話題
「自殺企図」で初診の子、コロナ禍前の2倍超 体験の乏しさ影響続く
「あのときできなかった分、これからまた体験を一緒にしていこう」
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「あのときできなかった分、これからまた体験を一緒にしていこう」
「自殺企図」を理由に病院を訪れた、19歳未満の患者数がコロナ禍を経て約2.3倍になったと、国立成育医療研究センターが発表しました。調査に参加した医師は「コロナ禍では、不安な気持ちの対処法を獲得するための経験が足りなかった」と指摘します。
国立成育医療センターが中央拠点病院となっている、こども家庭庁の「こどもの心の診療ネットワーク事業」では、新型コロナウィルス禍の子どもの心にまつわる調査を実施しました。
調査対象は、コロナ禍前の2019年度から、2024年度までの6年間。全国31の病院を訪れた、希死念慮・自殺企図の初診外来患者数と新たに入院した患者数と、極端な食事制限と著しくやせた症状のある「神経性やせ症」の初診外来患者数と新入院患者数について集計しました。
31の病院は、事業に参加もしくはオブザーバーとして協力している、子どもの心の診療に取り組んでいる病院。対象は19歳以下の男女です。
調査項目すべてにおいて、コロナ禍前の2019年度を下回った数字はありませんでした。
特に、自殺企図の初診外来患者数は、2019年度で36人だったのに対し2024年度は82人となり、約2.3倍になっています。
調査に参加した千葉大学医学部附属病院こどものこころ診療部長代理の佐々木剛さんに聞きました。
――神経性やせ症の初診外来患者数は、コロナ禍前の2019年度は203件だったのに対し、コロナ禍に入ってからは2021年度に323件。直近のデータである2024年度は297件。いまもコロナ禍前を上回っていますね。「新型コロナウイルス感染症流行下の子どもの心の実態」を調査する上で、神経性やせ症にも注目して調査した理由を教えてください。
コロナ禍での事業のミーティングの中で、神経性やせ症を含む摂食障害の子が増えているという声が複数あがりました。
臨床の現場で見ている限りの仮説になりますが、コロナ禍では「マスクをしなければならない」など、行動に制限がありました。行動に制限がかかると、強迫行動が強まる傾向があります。自由な行動ができないということは、つまり強迫的な環境になるので、神経性やせ症の患者が増えるだろうというイメージを治療者側は持っていました。
――そして実際に、増えていたというのが今回の調査でわかりましたね。この調査では、希死念慮や自殺企図での初診外来患者数や、新たに入院した患者数も調べています。
コロナ前にはナチュラルにできていた、人とのふれあいや会話が、コロナ禍ではしにくかったですよね。。
それらの「体験」はメンタルヘルスを守るための行為であり、それができなることで抑うつや不安の傾向は強まります。 そして、周りへの相談もしにくくなり、対処の仕方がわからなくなる。
コロナ禍前は、様々な経験を通してストレスへの「対処法」を習得できていましたが、コロナ禍では対処法を身につけづらくなり、かつ対処法がわかっていたとしても自由にできなかった。そのため、自分がつらいときに「助けて」と言えない状況となるリスクが高まったと考えます。
――「体験」の不足によって、自殺企図や希死念慮の患者数が増加したのでしょうか。
それだけでなく、もう一つ言えるのは、大人の余裕のなさです。コロナ禍で大人も余裕がなくなり、子どもは家などで自分の思いを話すことがしにくくなった。
臨床の現場では「受診控え」が多くなりました。不安や抑鬱があったり、家庭環境が悪かったりしても、外部との接触がしにくくなった時期でもありました。
子どもは、つらさに対してどのような解決策があるのか、大人との会話から得にくくなり、「自分を傷つけた方がまだ楽かもしれない」と、視野が狭くなる場面もあったのではないかと考えます。
死を選ぼうとする子は、様々な責任を自分に抱えこみやすく、とても真面目なのだと思います。周囲を思いやるがゆえに、OD(薬物の過剰摂取)や、リストカットなど自分を傷つける方法を選ぶ。「自分が消えてなくなれば周りが幸せになるだろう」と言うお子さんもいらっしゃいました。
――なぜ、現在もコロナ禍前の数字を上回ったままなのでしょうか。
未だその理由は不明ですが、体験することの意味を改めて考える必要があるのだと思います。
コロナ禍が3、4年続きましたが、その間の体験不足を意図的に取り戻すことが重要ではないでしょうか。
現在も高止まりしたままの神経性やせ症の子には、いま目の前の体験を大切にしたり、「いまが『リアル』に楽しい」という体験(マインドフルネスの視点)をしたりすることが足りていないという論文もあります。
特に子ども時代はマインドフルネスの視点を持った体験を増やすことが大事です。コロナ禍に子ども時代を過ごした子たちには、大人と子どもが共に体験するプロセスがより重要だと感じています。
大人は、コロナの期間が子どもたちにとって「体験の乏しかった時代 」であったことを念頭に、「あのときできなかった分、これからまた体験を一緒にしていこう」と思いながら子どもたちと接していくことが大切です。
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