地元
ゴールできたら「ティファニー」 走り切る理由がありすぎるマラソン
フルマラソンを一生に一度は走ってみたい。ぼんやりと思っていた目標とも言えない夢をかなえるのにぴったりな大会が見つかりました。3月10日に開かれる名古屋ウィメンズマラソンです。完走すれば「ティファニー」が手に入ります。ほかにも盛りだくさんの「おもてなし」は、レース後半の弱った心を奮い立たせてくれそうです。
大会を知ったのは数年前、友人が出場したことでした。
「フルマラソン走ってティファニーをゲットしてくる」。そう言っていた彼女が、弾ける笑顔で完走した姿をSNSで眺めていました。自分との闘いというストイックなイメージがありましたが、こんな風にわかりやすくニンジンをぶら下げてもらえる方が頑張れそう。
そんな記憶も薄れかけた昨年4月、名古屋への転勤が決まり、挑戦を決めました。
来年の東京五輪へつながる大会として、トップ選手の順位にも注目が集まる大会です。2万人以上が走る世界最大の女子マラソンとして、ギネス世界記録に認定されています。
前身は名古屋国際女子マラソン。2012年に現在の大会名に変わり、市民ランナーも参加できるようになりました。
「ティファニーがもらえる」ことしか頭にありませんでしたが、調べてみると、他にも「おもてなし」が出るわ出るわ。走り切る理由がありすぎる大会でした。
肝心の「ティファニー」というのは、完走者に贈られるティファニーのオリジナルペンダントのこと。毎年、違った花のモチーフが刻まれています。
他にも完走するとメナードの化粧品、「薬用ビューネ スパシャワー」。スポーツブランド、ニューバランスのオリジナルTシャツがもらえます。完走できなくても、参加賞としてメナードの美白美容液などのサンプルセットがあります。フルマラソン経験者に聞いてみると、かなり特典が充実していると言えそうです。
参加賞もあるとはいえ、完走するのと、しないのとでは大違い。何が何でもゴールへたどり着こう。意欲が湧いてきます。
おもてなしは、まだまだあります。
ゴール直前のテントには、鏡とティッシュを備えたお直しコーナーが。最高の状態でゴール写真に納まりたい方のための場所です。ゴール地点の写真スポットも用意されています。
「タイムを求める人と、完走をめざして楽しく走りたい方がいる大会。どちらの方にも満足してもらえるよう、試行錯誤を続けています」と事務局担当者は話します。
「自分自身が輝ける、それぞれの楽しみ方をしていただきたいです。それがマラソン文化を育てることにつながると思います」
当日のおもてなしを引っ張るのは、ゴール地点で待つ「おもてなしタキシード隊」です。
300人以上の応募の中から選ばれた20~60代のタキシード隊50人が、ティファニーのペンダントを完走者に贈ります。
疲れ切って体もボロボロであろうゴール地点に待つタキシード姿の集団。知らずに走っていたら面食らっていたかもしれません。タキシードのような正装が必要なところに行ったこともありません。完走できるかもわからないゴール後のことが心配になってきました。考えすぎなのはわかっていますが、念のためタキシード隊のメンバーに話を聞いてきました。
タキシード隊の一人、会社員の田畑雄太さん(26)は、昨年初めてタキシード隊のメンバーとして参加しました。
生まれも育ちも名古屋。タキシード隊の存在は知っていましたが、自分が出るとは考えたこともありませんでした。母親に「出てみなよ」と言われたことで「生まれ育った名古屋に、ボランティアで貢献できたら」という思いになります。
参加する前は「笑顔でおもてなしする人」というくらいのイメージでした。
実際にゴール地点に立つと、見えたのは完走して疲れ切った表情を浮かべるランナーたち。一人ひとりに「お疲れさまでした」と笑顔で声をかけると、その瞬間に相手の表情も明るくなりました。
「疲れた心を満たすことが、やるべきことなんだ」と、今まで感じたことがないようなやりがいを感じました。「数十秒で表情が変わる瞬間を何度も目にするんです」と、魅力を教えてくれました。田畑さんは今年もゴール地点に立ちます。
「人に感謝され、自分自分の満足度も高かった。頑張ってよかったと思ってもらえるように、おもてなしします」
取材する前から薄々気づいていましたが、やはり考えすぎでした。自然体でいれば大丈夫。「自分自身が輝く」。この言葉を胸に、つらくなったら数々のおもてなしを頭に浮かべて完走をめざします。
1/13枚