お金と仕事
パチンコ店、謎の「ネタ花輪」 春はあげぽよ・梅雨だく・斬暑…
「カープ上司 多分、ワリカン」--。店の前に並ぶ花輪のユニークさで、他の追随を許さないパチンコ店が北九州市八幡西区のJR黒崎駅前にある。
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「カープ上司 多分、ワリカン」--。店の前に並ぶ花輪のユニークさで、他の追随を許さないパチンコ店が北九州市八幡西区のJR黒崎駅前にある。
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「カープ上司 多分、ワリカン」「ANAの往きの情報 福岡空港にて」--。店の前に並ぶ花輪のユニークさで、他の追随を許さないパチンコ店が北九州市八幡西区のJR黒崎駅前にある。
歩道に面して立つ花輪30本ほどの垂れ幕には、定番の「祝開店」「祝リニューアル」でなく、独自のしゃれやジョークが毛筆調で書いてある。流行、時事、季節、実話、豆知識、パチンコの機種などジャンルを問わない。イラストで表現したものもある。立ち止まって撮影する人も少なくない。パチンコ雑誌には「読む者を置き去りにしかねない」と〝称賛〟された。
1951年開店の老舗「太陽会館」。花輪は原則として月1度、何本かずつ新作に差し替える。渡辺俊一社長(55)は「暇つぶしになればうれしい。お客さんに来てもらうことは全く目的にしていない」と話す。始めたのは2007年ごろ。元は定番の花輪だったが、「他店と同じではつまらない」「店の前にあるバス停で待つ人を笑わせよう」という反骨心とサービス精神からだった。
ネタは当初は社長一人で作っていたが、数年前からは約30人の従業員全員で考えるように。1回の締め切りに20~60本のネタが集まる。渡辺社長が全てに目を通して採用するネタを決める。必要であれば筆を入れる。採用が10本を超えることもあれば2、3本しかないことも。「賞はない代わりにノルマもない」と利光正夫店長(52)。「最初は『変だね』と言われてたが、今は『面白いね』に変わった。継続は力なり」と話す。
従業員はほとんどが20~30代。5歳下の〝天然〟な妹の言動にヒントを得たシリーズを持つ石坂唯奈さん(28)は「頑張ってどうにかなるものじゃない」。ひらめかない時は紙に単語を書き散らしてうめくという。電車の中やファミレスなど日常生活の実話ネタを得意とする勝木秀信さん(37)は「自信があるネタに限ってだめ」。短く描出するのが今の課題という。
映画「アナと雪の女王」の主題歌の替え歌を花輪3本の連作に仕立てた梅津和泉さん(27)は「楽しんでやっている」と話す。お客から「あの花輪はどういう意味?」と尋ねられることもしばしばそうだ。久木山敦哉さん(23)は独身なのに妻子持ちの哀愁を表現する。「自分のネタが選ばれたらうれしい」。自宅でパソコンに向かって集中してひねり出すという。
記者(44)も志願してネタを二つ提出したところ、中学時代の思い出を描いた一つが採用された。「ピッコロ!またクロキュラー食べたやろ!」は落選した。ピッコロはマンガ「ドラゴンボール」のキャラクター、クロキュラーは昭和50年代に販売されていた、食べると舌が青紫になるロッテのアイスだ。
店内の垂れ幕や折り込みチラシにもネタがあふれる。花輪ネタの作品集を自主出版する案もあるという。渡辺社長は「ここまで長く続くとやめられないし、やめないぞ!という気持ち。常によどまないように、とどまらないようにしたい」と話す。