすることがあります」と話します。
「警備員の制服を着て、建設工事が安全に進むために仕事をしているだけなのに…。長く働いている人に聞くと、昔は勤務態度などの悪い人が多くて、警備員に対する当たりは、もっとひどかったそうです。その頃に比べたら当たりはマシになってきているようですが、やっぱり悲しいですよね……」
時代が変わり、働く人も業界も真面目になりつつあるのに、世間では依然として警備員へのマイナスイメージを持たれていると感じるそうです。「いま働いている人たちをちゃんと見てほしい」というのが、関谷さんの願いです。
しかし、悪いことばかりではありません。
「たまにですが、近所の方から『ご苦労様』『頑張ってね』と声をかけてもらうことがあります。現場の近くに、休憩用のテーブルと椅子を用意してくださる方もいました。はじめから悪いイメージを持たずに接していただけると、やっぱり嬉しいです」
警備員のアルバイトを経験して、ひとつお笑いと共通していることに気づきました。
「『そっち車が通るよー!』とか『今日の機材(車)は、あと何台だよー!』とか、お互いに声をかけ合う現場って、すごく雰囲気がよくて、いい仕事ができるし、早く終わることが多いんですよ。建設現場って、大工さん、荷揚げ屋さん、外装さんとか、いろんな職種の人が一緒に働くんで、協力し合うのが当たり前なんです。建設現場のバイトを始めて、これはライブやバラエティー番組にも共通しているなと思いました」
ライブにもさまざまな事務所から芸人が集まります。
「仲のいい芸人が多い場合は、楽屋に入った時からすでに楽しいですし、もちろんライブ自体も盛り上がります。でも、そうじゃない場合は、ぎくしゃくした空気の中で本番に入って、そのまま終わってしまうこともあるんです」
今のお笑い業界は、コンビ仲の良さが求められることも多々あります。仲が良ければ自分たちも楽しいし、見ている方も楽しい。「仲がいい」には、いろいろな相乗効果や副産物を生むのかもしれないと考えているそうです。
そんな関谷さんには、ひとつの夢があります。
「バイト仲間の芸人とライブで会った時に、『最近バイト入れてないんだよね』と言って、わざとマウントを取るやりとりがあるんです(笑)。それを言われると『悔しいー!』と思うんですが、『自分たちも頑張らなきゃ!』って思えるんです。だから、私も早くライブの時に『最近、全然バイト入れないわ~』って言いたいです(笑)」
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