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マンガ

憧れの「店」でかたまる少女「地元と違う」 失意を笑顔に変えたのは

漫画「ふたりのパーラー」の一場面。
漫画「ふたりのパーラー」の一場面。 出典: 稲空穂さん提供

憧れのスイーツを食べに、お小遣いを貯めて街へ〝背伸び〟をして行ったのですが……。〝おやつ〟をテーマにした短編集が、SNSで「友人とドキドキして上京した日を思い出す」などと共感を集めている漫画家・稲空穂さん。漫画「ふたりのパーラー」に込めた思いを聞きました。

ふたりのパーラー

漫画「ふたりのパーラー」の一場面。
漫画「ふたりのパーラー」の一場面。 出典: 稲空穂さん提供

「一杯を二人で飲もう」

70代の女性・布由子は、若い友人に「スイーツビュッフェに行こ」と誘われ、学生時代に親友・サチコと行ったフルーツパーラーのことを思い出します。

1960年代後半、地方住まいのサチコは雑誌で見た「フルーツパーラーのプリン・ア・ラ・モード」に憧れて布由子を誘いました。ふたりは少ないお小遣いをため、休みの日に電車に乗って街へ出かけます。

到着したパーラーは、まぶしいほどに豪華でした。けれど、メニューに並ぶ値段を見た瞬間、ふたりは息をのみます。地元では通常一杯50円のコーヒーが200円。プリン・ア・ラ・モードはなんと500円!

想像以上の高さにふるえるサチコを見て、布由子は一番安い100円のミルクを頼み「一杯を二人で飲もう」と励ましました。帰りの電車の中、おなかをすかせたサチコに布由子は自作の豆菓子を取り出して渡します。「…おいしい?」「とってもおいしい!」二人は笑い合いました。

時が流れ、布由子は年をとり、サチコはすでにこの世を去っています。それでも布由子の心の中には、あのときの笑顔が生き続けていました。布由子は若い友人にもそっと豆菓子を取り出し、やさしく微笑むのです。まるでサチコが隣にいて、「おいしい!」と言ってくれるように。

背伸びをしたあの頃

誰もが「あるある」と思い出してしまう〝背伸び〟した思い出。作者の稲空穂さんも、自身の中学生時代を思い返します。

「私は中学生の頃、卓球部に所属していました。学年や季節、戦績などはすっかり忘れてしまいましたが、大会があり、試合後、その日はいつもの学区とは違う、駅の近くで現地解散となりました」

自宅周辺とは違う、おしゃれな雰囲気の街並みに圧倒されそうになりつつも、「自分もこの街を歩く大人の仲間入りをしたような気分になり、浮かれ気分で友人と二人、卓球のユニフォーム姿のまま駅の地下にある喫茶店へ入りました」といいます。

ところが、メニューを開いてびっくり。思っていたよりずっと高かったのです。

「『飲み物でこの値段!?』と心の中で叫びながら、自分の未熟さを痛感しました」

「卓球のユニフォームを着た中学生が、喫茶店で一番安い飲み物を頼んでいる光景――今思い返すと顔から火が出そうですが、決して忘れることのできない思い出です」

稲空穂さんのXがこちら

書籍「特別じゃない日」の第1集はこちら

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withnewsでは毎月、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。

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