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#45 城崎広告「会社員のモヤモヤ」

社員旅行って昭和? うちの会社はどうする! 六花亭の例を見ると…

目次

サラリーマンの日々をキャラ化した「城崎広告」のメンバーが日頃感じている疑問を、withnews編集部がフカボリ取材する「会社員のモヤモヤ」。44回目は「社員旅行」についてです。
城崎広告
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今回の登場人物

猫渕渉
42歳の企画部部長。長年の経験で築いた人脈とそつのない仕事ぶりに定評あり。趣味は読書、お酒、料理。

 

菅原数臣
37歳の事業推進部部長。経理担当として経験豊富なうえ、ソフトウェア分野にも精通。趣味は数学、ミルクパズル、資産運用。

 

千歳原教次
40歳の営業部部長。経験豊富で、他人に厳しく自分にはより一層厳しい。趣味はオーディオとバイク。

 社員旅行というと、ベテランのビジネスパーソンほど良い印象を持っていない人が多いかも知れませんね。昔はどの会社も当たり前のように実施していた一つの「行事」のようなものでしたが、2000年台前半を境に一気にやる会社が減りました。
 それがここにきて、スタートアップの若い企業が実践する等、また注目が集まり始めています。

 

猫渕

最近の社員旅行は昔とだいぶ変わってるみたいなんだよね。

 

菅原

社員の福利厚生としては費用対効果に疑問があるといった風潮もあったように思いますが、それは興味深い変化ですね。

 

千歳原

社員旅行か……ならば、今回はこのテーマについて取材いただくというのはどうでしょうか?
 賛否両論の社員旅行…ウチの会社はどうするべきなのか?
 千葉商科大学国際教養学部専任講師(労働社会学)で、働き方をテーマに執筆や講演をする常見陽平さんに話をききました。
常見陽平さん
 

社員旅行が変わってきている

 

菅原

本日はよろしくお願いします。

 

千歳原

さっそくですが、最近、新しく若い企業で社員旅行が注目されているという話をきき、正直驚いています。

 

猫渕

昔は定番だったけど、評判はいまいちだった印象がありますね。

 

常見

社員旅行は想像通り、少し前の社員にとってもうれしいものではありませんでした。
職場の人間関係が旅行先でも続くと思うと、気が抜けない人の方が多いのは当然でしょう。

 

菅原

猫渕さんとや千歳原さんはそういった社員旅行の経験があるのでしょうか。

 

猫渕

うん、そうだね……ぼくが新人だった頃とか……まあ、若手は気を遣うしかないしね。

 

常見

そのような心理的な負担とあわせて、会社への経費負担の重さもあって、バブル期をピークに減少していました。

 

千歳原

社員全員で旅行となれば経費負担はもちろん、勤務時間に換算するとかなり負担が大きくなりますね。

 

常見

しかしながら、ここ数年増加傾向にあります。
理由としては多様な人が企業に入ってくるようになったことが一つの要因ではないでしょうか。

 

常見

新卒以外の中途採用等が増えたことにより、キャリア形成や文化の違いによるチームビルディングを必要とする企業や組織が増えてきました。

 

菅原

かつての日本企業は比較的均質な企業戦士で構成されていましたから、社員の多様性が増したことは企業文化にとって大きな変化となりえます。

 

猫渕

いろいろな個性が混ざり合うチームになるために特別な工夫が求められるようになってきたということかな。

 

千歳原

なるほど。もともと社員旅行は福利厚生の意味合いでとらえていましたが。

 

常見

バブル期の目的は、「リフレッシュ」の色が強い傾向がありました。
典型的なパターンですと、温泉地に行って宴会場を貸し切りにして宴会をするというイメージですね。
社員旅行の風景 静岡・熱海にて
社員旅行の風景 静岡・熱海にて 出典: 朝日新聞社

 

猫渕

ええ、身に覚えがあります。
宴会で要求される宴会芸がまた……古傷に触れるのはやめておきます。

 

常見

心中お察しします…

ただ、最近は特に「研修」や「教育」といった目的を持つようになり、組織単位でまとまった時間を確保できる社員旅行という形が注目を集めるようになってきているのではないかと思います。

 

菅原

研修や教育の意味合いを持つ社員旅行ですが。
ぜひ具体的なお話をきかせてください。

六花亭の社員を優遇する取り組み

 

常見

少し変わった取り組みをしている企業で、マルセイバターサンドで有名な「六花亭」の事例をご紹介させていただきます。
六花亭 マルセイバターサンド
六花亭 マルセイバターサンド 出典: 朝日新聞社

 

千歳原

北海道土産の定番ですね。
どういった取り組みをしているのでしょうか?

 

常見

六花亭では、行きたいコース、目的を企画して仲間を募り、6人以上集まれば社内旅行として成立します。会社から旅行費用の70%(年間20万円まで)が補助金として支給されます。

 

常見

有給休暇や休日を利用する社内旅行、遊ぶときはとことん遊び、リフレッシュしているそうです。

 

猫渕

社員が主体的に企画して、会社はその費用をサポートするんですね。たしかに面白い取り組みだなぁ。

 

常見

社員が自主的に「研修」にも「リフレッシュ」にも活用することができるようになっています。社員を大切にしている企業ならではの取り組みだと思います。

 

菅原

自主性を活かすことで、従来の社員旅行にありがちな「押し付けられるイメージ」を払拭し、真に意義あるインプットの機会とすることができるというわけですね。

 

常見

また、社員旅行とは毛色が少し違いますが、日本航空では2017年から「ワーケーション」という働き方を推奨しています。
ワーケーションとは仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、国内外のリゾート地や帰省先、地方などでテレワークで業務を行うことです。

 

千歳原

それも興味深い取り組みですね。
いつもとは違う環境で取り組むことで、新たな価値創造につながるかもしれません。

 

常見

休暇先や旅先で仕事をするという新たな働き方により、早朝や夕方以降の時間を社員が自由に過ごすことで、業務への活力につなげることが狙いとのことです。

 

猫渕

まさにリフレッシュのためのアイデアですね。

社員旅行は「目的」を明確に

 

常見

では、いろいろな形がある社員旅行、やった方がよいのでしょうか?やらなくてもいいのでしょうか?

 

菅原

本日伺ったお話をふまえると、お仕着せの社員旅行から脱却することで、意義や可能性を見出せるように思います。

 

常見

私は「目的」を明確にして実施することをおすすめします。例えば「コミュニケーションの活性化」「組織の活性化」だったり、「リフレッシュ」に振り切ってもいいと思います。

 

千歳原

紹介いただいた2つの取り組みも目的が明確にされていますね。

 

常見

社員旅行のメリットは、目的によっては様々な組織の課題が解決できるという点と併せて社内の「インフォーマルな関係」を作ることができるという点だと思います。

言い換えると仕事以外の接点を作ることができるということです。

 

猫渕

その点は、うちの場合はコンパクトだから結構交流の機会は増えた気がするな。
でも、大切な視点だよね。

 

常見

これによって、コミュニケーションが活性化するだけでなく、社内の人材資源の再発見をすることができます。中途採用で探そうと思ってスキルや知識を持っている人が実は社内に居た!というのは、実はよくある話です。

 

常見

また、組織によってはあまり活躍できていない人が、刺激を受けることや、これをきっかけに異動することで活性化することもあったりします。

 

菅原

通常業務では発揮されないスキルや知識、個人の興味や強みの発見につながれば、会社にとっては価値ある投資となりますね。

 

常見

ただ、忘れないでいただきたいのが実施にあたっては「楽しめるかどうか?」という点です。
最悪目的が達成できなくても楽しければ参加者にとって有意義ですが、つらい旅行になると典型的な「昭和の因習」に逆戻りしてしまいます。

 

猫渕

そうですね、ぼくたちが勝手に決めても、若手はつらいかもしれませんよね。
それでは意味がないです。

 

千歳原

具体的に検討することがあれば、社員の意見を積極的に集めましょう。

 

常見

しっかりと目的を定めた上で、ただ忌み嫌うのではなく「社員旅行」というツールも楽しく使いこなしていってください。

 

菅原

ありがとうございました。
すぐに、ということは難しいかもしれませんが、城崎広告でも今回のお話をふまえて検討してみます。

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