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敵前逃亡?「歴史的取組」が伝えた相撲道“自分に挑んで自分に勝つ”
力士が自ら負けを選んだ? 大相撲秋場所で式秀部屋の序ノ口力士・服部桜が繰り返した敗退行為がネット上で話題になりました。対戦相手への恐怖心を率直に語った本人。相撲が好きで好きで、自ら部屋の門をたたいた新米力士に、師匠の式秀親方は「自分に挑んで自分に勝つのも相撲」と語りました。「相撲史に残る取組」を振り返ります。
問題となったのは3日目の取組。服部桜が九重部屋の錦城と対戦した一番でした。服部桜は最初の立ち合い直後、両手を前についてしまいました。
やり直しとなった2回目は前へとダイビング。3回目には、後方へと尻もち。いずれも相手には当たらずにです。4回目にようやく引き落としで敗れました。
問題の取組がネットで話題になっていることについて、本人に真意を聞きました。
「部屋に帰って自分の取組の動画を見て、来てくれたお客さんに申し訳ないと思った」
そして、表情を崩さずに対戦力士への恐怖心があったことを話しました。
服部桜は神奈川県出身。小学校の時から相撲好きで、大相撲を見に行ったときに現役だった式秀親方(当時は北桜)と記念写真を撮ったといいます。
中学時代は陸上部で長距離をしていましたが、下半身強化のために四股を踏んだり、すり足をしたりしていると、相撲をしたいという思いが芽生えてきたといいます。
中学卒業後に、角界入りへの思いを抑え切れなくなり、茨城県龍ケ崎市にある式秀部屋を単独訪問し、入門を「直訴」したほど。行司や呼び出しではなく、力士として勝負する意志は固かったといいます。
2015年の9月に式秀部屋に入門、新弟子検査では基準に満たない体重を補うため、ペットボトル2リットルをがぶ飲みし、なんとか合格。11月の九州場所で序ノ口デビューを飾りました。相撲経験がなく、全く勝てませんでしたが、夏場所で待望の初勝利をあげました。
服部桜に相撲への思いを聞いてみると、「こうやって本場所の土俵に上がるのが楽しい」。今後の課題について、60キロ台しかない体重を70キロ台に増やすことをあげました。
秋場所13日目は師匠の式秀親方は審判として服部桜の取組を見守りました。
物議をかもした3日目の取組について、「相手にあたらないのは相手にもお客さんにも失礼。自分の弱さが出てしまった。ああいう相撲を取ったら休場させるぞと言ったら、本人は『二度とこういう相撲を取らない』と誓っていた」と語りました。
最後に式秀親方が語ったのは「相撲道」についてでした。
「相手に勝つのも大事だが自分に挑んで自分に勝つ。それは上位の力士でも下位の力士でも変わらないこと。服部桜は序ノ口の力士でも一番弱い力士だが、去年よりも成長している。次の挑戦に向けて頑張って欲しい」
秋場所最後の取組、服部桜が土俵に上がると、「服部!」「服部桜!」「がんばれ!、がんばれ!」と、観客がまだまばらな国技館から声援も上がっていました。
ただ勝負は一瞬でつきました。立ち合いで元三段目の琴誠剛に突かれると、身長180センチで体重が60キロ台の服部桜は土俵上にひっくり返ってしまいました。
「格上の相手で以前の対戦でも一瞬でやられてしまった。もろ手で当たろうと思っていたが」と力負けを認めた服部桜。今場所は0勝7敗で終えましたが「一つでも上の番付を目指したい」と話していました。
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