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ワクチン集団接種会場に立正佼成会施設 珍しい決断の理由を聞いた
「宗教法人だから、とかは……」
全国的に始まりつつある、新型コロナウイルスの高齢者向けワクチン集団接種。その会場は各自治体で確保しますが、17日から始まる東京・杉並区の会場が異色で話題となっています。そこは、宗教法人・立正佼成会の本部施設。他にあまり例がない、宗教法人による協力の理由を聞きました。(北林慎也)
杉並区は17日から、高齢者向けの新型コロナワクチン集団接種を始めます。
65歳以上の区民約13万6千人を対象に、区内5カ所に特設会場を確保しました。
区の会場案内リストには、梅里のセシオン杉並や天沼の旧若杉小学校体育館といった区の施設に交じって「立正佼成会法輪閣」とあります。
和田の環七沿いに本部を構える宗教法人・立正佼成会。その敷地内にある教団建物「法輪閣」を指します。
ここの第五会議室と隣接の地上駐車場が、集団接種会場として教団から区に貸し出されることになりました。
この貸し出し決定を巡ってはSNS上でも、宗教にまつわるニュース投稿とリプライの中で話題となりました。
こうした歓迎の声に加えて、他の宗教団体関係者や信者らからは「自分たちもやるべきだ」といった反応もありました。
立正佼成会によると、大ホールなどを備える法輪閣は教団の集会などに用いられ、このうち広さ約700平方メートルの第五会議室が接種会場となります。隣接する地上駐車場と併せて11月30日までの長期にわたって貸し出されます。
今回の貸し出し決定は、杉並区からの申し出によるものです。区に経緯を聞いてみました。
もともと区の施設を優先して活用する方針でしたが、区の南東部には適した場所がなく、貸し出しを打診したそうです。
宗教法人の会場提供は珍しいようだが? との問いには、「宗教法人だからどうとかはあまり関係なく、フラットにお声掛けさせていただいた。他の会場には用意していない駐車場もあるので、協力は大変ありがたい」としています。
また、立正佼成会が母体の佼成学園高校はアメリカンフットボールの強豪校で、活躍のたびに区の広報誌が取り上げたり、本部施設一帯を大規模災害時の広域避難場所に指定したりするなど、日頃から良好な関係が築けているのも背景にある、とのことでした。
あらためて立正佼成会に、貸し出しを決めた理由を聞きました。
立正佼成会では「法華経を経典とする在家仏教教団として、会員一人ひとりが日常生活の中で教えを生かし、社会の一員として役立つ」ことを目指しているとのこと。
さらには日々の「ご供養」の中で「国内および世界における新型コロナウイルス感染症の早期終息」を祈願していて、その趣旨に照らした判断として、無償での貸し出しを決めたそうです。
立正佼成会は宗教団体には珍しく、以前から積極的に教団施設を一般向けに開放してきました。
なかでも、現在は取り壊されて芝生広場になっている普門館は、長らく全日本吹奏楽コンクールの会場として使われ、「吹奏楽の甲子園」として親しまれていました。
会場貸し出しに対するSNS上での反響については、「(今回の判断が新型コロナウイルスの)早期終息に向けた一助となり、区民の皆さまの安心や喜びにつながっているのであれば、大変ありがたくうれしい」としています。
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